【女の事件】女王蜂〜魔女になってしまった花嫁さん

佐伯達男

第1話

時は、2015年8月8日の昼過ぎであった。


場所は、いまこく(今治国際ホテル)の結婚式場にて…


この日は、アタシ・しほこ(32歳・パート主婦…以降、アタシと表記する)のダンナ・やすあき(43歳・管理職)の弟のひろあき(34歳・ガソリンスタンド店員)とカノジョ(31歳)の挙式披露宴が執り行われる日であった。


この時に、深刻なトラブルが発生した。


義弟とカノジョは、愛結び(愛媛県のお見合い事業)のお見合いで出会った。


2ヶ月間お付き合いを経て、このたび結婚にこぎつけた。


結婚後は、家から出て別の地区にある公営住宅に移り住む予定であった。


しかし、挙式披露宴当日に深刻なもめごとが発生した。


義母が急に挙式披露宴を延期してくれと言うたことであった。


原因は、酒好き義父(78歳・無職)にあった。


義父がノミ代のつけをたくさんためていた…


ノミ代のつけに加えて、酒屋さんの配達注文で購入した瓶ビールのケース買い…についても1円も支払われていなかった。


もめごとを起こした義父は、裁判所に訴えられた…


支払い猶予の期限はあさってまで…


それまでに支払わないと、ソショウザタになる…


義母は、義弟に対して祝儀の一部をユウヅウしてほしいと頼んだ。


それが原因で、いびつな大ゲンカに発展した。


その場にいたアタシは、思い切りブチ切れた。


もうガマンできない…


一生一度のよろこびの日をぶち壊すなんてドサイテーだわ!!


思い切りブチ切れたアタシは、よりし烈な声で義母を怒鳴りつけた。


「義母さま!!どうして晴れの門出の日に水をさすのですか!?祝儀袋の中身をドロボーしようとしたから許さないわよ!!」

「しほこさん…今は、結婚披露宴どころじゃないのよ…おとーさんがお酒のトラブルを起こしたから、家が困っているのよ…」

「ますますはぐいたらしいわね!!一生一度の晴れの日をぶち壊すなんてドサイテーよ!!」

「しほこさん、あさってまでにおとーさんがためたノミ代のつけを全額払わないと、おとーさんは裁判にかけられてしまうのよ…」

「フン、知らないわよ!!ソショウザタになった義父おとうさまを助けるなんてどーかしてるわよ!!」

「しほこさん!!おとーさんがソショウザタになったら困るのは家なのよ!!」

「ますますはぐいたらしいわねクソシュウトメ!!酒飲みのクソバカシュウトはケームショヘぶち込まれたらいいのよ!!」

「しほこさん!!なんてことを言うのよ!?」

「やかましい!!義父さまを粗末にするだけ粗末にしたあんたも共犯者よ!!もう怒ったわよ!!この家の親類縁者たち全員を血の池地獄にとして焼き殺すわよ!!」


このあと、義母とアタシはバリゾーゴンの応酬おうしゅうを繰り広げた。


その結果、2人はあえなくハタンした。


この日、あいつ(やすあきのことはあいつと表記する)は職場の上司に誘われて、高知県のゴルフ場に行ったので、挙式披露宴に出席しなかった。


うちが非常事態におちいったというのに、あいつはゴルフにのめり込んでいた…


だから、あいつも許さない!!


