Peach Flows

佐武ろく

全てはここから

【先か。後か。利益には必ず代償を払わなければならない。例えそれが肩代わりだとしても】



「ハァ……。ハァ……。――この。――忌まわしき人間風情が!」


 その地を揺らすように低く憎悪に満ち溢れた声は、堪えるように言葉を途切らせながらも――最後にはハッキリと感情を吐き出すが如く言葉を口にした。

 辺りには無数の死体が転がり。

 辺りは血の海が広がっていた。

 腕、足、上半身、下半身……。死体は五体満足なものから様々。

 ――そこには惨劇が広がっていた。

 だが一つだけ共通する点があり――それは死体の全てが『鬼』である事。

 そして仰向けとなった一際巨体の傍らに立つその男は、鬼の胸へ押さえつける為の足を乗せながら刀を喉元へと向けた。切先から滴る血は赤く、鬼を見下ろす双眸はその刀の様に鋭い。


「これで……。終わったと思うな。ハァ……。お前も。……忌まわしいその血を、体に宿す者も……」


 最後まで聞く気はない。そう言うように刀は振り上げられた。


「一人残らず消し去って――」


 言葉を遮った一閃。

 最後に不敵な笑みを浮かべその首は、体から切り離されると湧き水の様に鮮血の海を広げながら転がった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る