第19話

(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)


ところ変わって、岡山市東区の吉井川の河口付近にある漁港に停泊している古びた木造の船の中にて…


やくざの男たちに連れ去られたあいつは、やくざの男たちからボコボコに殴られていた。


あいつ自身は『オレのやり方に不満があると言うのであれば気がすむまで殴るなりけとばすなりしろ!!』と言う気持ちになっていたので、反撃しなかった。


その頃であった。


岡山県警本部では、あいつに代わって副本部長の男性が代行で本部長を務めていた。


『(まさあき)本部長のやり方が気にくわない!!』

『(まさあき)は暴力団組織と関係を持っている!!』

『県民をあざむいている!!』


………………


この時、内部ではあいつに対する不満がフンシュツしていた。


県民の間では、それよりも何億倍の不満がフンシュツした。


ところ変わって、県警本部の正面玄関にて…


あいつのやり方に怒り狂っている県民たちが大勢集まっていた。


正面玄関前のにてあいつに対する抗議集会がひらかれていた。


参加者たちは、県警本部の正面玄関からエントランスホールにかけての範囲に座り込みをした。


事態は、より深刻な状態におちいった。


さて、その頃であった。


あいつの家と大ゲンカを起こして家出したアタシは、後楽園の庭園にいた。


庭園内にある桟敷席に座っているアタシは、お茶をのみながらぼんやりと考え事をしていた。


アタシ…


この先、どうやって生きて行けばよいのか…


分からない…


その日の夕方5時半頃であった。


またところ変わって、JR岡山駅の近くにあるイオンモールにて…


アタシは、たかこちゃんからの誘いで一緒に晩ごはんを食べに行ってた。


ふたりは、フードコート内のラーメン屋さんで注文をしたぎょうざとビールの大ジョッキで晩ごはんを摂っていた。


アタシは、ビールの大ジョッキを一気にゴクゴクとのみほした後、怒った声で言うた。


「(ゴクゴク…)ああ!!何なのよ一体もう!!あのはぐいたらしいババアは!!アタシにいちゃもんをつけたから、絶対許さない!!…ちかこもちかこよ!!アタシにイチャモンをつけておいて、何なのかしらもう!!」

「しほこちゃん…そうとう傷ついているみたいね…行方不明になっている今のダンナもまた、頭がぼろいよねぇ。」

「その通りよ…国家公務員Ⅱ種の資格を保有していることだけは一丁前よ!!上の人間からごほうびを与えられたから、チョーシに乗っているのよ!!」

「そうよね…まさあきは、現場を知らない公務員クソバカだから、えらそうなつらしてるのよ…県民の生命財産を守るべき立場の人間がえばってるようでは、ホンマにあかんねぇ。」

「そういうこと…」

「しほこちゃん…あんたやっぱり…結婚なんかしない方がいいわよ…と言うよりも、決まったカレシを作らん方がトクサクよ…ちがう相手と再婚して、また同じことの繰り返しになるわよ。」

「そうね…」


たかこちゃんは、ビールを一口のんでからアタシにこう言うた。


「アタシ…知っているの…」

「えっ?」

「まさあきを連れ去ったやくざの男たちのこと…」

「あんた、思い当たるフシがあるの?」

「あるわよ。あいつらの中に…アタシと寝たことがある男がいるのよ。」

「たかこちゃん…」

「彼らは、まさあきのことをそうとうにくんでいたみたいよ。」

「そうとうにくんでいた?」

「うん…よく分からないけど…たぶん…そう…思う…それよりもしほこちゃん、あんたもきをつけといた方がいいわよ…あんたもここへ来る前に、高松で暮らしているヤクザの組長のところへいたよね。」

「うん。」

「うちも、過去にもめ事があった時に知人のヤクザを利用したイキサツがあったわ…もしかしたら、利用されるかもしれないと思っているのよ…まさあきを連れ去ったやつらは、しほこちゃんを追いかけていると思うわよ…利用される前に早いところ逃げた方がいいわよ…それだけは言うておくわ。」


