その5。「レベル上げの相手と言えば格上だろ?」①
「それじゃあ行ってくるねセイド!」
俺は、《斬撃強化・Ⅶ》《身体強化・Ⅴ》《破壊防止・Ⅴ》の付与された超貴重で高い短剣と帰還石、物が沢山入るアイテムポーチを持って、セイドに手を振りながら家を出る。
「気をつけて行くのですよ! 大怪我なんてすれば私がクビにされてしまいます!」
「大丈夫だよ! 無傷で帰って来るから!」
本当は死にまくってレベルを上げようと考えているなんてとてもじゃ無いけど言えないので、取り敢えず安心させる言葉を投げ掛ける。
今回のモンスター討伐は、俺がシンシア様と仲良くなったご褒美的なもので、一度だけ許してもらった。
期限は残念ながら1日しか無い。
しかしその代わり、帰還石と不意の攻撃を防ぐ魔道具を貰っており、余程の事がない限り死なない様にしている。
本来は護衛が付いていたのだが、俺が無理を言って1人で行かせて貰えるようにしたからな。
そしてその1日で、俺は強くならねばいけない。
女神の言った通りに体は鍛えたが、そもそもこの世界はレベルがある乙女ゲー世界なので、レベルアップした方が何十倍も効果があるのだ。
「えっと……確かこの辺りに……」
俺が辺りを見渡すと、少し離れた所に小さな小屋があった。
———転移屋だ。
お金を払えば好きな所に転移してくれる、大変ありがたいお店である。
この店は乙女ゲームでもどうやらあるらしく、様々なマップに移動する時にこれを使うんだとか。
まぁゲームでは、無料の代わりに一度行ったことのある所しかいけないらしいけど。
俺は店の店主に声を掛ける。
「こんにちは! 予約していたセーヤと申します。古代竜の遺跡に転移してください!」
「ん? 君がセーヤ君か。『古代竜の遺跡』だと? あそこには何も無いが……」
「一度行ってみたかったんです!」
本当は別の理由があるのだが、それらしい理由を挙げてみる。
すると店主の40代の無精髭を生やした男は笑みを浮かべた。
「そうかそうか。その歳で歴史に興味があるのか! ならこの転移陣に乗ってくれ」
「はい!」
俺は小屋の真ん中の直径3メートルくらいの転移陣に乗る。
すると店主がボソボソと詠唱を唱えると、転移陣が光だし———。
「良い旅を———《転移》!」
俺は奇妙な浮遊感と共に視界が光で埋め尽くされた。
光が収まりゆっくりと目を開けると、そこには大きなかっこいい竜の遺跡が聳え立っていた。
その口から中に入れる様だ。
先程店主が言った通り、此処には何も無いと思われているが、とある事をすれば秘密の空間が現れるらしい。
女神が言っていた。
俺は一応自身のステータスを確認する。
———————————————
セーヤ・フロント
人間 6歳
レベル:1
《ステータス》
体力:100/100
魔力:130/130
攻撃:13+100
防御:10
敏捷:13
魅力:94(固定)
幸運:91(固定)
《固有スキル》
【死に戻り】
《スキル》
【短剣術:Ⅲ】【身体強化:Ⅲ】【付与:Ⅲ】【鑑定:Ⅲ】
《魔法》
【火魔法:Ⅲ】【水魔法:Ⅳ】【風魔法:Ⅲ】
【地魔法:Ⅲ】
———————————————
6歳児にしてはだいぶいいステータスだと思う。
初期値が今後のステータス増加値になる。
そしてスキルと魔法は最低がⅠで最大がⅩなので、まぁ悪くは無いだろう。
俺は何度か緊張をほぐすために深呼吸をした後、若干疑いながらも入り口の前に立ち、
「———私の名前はセーヤ・フロントと申します。竜の主の資格を得るため挑戦します———」
と声高らかに宣言する。
すると石の竜の瞳が光り、口に異次元へと繋がる空間の裂け目が現れた。
俺は短剣を握り締めて中に入る。
薄い膜を突き破る様な感覚と同時に俺の視界に空中に浮かぶ丸い舞台と、そこに続く階段、下にはマグマが渦巻いていた。
俺はゴクッと唾を飲み込んで階段を登る。
そして舞台に辿り着くと……。
ゴゴゴゴゴゴッッ!!
突如石で出来た階段が崩れ落ちる。
それと同時にマグマから真紅の鱗に身を包み、大きな翼を持った全長100メートル以上ありそうな巨大なドラゴンが姿を現す。
『———汝が新たな挑戦者か?』
「そうです。僕の名前はセーヤ・フロント。貴女の主人となる者です!」
俺が短剣を構えて宣言すると、ドラゴンは大きく口を開けて笑い出した。
『ははははははは!! よく言うでは無いか人間の子供よ!』
俺は笑っているドラゴンに鑑定をしてみるも、《失敗》とだけ表示された。
やはりまだスキルレベルが足りない様だ。
『———それでは小手調べだ』
ドラゴンがそう言うと、ドラゴンが鉤爪で俺の体を3つに切り裂いた。
《死亡しました。固有スキル———【死に戻り】が発動します。物理攻撃で死んだため、体力・攻撃・防御・敏捷ステータスが1上昇します》
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