ノイモートン
maria159357
第1話耳鳴り
ノイモートン
耳鳴り
登場人物
冰熬 ひごう
祥哉 しょうや
梦宗 むそう
鬧影 どうえい
日本を今一度 せんたくいたし申候
坂本龍馬
第一章【耳鳴り】
「しーーーーっしょおっっっっ!!」
「・・・・・・朝っぱらから何の用だ」
「嫌だなー。可愛い弟子との戯れじゃないですかー。もっと嬉しそうにしてくださいよー」
「可愛い弟子なんぞ知らねぇなぁ。それに、今お前が俺にしてることは戯れとは言わねえ。襲いかかってるって言うんだ」
「ちぇ。寝込み襲ってもダメなら、いつ襲えば殺せるってんです?」
「舌打ちするな。それよりお前、俺の布団を荒して平然と去るんじゃねえ」
一応、師匠と呼ばれている男は、銀色の短髪で青い目をしており、名は冰熬と言う。
一方で、その師匠をいきなり襲っていた弟子と名乗っている男は、青く多少長い髪に紫の目をしており、名は祥哉と言う。
祥哉の方が歳は若いが、冰熬の方が背は高い。
祥哉も低い方では無く、むしろ高くて187あるのだが、冰熬が192あるため、2人でいるときは低い方、となってしまうだけだ。
2人は古民家に住んでいる。
米を炊くにも竃を用いており、囲炉裏があって、天井に照明器具は吊るされていないため、間接照明という役目をもったものが幾つか置いてある。
周りの家もそうなのかというと、そういうわけではない。
同じような古民家であっても、囲炉裏や竃はなく、キッチンやテーブル、天井には明るい照明がつけられている。
古民家でないところは、まるで異国のような建物の家であったり、瓦が立派な建物であったり、言ってしまえば、家に住む人の好みによってである。
冰熬の趣味がどうかは分からないが、特にこの生活に不便も感じていないようで、冰熬は新しくするわけでもなく、ずっとこのままのようだ。
「だいたいな、お前みたいな万年反抗期なガキを弟子にした覚えはねぇぞ、祥哉」
「そんな照れないでくださいよ。弟子に狙われなくなったら師匠失格ってことですからね。師匠終わりですからね。俺に感謝して俺の為に死んでください」
「断る」
寝起き早々、勝手に弟子と名乗る祥哉に襲われた冰熬は、頭をかきながら簡単に布団を畳むと、すでに火がついている囲炉裏の方へと近づいて行った。
両手を擦り合わせながら、胡坐をかいて囲炉裏の前で座ると、冰熬は祥哉に向かってこう言った。
「おい弟子、朝食は」
「都合良い時だけ弟子にするのは止めてほしいね」
文句を言いながらも、祥哉はすでに準備をしていたご飯を並べる。
それを食べ終えると、冰熬は猫背のまま囲炉裏の前でこっくりこっくりと寝てしまいそうになっていた。
そこへまた、祥哉がやってきて冰熬が寝そうになっているのを見ると、またいつもの癖が出てきてしまう。
洗ったばかりの包丁を持つと、船を漕いでいる師匠に向かって綺麗なフォームで力強く投げつける。
包丁は冰熬が先程まで座っていた場所に突き刺さるが、先程まで座っていた冰熬本人はすでに別の場所に移動していた。
「祥哉、お前にはたっぷりと躾をする必要がありそうだな」
「嫌ですよ、可愛い弟子に向かって、そんな怖いこと言わないでくださいよ」
「可愛くもねえし弟子でもねえだろ」
「それなら躾も必要ないっしょ」
「人生の先輩に対する接し方の躾だよ。お前より十年以上先輩だぞ俺ぁ」
「安心してください。あんた以外には礼儀正しくしてますんで」
「余計失礼な奴だな」
飄々とした態度で、祥哉は突き刺さったままの包丁のもとまで行ってそれを抜くと、洗い場まで持っていった。
空気を入れ替えようとしたのか、戸を開けると、親父のようなくしゃみをしていたが、聞かなかったことにしよう。
祥哉が洗いものをしている間、冰熬は特に何をするでもなく、昇った太陽の光を浴びながらぼーっとしていた。
「そのうちボケるな」
「ボケるくらいならその前に死にてぇなぁ」
「なら俺が今のうちに楽にしてあげますよ」
「お前、もっと楽しいことは考えられねぇのか。人生俺を殺すことだけ考えてちゃもったいねぇと思うぞ」
「謙遜しないでください。俺にとって、これほど楽しいことはありませんから」
「楽しくても困るんだがな」
言ってるそばから、祥哉は冰熬の背後に立って石臼を頭の上から落とそうとしていた。
しかしそれも避けられてしまって、残されたのは可哀そうな床の凹みだけ。
自分でやったのだから自分で直せと言われれば、祥哉は足先でちょいちょいと凹みを確認すると、そんなに凹んでいないから平気だと言い切った。