たかこちゃんは、アタシにこう言ったあと食べかけのぎょうざをひとつ食べた。


5月23日頃であった。


アタシの家出とあいつがやくざに連れ去られた事件以降、あいつの長男は塾へ行かなくなった。


その上に、学校で暴れることを繰り返すようになった。


この日の三時間目が終わった頃に、深刻な事件が発生した。


あいつの長男が教室で突然暴れだした後、周囲にいた男子児童数人の頭をかたいもので殴って大ケガを負わせた。


事の次第を聞いた義妹は、急いであいつの長男が通っている小学校へ行った。


義妹は、あいつの長男を家に連れて帰った。


あいつの長男は、家に着いたとたんに奇声をあげて暴れ出した。


そして『学校に行かないからな!!』義妹に凄んだ後、部屋に閉じこもった。


ことの次第を聞いた沼隈さんは、心配になったので岡山へやって来た。


あいつの連れごのことよりも、アタシが義妹の顔を刃物でズタズタにり裂いて大ケガを負わせたことがことが大問題になっていたので、沼隈さんはひどくおたついた。


その頃、アタシはJR大元駅の近くにあるマンスリーアパートで暮らしていた。


バイトは、アパートから歩いてすぐのところにあるセブンイレブンで働いていた。


その日の夜10時半過ぎであった。


アタシが外でゴミ袋の整理をしていた時に、沼隈さんが突然やって来た。


沼隈さんは、アタシに対して義妹にあやまってほしいと言うた。


だけどアタシは『アタシはちかこにグロウされたのよ!!』と怒って反論した。


アタシは、ものすごく怒った声であいつの家の家族と親類縁者たち全員を呪い殺すと沼隈さんに言うた。


「あのね、アタシはあいつの嫁をやめた女だから、今さら何を言うてもムダよ!!アタシは、ちかこがイチャモンつけたから正当防衛で反撃したのよ!!ああ!!思い出すだけでもおんまくむかつくわね!!」

「しほこさん…しほこさんはこのままでいいのかなぁ…なんでちかこさんの顔に大ケガを負わせたのかな…」

「やかましいわねあんたは!!ちかこはアタシにイチャモンつけたから正当防衛で反撃したのよ!!」

「ちかこさんは、イチャモンをつけるようなことは一切していないよ。」

「やかましいわねダンソンジョヒ主義者!!あんたはいつからゲジゲジの家どもの肩を持つようになったのよ!!」

「しほこさん、それはなんでも言い過ぎだよ!!」

「アタシはスズメバチの女王よ!!女王蜂じょうおうばちに生まれ変わったアタシは、女の幸せを得る資格なんかないわよ!!」

「しほこさん、そんなことよりもちかこさんに大ケガを負わせたことをあやまりに行こうよ…ひと言『ごめんなさい』と言うだけでもいいから…」

「イヤ!!拒否するわよ!!」

「拒否するって…」

「しほこさん…ちかこさんに大ケガを負わせたことをあやまらないと…困るのはしほこさんだよ…」

「ゼーンゼン困らないわよ!!あんたが一方的におたついているだけじゃないのよ…アタシは女ひとりで生きて行く力はあるわよ!!」

「しほこさん!!」

「帰んなさいよダンソンジョヒ主義者!!今度アタシにイチャモンつけたら本当に殺すわよ!!」


沼隈さんを思いきり怒鳴り付けたアタシは、ゴミ箱の整理を再開した。


(ブーン!!ブーン!!ブーン!!)


アタシの乳房むねにある傷の中で増殖を続けているスズメバチたちは、一気に1000億匹に増えた。


スズメバチたちは、アタシの怒りによって凶暴化した。


もうだめ…


アタシにイチャモンをつけた義妹は許さない…


はぐいたらしい姑は、義妹とグルになって…


心がズタズタに傷つくまで、アタシをなじった…


あいつはあいつ…


急にえらそうになった…


だから…


許さない…


(ブーン!!ブーン!!ブーン!!ブーン!!)


アタシの乳房むねの傷の中で、さらにスズメバチたちが増殖した。


スズメバチたちは、より強力な毒をたくわえていた。


あいつの家の家族を呪い殺す準備が整った…


こどもたちは、いつでも飛び出せる態勢を整えた。


そして、最初の一匹がアタシの乳房むねの傷から飛び出した。


ここより、あいつの家に対するフクシュウが始まった。

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