第8話 働き蜂



ベッドから這い出ると

着替えもせずに外へ出る


手に持っているのは

焙煎セット


キャンプ用のガスストーブに炎を着け

焙煎用のザルに生豆を入れる


これを台所でやったなら

茶布が散乱し

朝から怒られ

大切な朝の時間が台無しになってしまう


だからと言って

嫌々ながら外へ行くのではなく

喜んで外へ出ている


程良く煎られた豆を

珈琲ミルに入れてハンドルを回す

部屋いっぱいに珈琲の香りが漂いだす頃

一人目の住人が

眠たそうな目を擦りながら起きてくる


私は珈琲を淹れて

「召し上がれ」

と言う


その住人は

少しだけ笑って頷くが

私は素知らぬふりをして

花の水やりの為に再び外へ出る


陽射しを浴びて輝く水の下

気が付けば働き者の蜂が

美しく咲いた花の上でホバリングしていた

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