魔王襲来

「こんばんは、ぬいぐるみ系VTuber猫乃わん太わん。

現在、大変な状況となっているので、小さな声でお届けしています」

いつものように配信を開始しようとしたとたん、のっぴきならない事態に陥ってしまったのだ。


❤[はわわ~]

◯[これは……]

◎[こんばんにゃーん?]


―― 魔王襲来


いわばそんな状況だ。

ボクの身体はガッチリと押さえつけられており、逃げ出すこともできない。


◆〚これは、やばい状況なのかな〛

◎[うらやましいような、そうでないような]

❤[わたしもわん太きゅんを抱きまくらにしたい……]


ボクにとっては大変な状況なのです。


「ふにゃ~ん」

ゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえる。

ペロペロ、いや、ザリザリと首筋を舐められている。

毛づくろいをしてくれていると思えば親愛の情があるのかもしれないが、前足でガッツリとホールドされており、身動き一つとれない。

ボクは、時々現れてはじゃれてくるこの黒猫のことを『魔王』と呼んでいる。


◯[わん太、気に入られ過ぎでしょ]


ひとしきり舐め回した魔王はまたふらりと何処かに消えていった。


「ふー、やっと開放されたわん」


❤[おつかれー]

◇[しかし、真っ黒い子だねぇ]

◆〚クァールかな?〛


「何の品種かは知らないかな。むしろ、どこに住んでてどこから入ってきているのかもわからない」


◯[草]

◆〚気にしたら負けなヤツかも〛


「体中ベタベタなので、今日はもう終わってお風呂にするよ。

それでは、みんな、おやすみわ~ん」


▽[おやすみ~]

◎[しっかり洗うんだよ]

❤[おやすみわ~ん]


―― 本日の配信は終了しました……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る