「そういや、包丁の切れ味が悪くなってきたんだけど」
「研ぎゃいいだろう」
「簡単に言うけど、研ぎ石がないと出来ないすね」
「そこらへんの石でやってみろ。お前は器用だからきっと出来る」
「適当にも程があるっつの」
まだ切れるには切れるのだが、明らかに切れ味は以前より悪くなった。
だからといって、今のところそこまで困ってはいないのだが、多少力を入れないと切れなくなっている。
祥哉は出来れば調理をしたものを口にしたいのだが、冰熬はそのあたりは適当というか、お腹が丈夫なようで、生で食べても平気な顔をしている。
そのうち放っておいても死ぬのでは、と思っていた祥哉だが、きのこを食べても肉を食べてもお腹を下すでもなく、寝込むわけでも無く、至って健康のままだった。
「化け物だ」
「誰がだ」
普通の人間ならきっと何回か死んでいたであろうが、この男は死ななかった。
祥哉も最初一度だけ、生で野菜などを食べたことがあるのだが、その時人生で初めて腹痛と起こしたため、それからは何があっても火を通そうと誓ったのだ。
その時、冰熬には身体が弱いと言われたが、そういう問題ではない。
「祥哉」
「なんすか」
「お前、こんなところにいて暇じゃねえのか?なんもねえぞ」
「今更?」
楽しいか楽しくないかで聞かれると、断然楽しくはない。
2人が住んでいるところは街からも離れているし、ここにはテレビもなにもない。
今時パソコンもなくて、音楽を聴くことも出来ず、風呂場にはシャワーもついていない。
トイレはさすがに洋式になっているが、本も置いていないこの家には、暇つぶしになるものが何もない。
街へ遊びに行っても良いのかもしれないが、祥哉は遊びに行きたいわけではないらしい。
「お前、若いうちにもっと色んなことを覚えた方が良いと思うぞ」
「色んなことってなんすか?俺はあんたを殺すことだけが出来ればそれでいいんだ」
「・・・そいつぁ、随分と安い夢だなぁ」
「安い夢なら、今頃あんたはこの世にはいないだろうよ」
「人生まだ長いんだ。てめぇのためじゃなく、てめぇ以外の奴のために生きるってことを覚えとけ」
「あんた、それよく言えたな」
へらっとしながら失礼なことも平気で言う祥哉だが、この時だけは表情が違った。
冰熬を睨みつけるような強い目つきだったが、すぐに目線を逸らした。
その意味を知ってか知らずか、冰熬は特に気にする様子もなく、ただ空を仰いでいた。
「おい、祥哉」
「なんすか」
「昼飯はなんだ」
「あんた、本当にそのうちただのボケ老人になりますからね」
「長生きする心算はねえけどよ、ボケるくらいなら健全なまま死んでいきてぇな。もしもボケたら、俺を適当な施設にでも放りこんでくれて構わねえからよ」
「最近じゃぁ、施設も金がかかるって話だから、無理だね。あんたにそれだけの蓄えがあるなら別だけど」
「ねぇな。じゃあ、大人しくぽっくり逝くとすっか。俺のことだから、多分死ぬまで喰うとは思うんだ。それまでは頼んだぞ」
「あんた図太く長生きしそうだからお断りだよ。それまで面倒みなきゃいけない俺の身にもなってくれ」
はっきりと断られてしまった冰熬は、じゃあしょうがないな、と1人で勝手に腹を括っていた。
いや、今更そんなことをしなくても、冰熬は丈夫なのだから、今のままでも充分長生きできるだろうとは思うのだが、何しろ、煌めいた部分を見たことがないため、祥哉もそこは定かではない。
結局この日、2人は陽が沈むまでのんびりと過ごしていた。
こんな日々を送っていて良いのかと考えてしまう時もあるが、暖かい日差しを浴びているうちに祥哉は眠ってしまった。
目を覚ました時には、冰熬がその辺で捕まえてきたと言っていた猪を食べることになったのだが、なにせ調理という言葉を知らない冰熬は、そのまま肉を食べようとしていたため、祥哉が一旦止めた。
とてもワイルドに猪さんを解剖したようで、冰熬の顔や服には、まだ生々しい血がどろっとついていた。
「まずは風呂でも入ってきてくれます?臭うから」
「そうか?」
クンクンと自分の服の臭いを嗅いだ冰熬だが、どうも鼻が鈍感になっているようだ。
しかし大人しく風呂場へと向かった冰熬を見届けると、祥哉はため息を吐きながらまずはお湯を沸かし始める。
自分より年上だと言いながらも、どうしてこうも面倒を見るのは自分なんだろうと思いながらも、祥哉の手はざっくりと斬られた猪の肉に包丁を入れるのだった。
