第5話
水瀬さんと嘘のお付き合いを初めてから一週間以上が経過していた。 今は午前の授業が終わって昼休みになった所だ。
「ふへへ……」
そしてもちろん昼休みは彼女の水瀬さん……とではなく、友達の達也と一緒に学食で昼ご飯を食べていた。
「ど、どうしたの?」
俺が変な笑い方をしながらご飯を食べているのが気になったようで、達也は怪訝そうな顔をしながら俺にそう尋ねてきた。
「あ、いや、何でもないよ」
「う、うん? それならまぁいいけど」
いやどう見ても何でもない訳ないんだけど……でも達也は詳しく聞いてこようとはしてこなかった。 こういう所が達也の優しさだと思う。
まぁ話を戻して、何で俺がニヤニヤと笑っているのかと言えば……もちろん初めての彼女が出来たからに決まってるじゃないか。 いや彼女は彼女でも“嘘”の彼女なんだけどさ。 でも偽物の彼女だとしても思春期男子的には幸せなんでオッケーです!
(うーん、でもなぁ……)
でも初めての彼女(嘘)が出来たからって喜んでいるばかりじゃあ駄目だよなぁ……だってここから新しい問題がどんどんと出てくるんだしさ……って、え? 新しい問題って何だって?? いやそんなの決まってるじゃん! お付き合いって具体的に何すればいいんだよって話だよ!
(いや本当に何すればいいんだろうなぁ……)
という事で俺は水瀬さんとお付き合いを始めたのは良いんだけど、結局何をすればいいのかわからなくて困っていた。 いやでもしょうがないじゃん、だって今まで彼女なんて出来た事のない童て……じゃなくて、純粋な思春期男子学生な訳だしさ。
まぁそこら辺は男性経験が豊富そうな水瀬さんに任せるっていうのも選択肢としてはあるんだろうけどさ……でも、やっぱりそこは彼氏(嘘)である俺からエスコートをしたいじゃん?
だけど具体的に何をすれば良いのか俺には全然わからなかったので、水瀬さんとお付き合いを初めて一週間以上が経過したのに未だに恋人らしい事はあまり出来ていなかった。
◇◇◇◇
その日の放課後。 俺は学校から少し歩いた所にある公園でとある人が来るのを待っていた。
「ごめんね、待ったかな?」
「あ、いや全然だよ!」
その公園で待っていると、後ろから水瀬さんが声をかけてきた。 俺が待っていた相手とはもちろん水瀬さんの事だった。
学校の皆に付き合ってる事は秘密にして欲しいと言われていたので、なるべく俺は学校にいる間は水瀬さんには寄らないようにしていた。 まぁどうせ近い内に振られる訳だし、あまり学校内でガツガツ行くのは水瀬さんにも迷惑だしな。
という事で俺達が一緒になれるタイミングというのは帰宅時くらいしかなかったので、俺は数日前にラインで水瀬さんにとあるお願いをしてみた。
―― 暇な時だけでいいんで良かったら放課後一緒に帰りませんか?
―― いいよー(猫のラインスタンプ)
そんなメッセージを水瀬さんにダメ元で送ってみたんだけど、意外にも水瀬さんはすんなりと受け入れてくれた。 しかもそれをお願いしてから水瀬さんは毎日一緒に帰ってくれていた。 意外と水瀬さんは約束とかは律儀に守るタイプの子なのかもしれないな。
「……でさ、そんな事があったんだよね」
「あはは、そうなんだ」
そんな訳で今日も俺は水瀬さんと一緒に学校から帰宅している所だった。 水瀬さんは俺の話をよく聞いてくれるし、笑いながら相槌も打ってくれるのでとても話しやすい……のだけど、水瀬さんの笑顔は何というか嘘っぽく見えた。
(いやまぁ、そりゃそうだよなぁ)
だって水瀬さんと俺は偽物の恋人だからなぁ。 別に好きでもなんでも無い男の話を聞いても面白くは無いだろうしさ。
まぁでも、それでも水瀬さんの時間を貰って俺は付き合って貰ってる訳だし、少しくらいは水瀬さんにも楽しんで貰いたいなと俺は思った。
(うーん、でもどうやって彼女を楽しませる事が出来るんだろう?)
俺はその日の夜、水瀬さんに楽しんで貰える方法が何かないか考えてみる事にした。
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