閑話 深夜に小さなキミと
金曜日の深夜の散歩。
コンビニに向かう私の足はかろやかだ。
もしかしたら、カレに会えるかもしれない。
「おねーさん、こんばんは」
コンビニスイーツの前で悩んでいた風のカレが私に気づいて声をかけてきた。
「新作スイーツのどっちを買おうかこまってるんだー」
ふたつのスイーツの間を行ったり来たりしながなら考え込んでるカレの姿は非常に可愛い。
初めて会ったときもカレは困っていた。
小さいカレは棚の一番上にかけられていた甘栗の袋を取ることができず、棚の前でおろおろしていた。
周りの人はカレに気が付いていないかのように無関心だった。
「これが欲しいの?」
私は思わず声をかけた。
「ボク、くりがだいすきなんだー」
それから、週末深夜のコンビニでカレとはちょくちょく顔を合わすようになった。
週末の密かな楽しみである。
「よし、このくりくりモンブランにするよ」
カレは大きなモンブランを手に取った。
「くりくりモンブラン?」
「くりのクリームモンブランでくりくりモンブランみたい」
ニコニコとモンブランをかごに入れるカレ。
「私も同じのにしよーっと」
デザートが決まった。
レジに手の届かないカレを持ち上げてあげ、会計を済ませる。
「おねーさん、いつもありがとー」
雑談をしながら少し歩き、手を振ってカレと別れた。
この少しの時間が週末の私の癒やしだ。
部屋に戻った私は早速パソコンの電源を入れた。
週末の癒やし第二弾、週末恒例の深夜配信に備えるのだ。
デザートに合いそうな紅茶も忘れずに用意した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「こんばんわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」
❤[わんわーん]
◯[こんばんわーん]
「週末恒例の深夜配信、今日は新作のコンビニスイーツのくりくりモンブランをたべるよー」
◎[クリクリってw]
◯[それ、おいしーよ]
【わたしもおなじのたべまーす】
そう打ち込み、くりのクリームをすくって口に運ぶ。
栗の甘みとクリーミーな舌触りに頬が緩んだ。
―― 解説 ――
777文字のオリジナルは、
https://kakuyomu.jp/works/16817330654177464262
で公開しており、KAC2023、第4回お題「深夜の散歩で起きた出来事」の応募用作品として執筆しました。
短編時、エピソードタイトルは「推しに会える週末深夜の癒しの時間。」でした。
このエピソードはそのうちアーカイブ配信としてまとめようかと考えていたのですが、LIVE ch の方が良い気がしてきたので先に再録しておくことにしました。
わん太視点でなく、古参リスナーのおねーさんの話となります。
アイコン的には初期は◆で、後半❤になっているリスナーです。
とは言え、リスナーに関しては個人の特定はなく、ふんわりとしたイメージで常連さんがいる感じとなります。
わん太のシリーズにおいては、エピソード単位ではアイコンである程度リスナーの区別がつくように書いています。
ただし、厳密なものではなく、同じアイコンでも複数人がいる場合もあります。
これら、リスナー部分も気に留めて楽しんでいただけると嬉しいです。
「それでは、おやすみわ~ん」
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