意外と冰熬は長風呂で、というか風呂自体が好きなようで、夏場には汗を流す意味で、冬場は寒いという理由で、1日3回ほど風呂に入っている。
時には近くにあるという自然の温泉に入ってきているようだが、場所を聞いたところ、崖の下にあるということで、祥哉は諦めた。
祥哉が味見をしていると、風呂場から声が聞こえてきた。
「祥哉、大変だ」
「なんすか、いい歳したおっさんが」
「着替え忘れた。持ってきてくれ」
「は?絶対嫌だ。なんか嫌だ。ひょこひょこっと持って行けばいいだろ」
「タオルも忘れた。いい歳したおっさんの裸なんて見たくねぇだろ?だから頼む。色々一式持ってきてくれ」
そう言うと、祥哉も見るか見ないかでは見ない方が良いと判断したようで、嫌嫌ながらも持ってきてくれた。
こういうところがだらしないのだと、何度も注意したのだが、ダメだった。
冰熬が無事に風呂から出ると、用意されていた猪料理が並べられており、祥哉は待つこともなく先に食べていた。
髪の毛を適当に拭きながら、そのタオルを首にかけて胡坐をかいて座る。
「お前さぁ」
「なんすか」
「料理人にでもなった方が、俺を殺すよりも金になるし、世のためになると思うぞ」
「俺の作った料理を少しも疑わずに口にするあんたもあんただけどな。毒が入ってるとか思わないのか」
「お前はそんな卑怯なやり方はしねぇだろ。やるから正面から殺しにくるさ」
「・・・・・・」
ちらっと冰熬を見るが、冰熬はまだ熱かったのか、味噌汁を飲んで熱そうな顔をしていた。
変なところで信頼されては、どうも調子が狂ってしまう。
険しい顔をしたまま食事をしていると、冰熬にシワが増えるぞ、と茶化された。
祥哉が片づけをしていると、冰熬は祥哉が入れたお茶を飲みながら、まだ冷える夜を耐えるためなのか、ひたすら身体を温め続けていた。
祥哉は洗いものが終わると、自分も風呂に入るための準備をする。
風呂に入っているときだけは、何も考えずにのんびり出来る時間なのだが、きっと風呂から出れば、冰熬が布団の中ではなく囲炉裏の前でウトウトとしており、起こして布団まで引きずって行く必要があるのだろう。
それを分かっているからこそ、こうしてゆっくりと出来るはずの時間でさえも、祥哉は休むに休められない。
風呂から出てみると、案の定冰熬は囲炉裏の前にいた。
しかし、ウトウトどころではなく、完全に身体を横にしていたため、寝ているだろうことは容易に分かった。
もう面倒になってしまった祥哉は、寝ている冰熬を起こすという方法ではなく、掛け布団だけど移動させて、冰熬にかけるという方法に切り替えた。
以前そのようなことをしたとき、布団のぬくもりで寝たいのだと言っていたのだが、完全に寝てしまった自分よりも背も体重もある男を移動させるのはさすがに疲れてしまう。
ウトウトの時には多少冰熬本人も力を出す為、なんとか布団の上まで運べるが、完全に運ぶとなるともう無理だ。
文句を言われたらその時はその時だと、祥哉は掛け布団を雑にかけると、自分の布団を敷いて眠りについた。
思った通り、翌日、身体が痛くなって起きたのか、冰熬にどうして自分は布団で寝ていなかったのかと聞かれたため、正直に寝ていたから面倒になってそのままにした、と伝えたところ、「そらしょうがないな」と言ってまた寝てしまった。
掛け布団を器用に身体に巻きつけると、それをクッション代わりにすることで身体の痛みが減ったのか、冰熬は昼ごろまで起きては来なかった。
一度は死んだかと思い、死んだかと聞いてみたところ、死んでいないと返答があったため、軽く舌打ちをした。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
1人の男が、仕事場に着いた。
椅子に座ってパソコンを開くと、早速仕事を始める。
何処かの誰かとは大違いだ。
男が仕事を始めてからそれほど時間が経たないうちに、別の男が出勤してきた。
「おはようございます、鬧影さん」
「おはよう、梦宗。今日は非番じゃなかったか?」
「ええ、そうだったんですけど、片づけておきたい仕事がありましてね、ちょっとだけ顔出しにきました。昨日のうちに終わらせておけばよかったんですけど」
鬧影という男は、紫の髪をしており、右側は前髪を垂らしているが左側は後ろに持っていっており、目は茶色だ。
梦宗という男は、赤と橙が混ざったような色の髪の毛で、後ろで一つに縛る必要なあるほど長い。
目は金色をしており、人当たりが良さそうな笑みを浮かべている。
