第4話:勝手にしやがれ (À bout de souffle)・マガイモノ04

「はっは。さてな……まぁ、サル顔の嫌な奴は雑魚いじめて憂さ晴らしに来ただけかもな?」

「……ありがとう……馬鹿ムイ」

「――!?!?」


 と、その瞬間、俺のワイシャツごとジャケットがまるまる散るように存在を薄めては、目の前からヤチコちゃんが消えた。こういうのは日常茶飯事だから動じない。ヤチコちゃんなりに緊急事態と判断して、俺の服を犠牲にアルキュビエレ・ドライブを発動したんだろう。お陰で俺は上着脱衣の状態になり、まるで俺たちがドレッドノートに来る前に居た『皇龍国』の【危機一髪・リーさん】みたいになってる。俺もリーさんみたいなパーフェクトな腹筋ボディだったら申し分なかったろうけど、こりゃだいぶビジュアル負けしてるな……ああ、急に土砂降りも始まって俺のビジュアル負け腹筋が余計目立つじゃないか……


「カムイさん!!ぼーっとしてないで、ホルスターを見てください!」

「ああ。知ってるよ」


 探偵レーヴ君、さすがの観察眼だ。俺のリボルバー2丁が一瞬にして消えたことに気づくとはな。まぁ、あの秘書さんのマガイモノの仕業だろう。ヤチコちゃんはいくら切羽詰まった場面に追い込まれても俺のリボルバーに手を出したりしないからよ。だとすれば……


「窮鼠猫を噛む……てめえの言い方なら、あの雑魚様の奇襲さ!!」


 有利な立場になってやっと姿を現しやがったか。雑魚さ加減もここまで来たら芸術の域に達していると言えるだろう。こいつは最低の芸術家だ。


「オレ様の手に触れられた貴様のリボルバーは削除された……勝負ありだな?カムイさんよ」

「秘書のマガイモノ……お前とんでもなくダルいヤツだな。何分待たせてんだ。しかも、お前のせいでヤチコちゃんがまた俺の服を犠牲にどっか行っちゃったよ」

「そりゃ好都合だな、カムイ。武器も無ければ、パートナーも居ない雑魚をいじめるのはオレ様のいい憂さ晴らしになるからな!!!」


 雑魚の定番、雄叫びからの突進攻撃が来たぜ。軽く避けながら、俺は大きくため息をついた。何たるムードの無いヤツだ。こんな雷鳴が鳴り響く土砂降りの下で、意味深で謎めいた問答をするのも粋ってもんだろうに。いやはや、いちいち雑魚すぎるヤツだ。自分の名前すら明かさないで無駄にテンションばかり高い雑魚め。


 だとしても、欲しい情報を得るためにはこんなヤツのノリに合わせてやらないとな……怪盗にして強すぎるのも考えものだな……




――つづく――



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