スクールカースト最上位のギャルが噓告白をしてきたので付き合ってみた話。
tama
第1章
第0話(由美視点)
懐かしい夢を見た。 それは私が小学生に入ってすぐの出来事だった。
『うわぁぁぁぁぁぁぁん!!』
その日、私はお母さんの膝の上ずっと泣いていた。 家で飼っていたペットの犬が病気で亡くなってしまったんだ。
そのペットの名前は“おもち”という全身が真っ白な大型犬で、私が赤ちゃんの頃からずっと一緒に暮らしていた大切な家族だった。
だから私はそんな大切な家族であるおもちが突然この世から居なくなってしまった事にショックを受けて、私は涙をボロボロと溢しながら大きく泣いてしまっていた。
『由美はおもちの事大好きだったものね。 でも大丈夫よ、おもちはきっと天国で由美の事を見守っていてくれるはずだから』
『う、うぅぅぅっ……ぐすっ……で、でも……うぅぅぅ……』
お母さんはそんな大号泣をしている私の頭を優しく撫でてくれていた。 そしてそれは私が泣き止むまでずっとし続けてくれた……
私が泣き止んでからしばらく時間が経った後、私はお母さんと一緒に今まで撮ってきた家族写真のアルバムを眺めていた。 そのアルバムには当然おもちと一緒に撮ってきた写真が沢山入っていた。
『……あっ』
『うん? どうしたの?』
そのアルバムを見ている時に私はとある写真を見つけてしまった。 その写真は近所の公園でおもちと散歩中に撮った何気ない一枚だった。 でもその写真を撮った数週間後におもちの病気が見つかり……そしてそのまますぐにおもちは亡くなってしまった。
『……ぅ……うぅ……』
つまりこの写真がおもちと一緒に撮った最後の写真だったんだ。 その事を思い出すと、私はまた瞳から涙が溢れてきてしまった。 あぁ、駄目だ……おもちの事を考えると涙が止まらない……
『……あらこの写真、おもちも由美も二人とも本当に楽しそうに笑ってるのね……』
『……ぐすっ……ひっぐ……う、え……?』
突然お母さんがそう言ってきたので、私は涙を流しながらお母さんの方に顔を向けた。 するとお母さんは、私とおもちが写っているその写真を見ながら優しそうに微笑んでいた。
『……由美がおもちの事を好きだったように、おもちも由美の事が大好きだったのね。 ふふ、この二人の写真の様子を見るだけでとてもよくわかるわ』
そう言うとお母さんは私の頭を撫でながら、そのまま優しい口調で続きを喋りかけてきてくれた。
『おもちが居なくなって悲しくなるのはわかるわ。 私もおもちの事は大好きだったからとても悲しいもの……』
『……うん……』
「……でもね、天国にいるおもちはきっと、由美の悲しんでる顔なんて見たくないと思うの。 だっておもちは由美の笑った顔が好きだったんだから、ほら……ね?』
そう言ってお母さんはアルバムに入っているその写真をもう一度私に見してきた。 ……うん、確かにその写真は私もおもちも本当に嬉しそうに笑っていた。
『だから、これからはおもちの分まで一生懸命笑顔で生きていきましょう。 色々な事を経験して友達を作って楽しんで笑い合って……おもちの分まで沢山の楽しい思い出を作っていくのよ』
『……ぐすっ……沢山の、思い出……?』
『うん、そう。 きっと天国にいるおもちも大好きな由美が笑顔で過ごしている事を望んでいるはずだから。 だから由美もおもちとまた会える日が来るまでに、沢山の楽しい思い出を作って……そしていつかそれをおもちに話してあげましょうよ』
『……ひっぐ……で、でも……おもちとはもう……会えないよ……ぐすっ……』
『ううん、大丈夫よ、いつか由美がおばあちゃんになって……そして天国に行く事になったら、きっとそこでおもちとはまた会えるはずだから。 そうしたらそこで今まで由美が作ってきた沢山の楽しい思い出をおもちに話してあげてね』
お母さんはそう言うと私に優しく微笑んでくれた。 ……うん、そうだよね、おもちは私がこんなに泣いてる姿なんて見たくないよね。
『……ぐす……ひっぐ、う、うん……わかった……』
『うん、由美はいい子ね』
私がそう言うとお母さんはもう一度優しく私の頭を撫でてくれたので、私はそのままお母さんの事をぎゅっと抱きしめた。
『……ねぇ、この写真……貰ってもいい?』
『えぇ、もちろん、いいわよ』
『うん、ありがとう……ぐすっ……』
そう言うとお母さんはそのアルバムから写真を抜き取って私に手渡してくれた。 私はその写真に触れると、当時の思い出が蘇ってきてまた涙がぽたぽたと溢れていった。
『……ぐすっ……ひっぐ……ね、ねぇ、お母さん……』
『うん、どうしたの? 由美?』
そして私はその写真を手に持ちながらある事を決意した。 その決意というのは……
『……私、ぐすっ……おもちのためにっ――』
――――
「……あれ?」
私はそこで目を覚ました。 何だかとても懐かしい夢を見ていた気がする。 どんな夢を見てたのかはもう覚えてないけど。
「ふぁっ……」
私は欠伸をしながらベッドから起き上がった。 今日から私は高校生となる。 といっても中高一貫の学校だから受験とかも無かったし、中学からの友達もほぼ一緒だから、高校生になったと言っても何も不安な事はない。 不安があるとしたら学力くらいかな。
「……さて、今日も一日頑張りますかね」
私はそう呟きながらパジャマを脱いで学校の制服へと着替え始めていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます