第27話 水元先輩

放課後、掃除をしてゴミ捨てに行くと、後ろから一ノ宮先輩たちに声をかけられた。


「何勝手なことしてくれてんの?」


「何がですか?」


「私の焚翔だって言ったでしょ!」


「それなら私だって言ったじゃないですか。"先輩を好きな気持ちは負けたくない"って」


「人の男に手を出すとか…最悪なんだけど?」


「一ノ宮先輩、焚翔先輩とは付き合ってないですよね?」


「うるさい!!私が先に好きになったのよ!横取りすんな!!」


そう言って一ノ宮先輩は私を突き飛ばしてきた。


「いったぁ…」


「私の焚翔に手を出すからこうなるのよ。奈那、あれやって」


「はーい♪」


そう言うと木内先輩が私の頭上から袋に入ったゴミをかけてきた。


「これでちょっとは反省しなよね!」


「陽から焚翔くんを奪うなんてぇ、最低な女なのねぇ」


「ってか、臭っ。そんなんじゃ焚翔と帰れないじゃん(笑)」


「…」


「泣いちゃう?泣いちゃうのぉ?」


3人は俯いて黙っている私を見て楽しそうに笑っている。


「…先輩たち」


「は?何よ」


「こんなことして楽しいですか?」


「楽しいけど?」


「はぁ…。先輩たちって小学生で時が止まってるんですか?」


「は?」


「ってか下駄箱のことも先輩たちですよね?」


「そうだとしたらなんだって言うの?」


「そんな子供みたいなことしてないで、正々堂々としてきたらどうですか?」


「…」


「焚翔先輩のことが好きなら、正々堂々と気持ちを伝えたらいいじゃないですか。こんなことしてても嫌われるだけってわかってますか?」


「何よ、偉そうに!」


一ノ宮先輩は怒りながら近寄ってきた。

でも、その時。


「なぁにしてんの?」


「…水元先輩」


「一ノ宮、お前本当に焚翔に嫌われるぞ?」


「…」


「ま、俺には関係ないけど。」


水元先輩はそう言うと私に近寄ってきて"大丈夫?"って言いながら立たせてくれた上に、ゴミを払ってくれた。


「大丈夫ですっ」


「行こっか、焚翔が探してたよ」


「あ、はい!」


「…次、詩ちゃんに何かしたら焚翔じゃなくても許さないよ」


水元先輩は一ノ宮先輩になにかを耳打ちして私の手を引いてその場を離れた。


「水元先輩、ありがとうございました!」


「俺、ああやって陰でやってるやつ嫌いなんだよね。」


「そう…なんですね」


「大事なおん…仲間が陰で傷つくのとかみたくねぇもん。」


「水元先輩、焚翔先輩たちのこと大好きですもんね!」


「そうだな…俺!あいつらのことだーーーい好きだからな!」


ニカッと笑う水元先輩を見て、やっぱりこの人はすごく可愛い人だなと思うのだった。


その後、焚翔先輩たちと合流すると水元先輩は"大好きだー!!"と言いながら、焚翔先輩に抱きついていた。


焚翔先輩は満更でも無さそうにしてたけど、引き離そうと必死だった。





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