その日の夜9時過ぎであった。


あいつがひどくつかれた顔で帰宅した。


あいつは、帰宅するなりにアタシと義父母に八つ当たりした。


義弟の結構をぶち壊した…


義父が数ヶ月分のつけをためていた…


それだけではなかった。


接待ゴルフで先方さまが楽しくプレーをすることができたのに、先方さまが取引はなかったことにしてくれと言われた…


あいつは、上司からグチグチ言われたことに腹を立てていた…


だから、アタシたち家族に暴力をふるった。


よりし烈な怒りに震えているあいつは、義父がのんでいたお酒を強奪した。


義父は『返してくれ~』と泣きながらコンガンした。


あいつは『ふざけるな!!』と言うて怒鳴りつけた。


「オラオドレ!!」

「返してくれ…」

「ふざけるなクソバカジジイ!!ひろあきの結婚をぶち壊したから没収だ!!」

「やすあきやめて…おとーさんは、悪気があってお酒のトラブルを起こしたのじゃないのよ…」

「だまれ!!酒ノミオヤジをヨウゴしたあんたも共犯者だからやっつけてやる!!」

「おとーさんが裁判で訴えられたら困るのはうちなのよ!!お願いだからおとーさんを助けてよ…」


この時、義弟が通りかかった。


義弟は、あいつは1万倍の力で義父を殴った。


(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)


あいつは、ものすごく恐ろしい目つきで義父に言うた。


「わびろ!!ひろあきにわびろと言うのが聞こえないのか!!」

「ヒイィィ…」

「やすあき…おとーさんを許してあげて…おとーさんもひろあきにあやまってよ…」

「悪かったよ…おとーさんは…」

「なんや!!それが人に対してあやまるたいどか!!」


(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)


あいつは、かたいもので義父を殴りつけた。


義母は、泣きながらあいつに許しごいをした。


「やすあき…やめて…」

「オドレのせいだ!!オドレのせいだ!!」

「やすあきやめて…」

「ワーッ!!」


(ガシャーン!!)


思い切りブチ切れたあいつは、義父の頭をを花瓶で殴りつけた。


その後、義母を右足でけとばした。


(ガーン!!)


「オドレもやっつけてやる!!オレの職場の男性スタッフさんがしほこと挙式披露宴を挙げることを楽しみにしていたのに、なんで別れさせた!?」

「他に方法がなかったから、やむなくしほこさんとこいびとさんを別れさせたのよ…」

「だまれだまれだまれだーーーまーーーれ!!オドレらのせいだ!!ぶっ殺してやる!!ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!


怒り狂ったあいつは、よりし烈な力で義母をけとばした。


この時、アタシが居間にやって来た。


あいつは、アタシにも激しい暴力をふるった。


アタシは、あいつに両手で突き飛ばされて倒された。


そして…


「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてー!!」


(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!ブチッ!!)


あいつは、アタシが着ていたトップスとキャミソールを破いたあと、下に着けていたワコールのランファンのブラジャーをちぎった。


つづいて、アタシが着ていた白のデニムパンツと白のショーツとくつ下を脱がした。


そして、近くにあったなわとびのなわをちぎったあと、アタシの背中をなわで激しく殴りつけた。


「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい…」


あいつは、約3時間に渡って義父母とアタシによりし烈暴行を加えた。


そして、その場にへたり込んだあいつは、サントリーオールドのボトルをあけたあとストレートでゴクゴクと一気飲みした。


あいつからどぎつい暴行を受けたアタシは、乳房むねの奥により深い傷を負った。


あいつは、アタシと結婚したこと自体によりし烈な不満を抱いていた。


あいつは、アタシがキライだからどぎつい暴力をふるった…


あいつは、義父母がキライだからどぎつい暴行をふるった…


あいつからどぎつい受けた暴力が原因で、アタシの中に蓄積されていた怒りが最高潮に達した。


(ブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーン…)


アタシの乳房むねの奥にできたより深い傷の奥底で静かに増殖をしていたスズメバチが、少しずつだが凶暴化していた。


アタシは…


スズメバチの女王…


あいつの家とアタシの実家の親類縁者たちを…


ひとり残らず…


スズメバチの大軍でぶっ殺してやる!!


アタシはめた…


恐ろしいスズメバチの女王になる…


あいつらの家とアタシの実家に対するうらみつらみを全部晴らすまで徹底的に戦うわよ!!

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