梦宗は自分のデスクに座ると、引き出しを開けて何かのファイルを取り出した。
するとそれを持ってすぐに鬧影に挨拶をする。
「では、失礼します」
「なんだ、大丈夫なのか?」
「はい。折角の休みなので、カフェあたりでゆっくりやらせてもらいます」
「そうか。お疲れさま」
梦宗が出て行ったあと、鬧影はまたパソコンに向かい、何かカタカタと指を動かしていた。
仕事とプライベートはきっちり分ける鬧影は、仕事の時間が終わると部下も一斉に帰らせてしまう。
残っている仕事は明日にしろ、明日に回したくない仕事は今日中になんとしてでも終わらせろ、という考えのようだ。
仕事が終われば、鬧影もさっさと仕事場から帰って行く。
また、だからといってみんなで一緒に何かを食べに行くとか飲みに行くとかといったこともしないため、本当に帰るだけだ。
人と絡むのが好きではないのか、それとも別の理由があるのかそれは分からないが。
しかし、仕事に関しては相談にも乗ってくれるし、とても頼りになる存在なのだが、プライベートに関しては全くの謎だ。
そのミステリアスなところが良いと、一部の女性たちから人気ではあるのだが、謎過ぎて聞くにも聞けない。
その頃、カフェに向かってファイルを見ていた梦宗のもとに、1人の女性が近づいていた。
梦宗が座っている席に相席の形で勝手に座るが、梦宗はちらっと見ただけで、特に何も言わなかった。
「私にも同じものを」
女性は梦宗が頼んでいたカモミールティーを頼むと、足を組む。
ブロンドの長い髪を耳にかけると、頬杖をついて梦宗に微笑みかける。
「また私を呼びだして、今度は何?」
「仕事場じゃ、こんな話し出来ないからな」
「あら、嬉しい話?」
その時、丁度女性が頼んだそれが運ばれてきて、2人とも口を閉ざした。
女性が一口それを飲んだところで、また話しを進める。
「照奈、この男について調べてくれないか」
「あら、可愛い子ね。何か事件の関係者とか?」
「いや、別件だ。個人的な調べものでな」
「そういうこと。まあ、私に頼むんだから、そっちだと思ったけど」
照奈はそのファイルを、とても小型なカメラで撮影をすると、その場から立ち去った。
翌日、梦宗は鬧影よりも先に出勤しており、いつも通り挨拶をする。
ここで、この男たちが何の仕事をしているかの話を簡単に説明しよう。
一言で言ってしまえば、警察のようなものだ。
警察と政府が混ざったようなこの機関では、警察の仕事もし、政府の仕事も行い、また、それぞれの不正なども調べるらしい。
詳しい仕事内容に関しては口外してはならないようで、というよりも、最早その存在自体が噂ではないのかと言われているような機関であるのだ。
しかしまあ、やっていることは主に調べものであったり・・・調べものであったりだ。
「爾志、今送ったファイルの内容を今週中にまとめておいてくれ」
「わかりました」
「貴江、昨日仕上げた報告書、印刷しておいてくれ」
「はい」
「すみません鬧影さん、先日調査に入った金融機関に関してなんですが」
鬧影から次々に指示が出されるのと同時に、次々に鬧影には何かしら聞く者がいる。
それらにもすぐさま対処していく鬧影の姿は、誰がどう見ても仕事が出来る人だ。
何処かの誰かとは大違いだ。
昼休みになれば、鬧影は仕事を一旦止めてさっさとお昼を食べに行く。
1人で隠れ家のような小さな食堂に入ると、そこの主人に「いつもの」とだけ言う。
主人は水だけを置くと、何も言わずに料理を作り始める。
常連なのか、鬧影は料理が運ばれてくるまでの間、じっと何を考えているのか分からないが目を瞑っていた。
それほど時間もかからずに運ばれてきたのはサバの味噌煮定食で、ご飯は大盛だろうか。
箸を取って無言でそれを口に運ぶ。
10分ほどで食べ終えると、最後にお茶が運ばれてきて、それを飲む。
テーブルの上に勘定を置いて、出て行くときに「御馳走様」とだけ言って出ると、仕事場に戻るのではなく、別の場所に向かっていた。
それは梦宗も寄っていたカフェだった。
鬧影も時々そこに寄るらしく、店員の人と何やら話していた。
コーヒーを頼むと新聞を開き、時間が来るまでそこで時間を潰していた。
仕事の時間になるとまたいつもの鬧影に戻り、もしも部下が何か失敗をすれば、一緒になって謝り頭を下げ、どうすれば良かったのか、どこがいけなかったのかなど、くどくはなく、さらっと世間話のように諭してくれる。
何か成功したときには、個人の力だと褒めてくれる。
