32 真
――奥さん以外の女のヒトとはしないの?
――なんか、こう、いろいろと面倒になってね。
――ドロドロがあったとか?
――そうだな。もう、ドロドロに耐える気力も体力もないな。仕事も忙し過ぎるし……。
――そうなんだ。
――近々は、海外のコピー商品に悩まされているところ。まあ、こっちは営業じゃないんで技術的対策を立てるのが仕事だが、それが面白くない。普通の開発の仕事がしたいよ。ところで……。
――ところで?
――今は前戯の最中ではありませんでしたかな、可愛い子?
――いや、これはこれで十分前戯だと思いますけどね、可愛い子!
それから二人とも何故か異様に可笑しさが込み上げて来て、クスクスと笑いながらセックスする。だから大した快感は得られないが、間違いなく楽しいセックスだ。が、それは違うという人もいるのだろうな? 男の経験はあったが、言葉の本来の意味でわたしを女にしたのは義父だ。わたしの母の勘は鈍いが、さすがに夫の浮気には気付いていたと思われる。が、よもやその相手の中に自分の娘がいたとは思い及ばなかっただろう。知っていて、未だに知らぬフリをしているのなら驚愕モノだが、おそらくそういったことはないと信じる。それにアイツは、もうこの世にいない。先祖累代の墓の下、骨壷に収められた骨があるばかりだ。元々神経が細かった彼の後妻は、わたしと夫との関係を自ら暴き、可笑しくなる。同時期、わたしも精神的に嫌気が差していたので、そんな妻を利用する。こちらから、いろんな言葉をかけたのだ。それだけで彼女が上手く刺し殺せるかなと不安だったが、しばらくは毎日それを願い、忘れていた頃に訃報を聞く。だから求めてはいけないものらしい。でも結果的にアイツが消える。
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