第199話 イサイサの帰還
「S郡1313番、イサイサ。ただいま帰投いたしました」
大穴ダンジョンへと無事に到着したクロたちは、イサイサの案内でハラドバスチャンへと訪れていた。
ハラドバスチャンの入り口を守るようにして佇んでいたダークコボルドたちが、イサイサの名乗りに興奮した様子で騒ぎ出す。
「偉大なるお方より名を賜りし我らが妹が戻ってきたぞ!」「すぐに中に知らせろ!」「イサイサ、おかえり。いぶさまの所へ案内します」
すぐさま動き出すダークコボルドたち。そのうちの一人がイサイサの所へ進み出てくる。
「開門!」「開門!」
衛兵を勤めるダークコボルドたちの声に、ハラドバスチャンの入り口が開いていく。
イサイサの帰還はあっという間にハラドバスチャン中に広まったのだろう。
任務についていないダークコボルドたちがその姿を一目見ようとハラドバスチャン中から集まってくる。
「さあ、こちらへ」
集まってきたダークコボルドたちが道の両脇を埋めていく。その中央を、先導のダークコボルドたちに続いてイサイサが歩き出す。その後ろに続くのはシロたち。クロと加藤は二人して最後尾につく。
図らずも凱旋行進のようになるイサイサたち。
それを見守る群衆の中には当然、イサイサが出立したあとに生まれた、弟と妹たちもいた。
「あれが、イサイサお姉ちゃん?」「そうよ。偉大なるお方より名と使命を賜りしもの」「ねえねえ、支配と生命の七武器ってどれなの」「ほら、ちゃんと嗅ぎ分けて。耳についているイヤリングから香るでしょ」「イサイサ~」「イサイサ~」
子犬サイズのダークコボルドたちが世話をするダークコボルド達から説明を受けている。
そのコロコロと可愛らしい姿に、シロたちが一緒に遊びたそうだ。
しかしクロの無言の笑顔を見て、我慢するシロたち。
「ねえ、あの白い子達」「ああ。人間だがイサイサの香りがする」「特別な子達だ」「ああ。イサイサの使命の子達に違いない」「てことは俺たちの家族なのか」「だな」
イサイサのあとに続くシロたち。その匂いで、ダークコボルド達からは一瞬で家族認定されてしまう。
「おい、その後ろの……」「まさか、黒き黒の影?」「間違いない」「ああ、間違いないぞ……」
そこまで騒いでいたダークコボルドたちが、シロたちのあとから現れたクロの姿をみるとピタリと口を閉じる。
クロの臭いが届いた端から静かになっていくと、仰向けになりお腹をさらすように地面に寝転んでいくダークコボルドたち。
イサイサたちの両脇に、お腹をさらして寝転ぶダークコボルド達が並んでいく。
腹見せ黒柴を大量に生み出しながら、道を進んでいくイサイサたち一行。
そうしてついに、祭壇の間へとたどり着く。
「おかえり。イサイサ」
いぶが、祭壇の間の入り口で待っていた。そしてイサイサへ歩み寄ると、まるで対等な相手にするかのように、いぶはイサイサへ手を伸ばす。
イサイサの帰還を喜び、労うように伸ばされたいぶの手。イサイサは握手を返すのだった。
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