注意しても直らないときにも、人前で叱るということは決していない。
誰もいないときや、休憩がてら2人きりになる場所に行ってそこでしっかりと話し合う。
基本的な仕事のやり方は教えてくれるのだが、あとは自分のやり易いようにやればよいというのが鬧影のやり方のようで、細かいことに口出しはしてこない。
鬧影のやり方を押し付けてくることもなく、どうやっているのかと聞かれれば、教えてくれるようだ。
部下の失態や失敗は自分の責任だと、好きなようにやって、例え何かあっても責任は取ると言ってくれるためか、部下は鬧影に絶大な信頼を寄せている。
「梦宗、これ計算しておいてくれ。それからこっちは義夕のところに転送しておいてくれ」
「わかりました」
その日の仕事の時間が終了するころには、すでに鬧影が最後、部屋から出て行くところだった。
電気を消して誰も残っていないことを確認すると、帰り道を進む。
その時丁度、梦宗の背中が見えた。
いつもならば特に気にせず、自分の家の方へと歩いて帰ろうとする鬧影だったが、この日だけは違った。
少し早歩きで梦宗の後ろを着いて行くと、肩を叩いて名前を呼ぶ。
「鬧影さん、お疲れ様です。珍しいですね、どうしましたか?」
「ああお疲れ様。たまたま姿が見えたから、声をかけただけさ。ちょっとコーヒーでも飲んで行かないか?」
そう言うと、人通りの多い道ではなく、路地裏の方へと歩みを進め、ひっそりと佇む、すでに看板さえ出ていない店に入って行く。
最初は大丈夫だろうかと思った梦宗だが、入ってみるとお店はちゃんとやっていたし、店主も悪い人には見えなかった。
手前の角、入口からもキッチンからも死角になっているその場所に鬧影が腰を下ろすと、梦宗はその正面に座った。
2人分のブラックコーヒーを頼むと、無料でついてくるのだろうか、それとも鬧影がいるからおいてくれたのだろうか、店主は小さめのクッキーを数枚一緒に置いて行った。
ミルクも砂糖もテーブルの隅に置いてあるが、鬧影も梦宗もつかわない。
一口、二口、と喉に流し込んだところで、鬧影がようやく口を開く。
「お前、何か別行動していないか?」
「何のことです?」
「いや、違う部署の奴と頻繁に会ってるところを見た奴がいてな。何か仕事を依頼されてるならと思って知り合いに聞いてみたんだが、誰も仕事を依頼したりされたりはしていないと答えてた。だから少し気になってな」
鬧影の問いかけに対し、梦宗は口元に弧に描きながら、コーヒーが入っているカップを揺らしていた。
数秒だけ沈黙が続いた後、梦宗はカップを置いてこう答えた。
「すみません。個人的に仕事を依頼しているので、お答えは出来ません」
「個人的に依頼か。ダメとは言わないが、相手の仕事に迷惑かけないようにな」
「わかってますよ」
にっこりと鬧影に笑みを返しながら、梦宗は残りのコーヒーを飲み干した。
そして自分の分のコーヒー代を置いて行こうとしたため、鬧影が止めたのだが、梦宗はこれくらい払うと言ってテーブルに置いて行った。
店から梦宗が出て行って、残された鬧影は、まだ少しだけ温かさが残っているコーヒーを口まで運ぶが、一度動きを止める。
そこで一体何を考えていたのか、それは誰にも分からないが、再び動きを始めると、少しだけコーヒーを飲んだ。
それからしばらく、腕組をして何かを考えていると、店主がやってきた。
冷たくなったわけでないが、温かくはなくなったコーヒーと、新しく淹れなおしたコーヒーを交換する。
「あ、すみません。ありがとうございます」
鬧影の言葉に、店主は小さく微笑みながら会釈をして戻って行った。
新しくなったコーヒーをゆっくり飲みながら、鬧影はしばらくそこに座り続けた。
「御馳走様」
新しく変えてもらった分のコーヒー代もおいていくと、店主が何か言っていたような気がするが、聞きとるよりも先に出てきてしまった。
久しぶりに遅くまで寄り道をしたからか、少し寒気を感じる。
くしゅん、と一回くしゃみをすると、鼻の奥がムズムズするような、喉に何か異物があるような、そんな感じがする。
暗くなっている空を見上げれば、最近はちゃんと見たことがない星があった。
時間に追われているわけではないのだが、こうした時間を取ろうという考えになったことがない。
自然と目に入ったのなら見れば良い、そう思っているうちに、何年も何十年も経ってしまったのだろう。
久しぶりに見た星空に、明日も晴れそうだな、と根拠のないことを思った。
「鬧影さん、これ頼まれていた資料です」
「ああ、ありがとう」
