◇閑話◇ 安定性

 以前、「◇閑話◇ モース硬度」のところで、宝石の耐久性を三つご紹介しました。その三つとは、「硬度」「靭性」「安定性」。

 今回はそのうちの、「安定性」にまつわるお話をしようと思います。


〇宝石の「安定性」とは?〇

 安定性とは、「劣化」や「変化」などに関するもののことです。

 コーラル(珊瑚)のところで「汗などに触れると光沢を失うことがある」ということを書きましたが、あれも安定性に関わります。(これはパールも同じですね)


 安定性を知る利点は、宝石の寿命を延ばすことができるということ。

 例えばコーラル(珊瑚)やパール(真珠)を汗が付いた状態で放置していたら、艶が消えたり、最悪浸食したりすることがあります。


 また、宝石のなかには紫外線に弱いものもあります。その一つが、アメシストです。これも知らぬまま放置していたら退色してしまう可能性があります。

 しかし、宝石の弱い部分を知っていたら、持ち主は扱い方を変えることでしょう。それが宝石の美しさを長く保つことになるのです。


 一方で、持ち主が努力をしてもその美しさが保てない宝石もあります。つまり「安定性」がなかったために、装飾品としての宝石になれなかった石があるのです。


 その石の名は「マシーシェ・ベリル」。

 1917年にブラジル、ミナス・ジェライス州にあるマシーシェ鉱山から産出したため、この名前が付きました。


 当作品をここまでお読みくださっている方は、「ベリル」という言葉を見てエメラルドやアクアマリンのことを思いついたことでしょう。ご想像の通りで、マシーシェ・ベリルも「ベリル」の仲間です。


 マシーシェ・ベリルは透明で、そのなかに湛えられた青がとても美しく、人気が出ることを期待されていました。しかし、この石は紫外線にとても弱かったのです。


「どれくらいの時間太陽に当てると、どの程度退色してしまうのか」については分からなかったのですが、書籍には「著しく退色する」と書いてあったので、少し太陽に当てていただけでも影響があるということだと思います。


 どんなに美しい青色を放つ石も、色がせてしまっては宝石としては不向きということ。

 そのため宝石の安定性というのは、宝石を長持ちさせるために知っておくと良い知識であり、宝石そのものも、人が大切にすることで長く保てるレベルを備えているものでなければならない、ということなのだろうと思います。

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