第32話 絶体絶命 ※パトリック王子視点
パトリック王子は焦っていた。どうにかして、王都に迫っている危機を切り抜ける方法を考えなければならないと。
「くそっ、どうすれば……」
助けを求めたが、誰も手伝ってくれようとしないことに不満を覚えていた。
聖女であるサブリナや、元聖女だった母親にも聖域を再展開するようにお願いしに行ったけれど、無理だと断られてしまった。
このままだと、王都が魔物に襲われて大変なことになるのに。皆は理解していないのだろうか。自分達は今、とても危険な状況に置かれているということを。彼女達は危機感がなさすぎる。パトリック王子は、そう感じていた。
自分は今も必死に動き回って、どうにかしようと足掻いているのに。王である父と違って、王国のために頑張っている。
サブリナや母が、もっと自分に協力的だったらよかったのに。だけど仕方ないと、パトリック王子は割り切ることにした。そんな彼女達でも助けなければ。大事な人達だから。
王都に残っていた数少ない兵士を王宮周りに配置して、守らせよう。王都の一部は見捨てる必要があるな。全部は護りきれない。耐えて、助けが来るのを待つだけ。
そうすれば助かるはず。思いついたパトリック王子は早速、部下の兵士を呼び出し指示を与えた。
一部を見捨てることになってしまうのは心苦しいが、仕方がないこと。そう考えて自分を納得させた。王国の今後のためには、王子である自分が生き残ることが最優先であると言い聞かせた。
王都に被害が出るのも、頭が痛い問題だった。魔物に荒らされた後の王都を復興するためにお金と時間が必要になる。その費用で財政が傾くかもしれない。自分が王になってから、王国民から税金を多く取らなければいけなくなるかも。
助かった後、すぐに聖域をどうにかしないといけない。王国には、それが必須だと今になって実感した。
もっと再展開を急ぐべきだった。失われてしまった時に慌てるべきだった。彼女を追放するべきじゃなかった。そうしなかったら、今も何事もなく過ごせていたのかもしれないのに。パトリック王子は、考えながら後悔する。
そんな時、兵士が駆け寄ってきた。また、嫌な報告かと身構えるパトリック王子。
「パトリック様、援軍が! エライユ侯爵家の方々が助けに来てくれましたッ!」
「なに! それは本当か!?」
兵士の報告を聞いて驚くパトリック王子。まさか、助けが来てくれるなんて。彼は自信を取り戻した。これで、どうにかなりそうだ。自分には運があるんだ。先程まで後悔していたことは、すっかり忘れてしまった。
そしてパトリック王子は、急いで援軍に来てくれたという者達の所へ向かった。
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