第25話 私は気にしないから大丈夫

「……じゃあ次は俺の番か」


 いよいよ俺の順番が回ってきたため、マイクを持ってゆっくりとシートから立ち上がる。


「どんな感じに涼也君が歌うか楽しみ」


「涼也、ファイト」


 玲緒奈と里緒奈に見守られてやや緊張する俺だったが、後はなるようにしかならないだろう。それから俺は曲を歌い始めるわけだが、歌っているうちに緊張はどこかへと吹き飛んだ。


「へー、涼也君結構上手いじゃん」


「うん、良かった」


 歌い終わった俺がテーブルにマイクを置くと2人はそう声をかけてきた。とりあえず2人が知ってそうな無難な曲を歌ったわけだが、どうやら結構好評だったらしい。

 それから俺達はどんどん曲を歌い始める。途中玲緒奈や里緒奈と一緒に歌ったたりしながら盛り上がっているうちに1時間が経過していた。


「……そう言えばまだお昼食べてなかったし、何か注文しない?」


「そうだな、そこのタブレットから注文できるみたいだしそうしよう」


「確かにお腹空いた」


 玲緒奈からの提案に俺と里緒奈は賛成したため、一旦歌うのを中断してフードメニューを選び始める。

 そしてそれぞれ食べたいものを注文して、歌いながら部屋に運ばれてくるのを待つ俺達だったが、ここでハプニングが起こってしまう。


「あれ? 箸が1人分しかないんだけど……」


「本当だ。私はピザだから問題ないけど、涼也君と里緒奈は箸を使うもんね」


 多分店員がミスをしてしまったのだろう。フロントに電話してもう1本箸を持ってきて貰おうと考え始めていると里緒奈が話しかけてくる。


「なら一緒に箸を使えばいい」


「……えっ?」


 俺は里緒奈が何を言っているのかよく分からなかった。ひょっとしてまさか2人で使い回そうとしているのだろうか。


「だから私と涼也で同じ箸を使う」


「いやいや、流石にそれは駄目だろ!?」


 そのまさかだったため俺は思わず声をあげてしまった。真面目そうな里緒奈がさらっととんでもない提案をしてきたため驚きを隠せそうにない。


「何が駄目なの?」


「だ、だって間接キスになるし……」


 いつものテンションの里緒奈に対して、俺は少し恥ずかしさを感じながらそう答えた。


「私は気にしないから大丈夫」


 里緒奈からそう言われてしまったためそれ以上何も言えなくなってしまう。俺は最後の頼み綱として玲緒奈の方を見る。

 きっと玲緒奈なら姉として妹の里緒奈にビシッと注意してくれるはずだ。だがそんな期待は裏切られてしまう。


「何回も店員が来たら気が散るしさ、里緒奈も大丈夫って言ってるんだから一緒に使っちゃいなよ」


 なんと俺の予想に反して玲緒奈は里緒奈の味方についてしまったのだ。結局2対1には勝てず、押し切られてしまった。

 ちなみに里緒奈との間接キスが恥ずかし過ぎて食事の味が全く分からなかった事は言うまでもないだろう。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「カラオケ楽しかったね」


「確かに歌うとめちゃくちゃストレス発散になるし、たまにはいいよな」


「涼也結構ノリノリで歌ってた」


 カラオケルームから出て精算を終えた俺達は外の休憩スペースに座って休んでいる。この2時間は本当にあっという間だった。多分それだけ楽しかったという事なのだろう。まあ、ハプニングもあったが。


「あっ、そうだ。涼也君ちょっとスマホ貸してくれない?」


「……どうして?」


「ちょっとやりたい事があってさ」


 玲緒奈からスマホを貸して欲しいと言われた俺だったが貸す事には抵抗があった。

 なぜなら昨晩美人双子姉妹から逆レイプされるシチュエーションのエロアニメで抜いていて、インターネットブラウザの履歴にガッツリ残っているからだ。

 万が一2人に知られてしまえばほぼ確実に軽蔑されるに違いない。そんな事を考えながら黙り込んでいると里緒奈が話しかけてくる。


「中を見る気はないからスマホは画面をロックしたままで大丈夫……それに涼也が何を見てるかは私もお姉ちゃんも全部知ってる」


 後半は声が小さすぎて何を言っていたか全く聞こえなかったが、スリープしたままでいいならバレる心配がないので大丈夫だろう。

 俺は玲緒奈にスマホを手渡した。すると玲緒奈は俺がスマホに付けていた透明のケースを外し始める。


「ケースを外して何をするつもりなんだ?」


「すぐに分かるよ」


 玲緒奈はそう言い終わった後、カバンの中から何かを取り出す。よくよく見るとそれはカラオケ前にゲームセンターで撮ったプリクラだった。プリクラを見た瞬間、玲緒奈が何をしようとしているのか気付いてしまう。


「ま、まさか!?」


「多分涼也の想像通り」


 俺は慌てて玲緒奈制止しようとするが間に合わず、スマホの背面にプリクラを貼り付けられてしまったのだ。


「おいおいマジかよ……」


「これでいつでも今日の事を思い出せるようになったね。それと分かってるとは思うけど剥がしちゃ駄目だから」


 玲緒奈はにこやかな表情でそう話した。すぐに剥がすつもりだったが、それは許してくれないらしい。

 なら透明ではないスマホケースをつけて見えなくしよう。そんな事を考えていると里緒奈が口を開く。


「勿論見えなくするのも駄目、定期的にチェックするから」


 どうやら俺の考えは全部お見通しだったようだ。この恥ずかしいプリクラを2人が満足するまで貼り付けたままにしておかなければならないため、ちょっと憂鬱な気分にさせられた。

———————————————————

無事に★1000を超えました、ありがとうございます‼︎


その記念に明日からリクエストで募集したエピソードを本編と交互に投稿します〜

明日は@shu28様リクエストの玲緒奈と里緒奈に監禁される涼也君のエピソードを投稿する予定です!


@morinomint様から文字付きレビューを頂きました、本当にありがとうございます♪

文字付きレビューは作者にとって一番嬉しいものなので、今後も頂けるように頑張りますー

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