拝啓、ゲーム大会に参加することになりました

前略、先輩からの頼み事をされました

「ご飯が美味しいですね」


[配信ネタ思いつかないからって飯食いながら雑談配信かよ]

[何食べてんの]

[ちゃんと配信のシフト守ってて偉い]


「本日の晩ご飯は鮎の塩焼きとご飯と味噌汁ですね」


[和食だな]

[味噌何使ってる?]

[あかりんにご飯作ってもらいたい]


「味噌は合わせ味噌使ってますね。麦と米の。甘口好きなんですよ」


[マネージャーのお味噌汁飲みたーい 火宮夢]

[私も飲みたいです 水宮希]

[おいたわしやあかりん…]

[ガソリン投下!]

[あかりんの味噌汁を飲むのは私だ 遠山コダマ]

[ガソリン一斗缶追加入りまーす]


「コメ欄にタレントが出てきただけで俺の炎上が確定するみたいに言うのやめてね?燃えたくないから作りません」


[しっかりヘイト管理できてて偉い]

[おいなんでのぞむーに味噌汁を作らない?]

[ふざけてるのか、作れ、俺の推しのために]

[メッセージが削除されました]

[メッセージが削除されました]

[メッセージが削除されました]

[炎上回避した先に炎上が待ってるの草]


「俺にどう立ち回れと?」


[冬場は常に燃えてるから便利そうだなwww]

[いいか?ユニコーンの逆鱗に触れず、カプ厨を満足させるんだ]

[とりあえずいろんな味噌で味噌汁作って飲み比べてくれ]

[公式企画であかりんがいろんな味噌で味噌汁を作ってタレントがどの味噌が使われてる味噌汁か当てる企画やればいいのでは?]


「おい天才いたぞ。確かに公式企画にすれば盛り上がるし俺の炎上も小火程度に抑えられそうだ」



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「配信終わったー…」


ご飯を食べながらの配信は初めてだったので咀嚼音とか入っていないか心配だったが、エクシズではそういったこともなく好評だった。


とくに配信中にコメントから出た「利き味噌汁」の企画について一部界隈が盛り上がっており、既にイラストレーターさんが「味噌汁の味見をする小波灯(そばに水宮さんと火宮さんが味見待ち)」だったり、なぜか「競馬場の食堂で俺が味噌汁を作っていて、活動開始時にフィスコで挨拶をした程度の間柄である2期生の赤兎馬せきとば緋色ひいろさんがそれを受け取って戦場レースに赴く」ファンアートだったりと、近い内に企画書を運営に出してもいいかもしれないほど人気だった。


「片付けないとな」


食べ終えた食器を片付けに台所に向かい、洗剤を取り出す。


「任せたぞ、ヨクオチールΩ3R…」


最近新しく購入した巷で人気の洗剤だが、果たして一人暮らしの社会人を支えられるほどの洗浄力を持っているかな…?


結果として満足の行く洗浄力を見させてもらった後は、明日の仕事の確認と寝るのみ。


とはいえ担当の二人の仕事も差し迫ってはない。というか彼女たちは学生なので時期的にそろそろ中間テストがある頃合いだろうということで仕事は入れないようにしている。


彼女たちも彼女たちなりに配信内容を考えているようで、週末には自習配信というものを行っている。


一人では勉強に集中できないという人たちのために一緒に勉強をする配信らしい。さしずめVTuber界の河◯玄斗と言ったところか。


そうして寝るためにパソコンを閉じようとした時に、ちょうど火ノ川先輩から連絡が来た。


光璃『すみません灯織さん。今お時間よろしいですか?』


灯『はい、なにかご用ですか?』


光璃『実はお願いしたいことがあるんです。通話チャンネルの方に来てくれますか?』


灯『はーい』


先輩に指定された通話チャンネルに入る。


俺以外に、もう一人通話に参加している人がいた。


ユーザー名は『織部若葉』。2期生の一人だ。


「えーっと、こんばんは」


『ァ……』


「火ノ川先輩に言われて来たんですけど、なにかご用ですか?」


『エ、エット、ソノ……』


ポロン♬(通話から退出する音)


「え?」


織部さんが突然通話を抜けてしまった。


急なことで俺は固まってしまう。


間違えて入る通話の部屋を間違えたか? ひとまず先輩に聞いてみよう。


灯『あの、先輩、なんか入る部屋間違えちゃったみたいなんですけど』


光璃『え?そうなんですか?』


灯『間違えて織部さんのいるボイスチャットの部屋に入っちゃって』


光璃『あー…』


光璃『入る部屋は合ってるんですけど』


光璃『織部さんが逃げちゃいましたね』


灯『織部さんが相談相手なんですか』


光璃『あの人は人見知りなので、私経由で灯織さんに話がしたいと伝えてきまして』


灯『なるほどです。メッセージで話してくれないか聞いてみます』


光璃『ありがとうございます』


先輩に事情を説明し、俺は織部さんの個人チャットの方で改めて話を聞くことにした。



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