「鬧影さん、斗刀さんからお電話入っています」
「繋いでくれ」
翌日も、いつものように仕事をしていた鬧影だが、その意識はどこか別の、今日は空席になっている梦宗のもとに向かっていた。
どうして今日梦宗がいないかと言うと、何カ月も前から入っている、打ち合わせがあるのだ。
だから、休みというわけではない。
しかし、最近動きの読めない梦宗のことを考えると、出来れば近くで見張っていたいという気持ちも鬧影にはあった。
だからといって梦宗にばかり意識を取られていては、他の仕事に支障をきたしてしまう可能性もなきにしもあらず。
鬧影に限ってそういうことは有り得ないのだろうが、万が一あっては困るということで、鬧影は梦宗に打ち合わせが終わったら一度仕事場に顔を出すように連絡を入れておいた。
昨日の今日で梦宗はどういう反応をするだろうと思っていたが、それはいらぬ心配だった。
普段通りの口調と声色で返答してきた梦宗は、午後の2時頃には戻ってきた。
「お疲れ様です」
「おー梦宗、お疲れー」
同じ仕事場の男たちとも会話を交わす。
鬧影の前に来るとただいま戻りましたと挨拶をして、時間までまた自分の場所で別の仕事をしていた。
打ち合わせ先から連絡がきて、梦宗の接待はとても良かったと言われた。
内容に関しては詳しく教えてもらえなかったが、まあ、良いとしよう。
仕事に関していえば、鬧影から見ても申し分ないほどの仕事ぶりを見せる梦宗だが、時折何を考えているのか分からない時がある。
男性と接する時も女性と接する時も、上司と接する時も部下と接する時も、基本的には話し方も声色も顔色も何も変えないで話す梦宗は、一見、裏表がなく良い奴だ。
しかし、表情も何も変えないからこそ、鬧影からしてみると思考が読みとれない部分があるのだ。
困っているとか、悩んでいるとか、上手くいっているとか、失敗したとか、成功したとか、どんなことがあっても喜怒哀楽をあまり見せない。
思えば、入ってきた当初からあまり目立った行動を見せたことがない。
これといって大きな成功もなく、かといって仕事が出来ないわけではない。
ただ、目立たないように動いているだけで、実力もあるのに決して前に出ようとはしない。
謙虚と言えば謙虚なのかもしれないが、別の見方も出来てしまうため、鬧影としてははっきりと答えが出ない状況なのだ。
帰り際、鬧影はみんなにこんな言葉をかけた。
「明日は休暇だ。みんなしっかりと身体を休めるように」
「しーーーーーーっしょおっっっ!!!」
「だから、師匠を殺そうとする弟子がどこにいるんだよ。いい加減止めろ、それ。毎朝毎朝縁起の悪ィ起こし方しやがった」
「ちぇっ。どうせ避けるんだから別にいいじゃないですかー。それに、一度は一応ちゃんと起こしてるんですよ?囲炉裏から鳥が囀るような声で。なのに起きないから、こういう起こし方しかないんじゃないですか」
「囲炉裏から俺の寝床まで何メートル離れていると思ってんだ。鳥が実際に囀って起こすのと、お前が囀るような小せぇ声で起こすのとじゃ、違うに決まってんだろ」
「いちいち五月蠅いな。折角起こしたのに。起こす前に息の根を止めてさしあげましょうか」
「息の根止めてから起こしたって二度と起き上がるわけねぇだろ。朝からチャンバラごっこするほど俺ぁもう若くねぇってのに」
「そうすね。おっさん」
「てめぇこら」
毎朝起こし方が雑な祥哉は、包丁を片手にいきなり冰熬を襲う。
本人は一度起こしていると言っているが、起こしてはいない。
寝ている冰熬の両肩を自分の両膝できっちりとホールドしてから、包丁を両手でしっかりと持ってそのまま下に下ろしている。
それでも、冰熬はなんとかそれを避けているらしい。
大きく欠伸をしながらも、避けた冰熬に向かって包丁やら斧やらのこぎりやらを投げつけてくる祥哉。
首を動かし、身体を動かし、それらを避ける冰熬は祥哉に背中を向けて用意されている食事へと向かう。
壁や床に突き刺さったそれらを回収しながら、祥哉も席につく。
「おい」
「なんすか」
「買い出し行って来い」
「なんで俺が」
「弟子なんだろ?買い出しくらい行って来い。それか熊の一頭や二頭倒してこい」
「簡単に言うけど、普通の人間は熊を倒す術なんて持ってないから。銃持ってればまだなんとかなるけど」
「だから買い出しに行って来いって言ってんだろ。どうせお前じゃ熊には勝てねえよ。大人しく街に行って肉買って来い」
熊に勝とうなんぞ思ったことがないが、今のご時世、熊を自分の手で捕まえて食べている人が珍しいだろう。
