第37話 前夜6

 月明かりに照らされた縁側で帯刀と元子は何杯目かのお茶を飲んでいた。

「さすがにもうお茶は飲めないな」

帯刀は茶碗を置き月を見上げた。

「本当にあんな所に人を滅ぼす力が眠っているのかねえ。こうして見ていると美しいだけなんだが」

「それを確かめるためにもオーブリオン財団とは親密な関係を早めに気づかなければなりません。明日フランスへ向かいます」

「俺は部下の掌握だな。昨日までの敵と戦線を組むんだからな。頭が痛いよ」

そう言って帯刀は立ち上がり大きくのびをした。

「そろそろ帰って眠りたいところだが、お宅の兄ちゃんと真風の話はそろそろ終わったかな」

その言葉とタイミングを合わせたように隆俊と真風のいた部屋のふすまが開いた。

まぶたを赤く腫らした真風が現れた。その姿を隠そうともしないところに真風の動揺と心理が見て取れた。

「隆俊様が情報の摺り合わせをしたいそうです。どうぞ中へ」

「まだ眠れませんわね。眠気覚ましに今度はコーヒーをご用意いたしますわ」

元子はにこりと笑った。

この会議の後、三日間黒葉真風は館に留まることになった。

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