怔木 高満

第1話現罪

 音、なんの音だ。繰り返し等間隔で刻まれる音。少し肌寒い、風も鳴いているようだ。


 ふと我にかえる。あぁ、そうだ。やりきれなくなって車を走らせた。故郷とはかけ離れた薄ら寒い断崖の袂。少しでも気を紛らせたくて海の近くまで来たんだっけ。今は亡き愛犬の声も傍らにいるはずの人も今はもういない。あるのはこのだいぶくたびれた愛車のみだった。そろそろ大掛かりなメンテナンスに入れなければ調子を落としてしまうだろう。その気力も資金も尽きかけている。


 今はただ、他人を気にせずここで紫煙を燻らすとしよう。

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