それに、きっと熊よりも美味しい肉があるはずだ。
ウサギや狐はどうして捕まえないのかと以前聞いたところ、なら捕まえてみろと祥哉は言われたことがある。
すばしっこいとか、逃げ足が速いとか、そういうことだろうと思っていたのだが、捕まえるには捕まえられたのだが、なんというか、じーっと見られると、罪悪感が沸き上がってくるのだ。
それで思わず手を離してしまった。
冰熬も同じ理由なのか、それは祥哉にも分からないが、多分そうなのだろう。
それに、この辺りでは人を襲う熊が多くいるため、それが理由でもあるのだろう。
朝食を食べ終えると、冰熬はいつものようにまた太陽の光を浴びながら寝そべる。
急に大雨に降られて濡れてしまえばいい、と心の中で呟いたところで、祥哉は買い出しに街に出かけた。
こうして1人で出かけることは久しぶりだ。
大抵は山の中で何かしら採取したものを調理しているため、あまり街に下りてきて買いだしをすることはない。
かと言って、冰熬と2人で街に来る、などということはまず有り得ない。
冰熬はあまり街に下りるのを好まないというのも理由であげられるが、それ以前に何かあるようだ。
祥哉が街に下りると、色んな店から声をかけられる。
「お兄さん、見ない顔ね!寄っていかない?」
「兄ちゃん兄ちゃん!俺んとこ見ていきなよ!安くしとくよ!!」
「そこの格好良いお兄さん!ちょいと見てっておくれな!良いもん揃ってるよ!」
こんな具合に、活気あると言えば活気あるのだろうが、一々返事をしようものなら、何かしら買わされそうな雰囲気だ。
適当に微笑み返しながら、目当ての肉屋を探し歩く。
冰熬といるときにはそれほど目立たない背丈も、こうして街に下りてきてしまうと意外と目立つもので、顔一つひょっこり出てしまうのだ。
まるで小人の世界に迷い込んだような、そういう気分にも陥る。
いつも自分よりでかいおっさんといるせいだろうか。
肉屋を見つけて足早に歩いていると、途中、綺麗な格好の女性たちに取り囲まれた。
「この辺じゃ見かけないお兄さんね」
「どちらからいらしたの?」
「今日、遊んでいけませんの?」
「お兄さん、とても背が高いのね。それに胸板も厚くて男らしいわ」
何処の店の女性たちかは知らないが、きっと夜の商売の女性たちだろう。
今は昼間だというのに、それに祥哉には肉を買って帰るという任務が残っているというのに、女性達は祥哉の腕をがっちりとホールドしてしまう。
祥哉も健全な男児ではあるのだが、今はそんな男としての欲求よりも、上回っている感情があるためか、胸を押し当てられようと、綺麗な顔で微笑みかけられようと、なんとも思わない。
それになにより、金でもあるように見えるのだろうかと、そっちの方が気になってしまった。
「買い出しの途中でね、悪いけど離れてくれるかな」
はっきりとそう言っても、女性たちはクスクスと濁すように笑うだけ。
真っ赤な口紅は艶やかで、きっと薄暗い中で見たら妖艶なのかもしれないが、昼間に見せられても、ただ化粧が濃いようにしか見えない。
顔立ちもきっともとから綺麗なのだろうが、ばっちりとメークをしてしまうと、実際の年齢よりもケバく見えてしまう。
「お兄さんたら、何をそんなに急いでいるの?ちょっとくらい、時間ないの?」
「お兄さんなら、サービスしちゃうのに」
「ねえ、最近私たちも楽しいことなかったの。だから、一緒に楽しいことしましょ?」
街に下りるとこういうことに巻き込まれることが多いから嫌なのだ。
世間知らずなのは立場から言えば祥哉の方かもしれないが、それならいっそ、世間知らずで良いと思ってしまう。
そもそも、女性たちに取り囲まれると、その女性達に仕事とはいえ恋心を抱いている男たちから目をつけられるから面倒なのだ。
そんな男たちに冰熬と住んでいる古民家の場所を突き止められたりした時には、きっと冰熬は祥哉を街に送り返して、戻る頃には別の場所に引っ越してしまっているだろう。
さてどうやって追い払おうかと考えていると、街の男たちが女性たちに声をかけてきた。
「そんなつれない兄ちゃんより、俺達を誘ってくれよ」
「そうそう。俺達だって、お譲ちゃんたちを楽しませてあげられるよー?」
酔っ払っているわけでもないが、変に絡んできた男たちに、祥哉は嫌悪感ではなく感謝を抱いていた。
そのまま連れて行ってくれと、出来ればもっと上手い言い回しで遠ざけてくれと。
しかし、女性たちはそんな年上の男に対し、こう言った。
