絵本「ラクダのネクタイ」

島本 葉

1.指輪を貴女に

「だめだ、緊張してきた」

 待ち合わせの時間までもう少し。わかっているのに、もう一度スマホを確認する。やはりメッセージはまだ入っていない。今こっちに向かってるはずだ。

 もうじき彼女がやってくる。

 僕は駅前のショーウィンドウに映る自分の姿をもう一度確認する。

 カジュアルな服装だけど、いつもよりは少しだけ特別にジャケットとネクタイも。髪も乱れていないし、おかしなところは無いはず。

 そうしていると、スマホがぶるっと震えて「もうすぐ着くよ」と可愛いスタンプとメッセージが入った。

 爽やかなブルーのネクタイをに手を添える。

 確か何かの絵本で青いネクタイの話があったっけ。青いネクタイをしたのを真似て、いろんな色のネクタイが流行るような話。ヒツジ? いやラクダだっけ?

 みんなが真似たってことは、成功者だよね。

 うろ覚えの絵本にでも、勇気を分けて欲しい。そんな心境だった。

 ポケットの中に手を入れて、小さな箱の感触を確かめる。今日はこの指輪を彼女に渡すのだ。

 喜んでくれるだろうか。

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