第2話 伝説の中学生配信者の成れの果て!

001 名無しのダンジョン


なんであの中学生ダンチュバー消えちゃったんだろうな。



002 名無しのダンジョン


それはやっぱあれだけ実力も実積も人気者あるのに、U19ってだけで大人ダンジョンでバリバリ稼げないのが嫌だったんじゃね?



003 名無しのダンジョン


でも、確か、売ればウン十億になるレアドロップアイテム寄付したんだよ、あの子! お金にはこだわってないんじゃない?



004 名無しのダンジョン


じゃあ、それでたくさんの人の命を救って、めっちゃ感謝されて、燃え尽きちゃったんじゃ?



005 名無しのダンジョン


まあ、仕方ないよな。中学生で世界レベルの人助けしちゃったんだ! そりゃ燃え尽きもするって!



006 名無しのダンジョン


天才には天才の苦悩があるんだな!



007 名無しのダンジョン


ほんとあの子の配信おもしろかったもんな!



008 名無しのダンジョン


今あの子何歳?



009 名無しのダンジョン


あれが中三だったとしたら、ちょうど18、9くらいか!



0010 名無しのダンジョン


だったらそろそろ復活あんじゃね?



0011 名無しのダンジョン


まじまじ?



0012 名無しのダンジョン


だって19だったらダンジョン入れんじゃん!



0013 名無しのダンジョン


見たい! 見たい!


ダンジョンで無双するあの子!



0014 名無しのダンジョン


でももしかしたら大学落ちて寂しい浪人生活送ってるかもよwww





         ⚫




 S川大学 ダンジョン配信部。

 

 俺、成果なるはて 鷹也たかやが入るはずだった国内の若手ダンジョン配信者のトップランカーたちが集まるエリート集団である。



「成果君、落ちちゃったの? ・・・・・・ダッサ。運動神経は良くても、頭の方はそうでもなかったんだ。・・・・・・じゃあ、もう会うこともないだろうね! バイバイ!」



 高一からずっと親友だと思っていた羽月はづき あきらにそう言われた時、俺の人生は一度終わったんだと思う。



 あんなに必死に勉強したのに、なんでこうなっちまったんだろうか?


 

 F山大学のキャンパスを歩きながら俺は自問自答していた。



 もう死んじゃいたいよ。


 受かる気満々だったからな。


 なんせA判定だもの。


 それなのに・・・・・・。


 ダッサ。


 ああ、マジで死んじゃいたい。


 こんな思いするくらいなら・・・・・・もう友達なんて一生作らないぞ!


 大学生活はずっとぼっちで過ごしてやる!



 そんな後ろ向きなことばかりを思いながら、ずっと下を向いて歩いていたからだろう。



 ドンッ!



 と、思いっきり人とぶつかってしまったのだった。



 やわらかっ!



 それが俺の頭の中に浮かんだ最初の感想だった。


 それからやっと顔を上げて確認すると、ぶつかった相手はド派手なハイトーンのメッシュボブヘアが似合いまくりのゴリゴリのギャルだった。


「すいませんっ! ちゃんと前を向いてなくて! 怪我はなかったですか?」


 そう言ったのは俺ではなくそのギャルの方である。


「・・・・・・ああ、大丈夫」


 俺が素っ気なくそう答えると、そのギャルはいきなりこう叫んだのだ。


「ええっ! もしかして、とり満腹まんぷくさんですか?」


 鳥満腹とは何を隠そう中学時代の俺のダンジョン配信者ネームなのであった。


「・・・・・・そうだけど」


「えーっ! マジですか? 鳥満腹さんがなんてF山大にいるんですか? 生配信でS川大に行くって言ってませんでしたっけ? あたし、鳥満腹さんのチャンネルのガチファンなんです! 自慢じゃないですけど同接皆勤なんですよー!」


「あ、ありがとう・・・・・・」


 ああ、死にたい。


 そういや俺、自分のチャンネルのファンと交流する自室からの生配信で大学はS川大受けますって宣言してたっけ?


 カッコわりーな。


 この子もガチファンとか言ってるけど、内心カッコわりーって思ってんだろうな。

  

 ってか、この子、めちゃくちゃかわいくないか?


 ギャルメイクで一瞬わかんなかったけど、下手なアイドルより全然かわいい!