「嫌よ。こっちの若いお兄さんの方が良いわ」
「私達にだって選ぶ権利があるのよ?あなたたちには悪いけど、今は昼間。仕事外なの。夜なら仕事で相手してあげられるから、その時来てくださる?」
仕事じゃないなら余計離れてほしいと思った祥哉だが、もうその時には男たちも敵に回してしまったため、どうすることも出来なかった。
しかし、正直言うと、祥哉の手には買い物籠があり、その中には肉を買うだけの金が入っている。
もしも金に何かあって肉を買えなかった場合、冰熬に熊を捕まえてくるまで帰ってくるなと言われそうだ。
それだけはどうしても避けたい祥哉は、女性たちにこう告げる。
「じゃあ、そこの肉屋で買い物してからでいいかな?ちょっと待っててくれる?」
「わかったわ!」
「きゃっ!やった!」
「待ってるわね!」
肉屋では揚げ物なども売っているため、女性たちは着ている綺麗なドレスに臭いがつかないようにと離れる。
そう見込んだ祥哉は、上手く女性たちを引きはがすことが出来た。
そして肉屋に行って肉を買うと、そこの主人に事情を説明し、頼んで裏口に案内してもらった。
女性たちからは上手く逃げられた祥哉だったが、忘れていた。
男たちを敵に回していたことを。
冰熬が待っている古民家に向かって歩いているとき、がさっと物音がした。
「・・・・・・」
尾行されていたのかとようやく気付き、ここで気付いて良かったと足を止める。
肉が入っている籠をそっと置くと、後ろを振り返る。
そこにいる男たちを笑顔で迎える。
倒れている男たちを街の方までせっせと運ぶと、祥哉はようやく古民家に向かって歩く。
「ったく。面倒くせーよ、街は」
そんな文句を言いながら帰ってくると、そこには先客がいたようだ。
誰だろうと、こそっと覗いて見てみると、冰熬の他にいたのは1人の男。
赤いような橙のような、そんな色の長い髪をした男は、胡坐をかいて片肘をつき、頬杖をついて目を瞑っている冰熬に何か話しかけている。
祥哉は音を立てないように、そっと近づいてみる。
「どうして今更んな話しを俺にしにきた」
「冰熬、お前の力が必要なんだ。かつては俺達と手を組んでくれていただろう?それなのに、今じゃこんな錆びれた場所で隠居生活なんて。実にもったいない。お前ほどの実力があれば、世界だってひっくり返せるのに」
冰熬は興味無さそうに欠伸をする。
「だから、俺はもうそんなお遊びには付き合わねえって言っただろ。てめぇらの都合で動かされるのは御免なんだよ」
「そういうな。報酬なら、お前が望むだけやる。頼む。考え直してくれ」
「つか、よくその面で俺の前に来られたもんだな」
「俺も生き延びるためなら何だってするよ。お前と手を組めば、俺の天下だ。な?そうしたら、こんなところで地味な生活しなくても、もっと派手に豪遊できるんだ!金だって女だって酒だって、なんだって好きなこと出来るんだ!」
その男は何か興奮したように立ち上がり、冰熬の前で力強く演説をしている。
そんな男の様子に、冰熬は眠たそうに目を開け閉めしながら、呆れたようにため息を吐く。
「・・・・・・別に俺ぁ、贅沢してぇなんて思っちゃいねえよ。今の生活に不服もねえしな。金も女も酒も、使いようによっちゃ、尻拭いが大変だからな」
「持ってる分には困らねえもんだろ?」
「もう帰れ。二度と此処には来るんじゃねえ」
帰れと言われた男だが、まだ何か話そうと一度は口を開いたものの、冰熬が聞く耳を持っていないことが分かると、仕方なくその古民家から去って行った。
すぐに帰っては怪しまれるだろうと、祥哉は少しその場でじっとしてから、時間差で帰ってきたふりをした。
しかし、先程の男のことは気になってしまい、何か思い出したような感じで冰熬に尋ねてみた。
「そういや、帰ってくる途中、長い髪の男とすれ違ったけど、ここに来たの?」
「ああ」
「へえ・・・。知り合い?」
「まあな。お前には関係ねぇよ」
「・・・・・・」
「それより、肉は?」
「買ってきた」
買ってきた肉を早速調理し始めると、冰熬は冰熬で何を思ったのか、近場を歩く用にと外に出してある草履を履き、近くに生えている葉っぱを細い茎ごと折って口に咥えていた。
何がしたのかは良く分からなかったが、こうなるとただの放浪人にしか見えない。
いや、実際、心は常に放浪人だが。
「なにやってんだか、俺・・・」
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