かつて伝説の中学生ダンジョン配信者だった俺は日本初のダンジョン学部がある大学に入ったのだが、かつての参謀と命を救った女の子が美少女(巨乳)になってたので配信ユニットを組んだらバズった(覆面だけど!)。

新田竜

プロローグ 伝説の一戦!

 これは俺とのベストアクトだ。


 ダンジョン界隈かいわいの人たちには未だに“伝説の一戦”なんて呼ばれたりしているらしい。




「・・・・・・じゃあ、ダンジョンの最深部を探索していきます!」

 

 コメント欄を見るとすでに同接は1520人!




 ノボルさん “いきなり最深部から配信スタートとは相変わらずストイック!”


 湯冷め “トリちゃんがんば”


 ニッキー “トリさんお気をつけて”


 みんとっち “・・・・・・”


 たーやん “今日こそレアドロップゲット!”


 ふふふのふ “金の宝箱が見たいっす”





 目の前を高速で流れていくコメントの中にある、特に熱心にいつも応援してくれる常連さんたちのコメントばかりを俺はまた無意識に読んでしまっていた。


「レアドロップ、金の宝箱・・・・・・両方とも難しい注文ですね! でも精一杯がんばりますよ!」





 ノボルさん “無理すんなよ! 中学生!”


 湯冷め “トリちゃんがんばっ!”


 ニッキー “トリさんほんとにお気をつけて!”


 みんとっち “・・・・・・”


 たーやん “コメント読まれた?”


 ふふふのふ “コメント読まれた??”





 また気のいい常連さんたちのコメントを目で追っていると、ダンジョンの奥の方から、


『シュー! シュー!』


 という謎の音が聞こえてきた。



「魔物でしょうか? ちょっと音のする方へ行ってみますね!」





 ノボルさん “相変わらずアグレッシブヒューマンボーイだな!”


 湯冷め “トリちゃんがんばっ!!”


 ニッキー “トリさんほんとにほんとにお気をつけて!!”


 みんとっち “・・・・・・”


 たーやん “なんの音?”


 ふふふのふ “魔物のため息w”





 その謎の音の方へ近づいてみると、そこには見たことのない魔物がいた。


 俺はその魔物をカメラで映しながら、こう実況した。


「見てください! こんな魔物見たことありますか? ガイコツ魔神に似ていますが、体長が二倍近くありますし、全身銀色で、肩からシュー、シュー蒸気のようなものを出しています!」





 ノボルさん “確かにD級の魔物のガイコツ魔神に似てるな!”


 湯冷め “トリちゃんがんばっ!!!”


 ニッキー “トリさんほんとにほんとにお気をつけて!!!”


 たーやん “でかい!”


 ふふふのふ “でかすぎやしないか?”



 

 そんなコメントが流れる中、こんな情報が目に入ってきた。



 みんとっち “それは・・・・・・隠れレアの魔物のキングスチームガイコツ魔神です! クラスはA級!”



 俺はとても信じられなかった。


 だってダンジョンでは最高でもD級の魔物までしか出現しないはずなのだ。


 それがA級なんて!




 ノボルさん “みんとっちA級ってほんとかよ?”


 湯冷め “A級はヤバいよ! トリちゃん逃げて!!!”


 ニッキー “トリさんほんとに逃げてください!!!”


 たーやん “逃げろー!!”


 ふふふふのふ “逃げろー!!! トリちゃん!!!”



 

 というような逃げろコメントが流れる中にこんな長文のコメントが交じっていた。



 みんとっち “キングスチームガイコツ魔神は確かに隠れレアですが、A級で唯一弱点がはっきりしている魔物なんです! その弱点はずばり足首です! その魔物の必殺技であるスチームスクリューパンチをギリギリまで引き付けてからけて、少しバランスを崩した相手の足首に一撃を食らわせることができれば倒せますよ! こんなに倒しやすい隠れレアの、それもA級の魔物に出会える確率なんて生きてて何回もないんですからチャレンジしないと後悔するかもしれませんよ!”




 ノボルさん “みんとっち! トリちゃんのこと殺す気かよ?”


 湯冷め “足首が弱点ってF級のアンクルデビルじゃないんだから!”


 ニッキー “みんとっちさん! いつも的確で知識もすごいですけど、それってほんとに確かな情報ですか?”


 たーやん “逃げろー!!”


 ふふふふのふ “逃げろー!!! トリちゃん!!!”



 

 というような否定派や逃げろ系のコメントが他にも大量に流れる中、俺はなぜかみんとっちのコメントを信じてそのキングスチームガイコツ魔神と戦うことを選んだのだった。



 キングスチームガイコツ魔神は両拳に肩から出ているスチームと自分の体の金属らしきものを混ぜたものをまとわせ、さらにそれを回転させ、その先をスクリューのように尖らせて、その恐ろしく殺傷能力の高そうな拳で俺のことを思いっきり殴ってこようとしてくる。


 これが、みんとっちが言っていたこいつの必殺技、スチームスクリューパンチ(なんでもいいけど絶妙にダサイ!)なのだろう。


 俺はそのパンチをギリギリまで引き付けてから最低限体をりるがえして避けた。





 ノボルさん “トリちゃん! ナイス!”


 湯冷め “トリちゃんマジすげー!”


 ニッキー “トリさんほんと無理しないでください!!!”


 たーやん “トリちゃんかっけー!!”


 ふふふふのふ “トリちゃん! ファイト!!”




 みんとっち “今です! キングスチームガイコツ魔神の足首に一発食らわせてやってください!”




 俺はみんとっちの指示通り、ちょっとヨタヨタとバランスを崩しているキングスチームガイコツ魔神の片方の足首に剣をぶち当てた!




 すると、


『グワァァァァァーッ!』


 と叫んで、キングスチームガイコツ魔神の巨体はドンガラガッシャンともろくも崩れ去ったのだった。



 そして、その体の残骸が紫の光に包まれ、さらに粉々になり、その眩しさに一瞬目を細めると、その次の瞬間にはそれはドロップアイテムへと変化していた。




 ノボルさん “なんだ、これ? 紫の岩石? ハズレか?”


 湯冷め “宝石だ!”


 ニッキー “トリさんほんと無事でよかったです!”


 たーやん “トリちゃんかっけー! レアドロップ、マジでゲットしちゃった!”


 ふふふふのふ “トリちゃん! ナイスファイト! 今度は金の宝箱お願いっす!”

 



みんとっち “これは・・・・・・いくつもの新薬の原料になると言われている医療岩石です! たくさんの人の命を救う素晴らしい発見ですよ!”

  



 俺はその医療岩石を国際医療団体に寄付し、それからすぐにダンジョン配信者を卒業してしまった。


 きっとあれ以上の経験はできないと悟ってしまったからだろう。



 だが、大学生となった今でもたまに俺はあの日のバトルの夢を見ることがある。



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