 それに胸めちゃくちゃ大きくて、水色のノースリーブドレス(ギャルなのにRPGのヒロインかダンジョン探索者みたいなバトルドレスだな)からはち切れそうだ!


 推定、Hカップ!?


 さっきのやわらかかったのってもしかしてか?





 ダンジョンが世界ではじめて発見されたのがほんの8年前。


 その数ヵ月後にはダンジョン探索の一部始終を動画配信するダンジョン配信者なるものが現れ、若者たちのヒーローとなった。


 そして、そのさらに一年後には俺は鳥満腹と名乗り中学生ダンジョン配信者となったのだった。


 ダンジョン探索の魅力はなんと言ってもそこに出現する数多あまたの魔物と、その魔物が落とすドロップアイテム、そして隠れ扉の中や落とし穴の底なんかにある宝箱の中の金銀財宝である。


 有名ダンジョン配信者は動画配信の広告収入で稼ぎ、さらにドロップアイテムや宝箱の中の財宝を金にかえて巨万の富を得ている。


 特にドロップアイテムと宝箱関連の収入がすごくて、有名ダンジョン配信者の年収は軽く億を超えている。


 しかし、それも満19歳になってからの話だ。


 それまでは大人たちが狩り尽くした後の比較的安全が保証されているダンジョンと呼ばれるところにしか入ることを許されないのだ。


 もちろんそこでも魔物は出現するし、倒せばちゃんとドロップアイテムに変化してくれるし、宝箱だってちゃんとある。


 でも、通称、ダンジョンと呼ばれる19歳以上の者しか入ることが許されないダンジョンとは、魔物の強さも、落とすドロップアイテムの価値も、宝箱の金銀財宝の質や量も悲しくなってしまうほど違うのだった。


 だから、ダンジョンの配信がやはり人気で、スケール感で完全に劣っているダンジョンの配信は本来あまり人気がないのである。


 しかし、俺は自分で言うのもなんだが、その中で結構頑張ったのだ。


 

 チャンネル登録者数 12万8千人 

 平均同時接続者数 約1500人

 活動期間 約2年4カ月



 19歳以下のダンジョン配信者の中では人気、実力ともに最上位クラスだったが、まあ、それでも得られる収入は大人のトップランカーたちに比べれば屁みたいなものだった。


 結局19歳以下のダンジョン配信者が得られるのは微々たる富と名声と、後は戦闘経験のみ!


 たった一度だけ巨万の富を生むレアドロップアイテムを入手できたのは(結局色々考えて寄付しちまったけど)、俺の短いダンジョン配信者人生の中での唯一の自慢だ。





「確か鳥満腹さんって誕生日公表されてませんよね?」


 いつの間にか俺が思い出に浸ってしまっていると、目の前のハイトーンのメッシュボブヘアの激カワ爆乳ギャルが俺にそう訊いてきた。


「ああ、そうだけど」


 俺はなぜかイケメンみたいに素っ気なく答えてしまう。


 内心ドキドキしているくせに、女子が相手だとついカッコつけたり、スカしたり、厳しめのツッコミを入れたりと言動がバグってしまうのが俺の悪い癖なのだ。


「誕生日いつなんですか? あたしはちなみに今日、4月12日です!」


「えっ? 今日って4月12日だっけ?」


「そうですよ!」


「・・・・・・実は、俺も4月12日が誕生日なんだよ!」


「えーっ! そうなんですかー! じゃあ、あたしたち同じ年の同じ日に生まれたんですね!」


「・・・・・・みたいだな」


 ああ、なんで、みたいだねって言えばいいのにカッコつけちまうんだろうな、俺は。


 自分で言ってて寒気がする!


 俺がそんなことを思っていると、相手はこんな驚くべきことを言ってきたのだ。


「じゃあ、あたしたち二人とも今日からダンション探索できるじゃないですかー! 鳥満腹さん! あたしとダンジョン探索デートしましょうよ! 先日パパの部下が見つけたまだ誰も入ってないがあるんですよー! もしよければ、そのまっさらなダンジョンであたしの初めてもらってください! 鳥満腹さん!」



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第2話を最後まで読んでいただきありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、作品フォローして続けて読んでいただけるとめちゃくちゃうれしいです!


☆☆☆評価も作者の励みになりますので是非応援よろしくお願いします!


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