夜の廃校

「この町の近くにこんな廃校があるなんてね」マサルが言った。

「ねぇ本当にここに入るのかい?」シンジがおびえながら訊いた。

 マサルは制服の内ポケットからスマホを取り出した。夜にスマホを起動すると小さなコンビニが突然生まれてみたいに辺りを照らす。マサルはそのままスマホの画面をシンジに見せた。そこには心霊系サイトが映し出されて、今まさに自分たちの目の前に立ちはだかる怪物の外観の写真があった。シンジが怖がる間、マサルはその廃校の概要を読み上げた。

「つまりだ。ここは絶対に場所なんだ」マサルがスマホをしまった。「おれたち新聞部が今年の学校祭でちやほやされるには、もうやるしかないんだよ。それともなんだ、このまま幽霊部員扱いされたまま卒業してもいいのかよ」

「じゃあせめて塩でも撒いてから行こうよ。近くにコンビニあっただろ」

 マサルは歩き始めた。彼は少しするとシンジの方を振り返り、塩を撒く動作だけした。シンジはため息をついたあと、歩き始めた。


 校舎内は外観と比べて異様に綺麗だった。歩いているとリノリウムのキュッという音が周りに反響した。

 階段を上がっていくと3年3組の表札が見えた。

「あそこだ」マサルが言った。少し遅れたシンジもその表札を確認した。

 マサルは表札の写真を連続で撮った。そして、すぐさまその写真を確認した。

「なんか映ってる?」シンジはマサルの首のうしろから恐る恐るスマホを覗き込んだ。

「いや、なんも映ってねぇわ。じゃ早速入るか」

 

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