花火大会の夜


 花火大会の夜。姉から「とっておきの場所」だと聞いた河川敷からは、ほとんど花火が見えなかった。生い茂る木々に隠れ、見えるのは半分くらい。


 勇気をふりしぼって彼を誘い、ここまで連れてきた。私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 だけど、やっぱり姉には礼を言っておこうと思った。


「もう少し向こうなら見えるかも」

 彼がそう言って、私の手をとって歩き出したから。

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