第4話:勝手にしやがれ (À bout de souffle)・マガイモノ01
僕は秘書のイリナさんがいつああなってしまったのか、見当もつかない。正直に言うと、僕はここ最近ナル
しかし、なぜ僕が狙われたのだろう?しがない探偵でしかない僕が狙われるような理由などあるわけがない。そりゃ、探偵でも場合によっては恨みを持たれて何らかの形で狙われたりすることも珍しい話ではないのだが、それはあくまでも、有名所の探偵さんに限ったことなのだ。
「ガキ、なに悩んでんだ?そろそろ秘書さんに再会するぞ。今更ビビったのか?」
どうやら、僕はよっぽど難しい顔をしてたんだろう。カムイさんが柄にもなく心配の言葉をかけてきた。でも、いまはその不器用な心配がありがたい。ちょうど考えを整理したかったからな。
「ビビったりしませんよ。こちらにはカムイさんとヤチコさん、そしてラニアケアさんまでいるじゃないですか。誰が相手だろうと遅れを取るとは思えない。ただ……」
「ほう、俺たちの強さを信じてくれるのか?出会ってからさほど時間も経ってないのによ」
「そりゃ、一度逃げ切ったのに、わざわざ敵のところへ戻ろうとする人たちですからね」
ヤチコさんの『アルキュビエレ・ドライブ』のテレポートは奇襲戦法にも長けているが、その逆の逃げこそが彼女の独壇場なのだ。全身全霊で逃げ始めたら、誰も彼女を捕まえられないだろう。そのとんでもない能力でせっかく死線から離れたというのに、再び戻るバカはそうはいない。このカムイさんたちを除けばね。
「カムイさん、あの、僕はラニアケアさんとは度々仕事をしてきたので、カムイさんほどじゃないにしても少しは彼女のことをわかっているつもりですが……イリナさんのマガイモノを見かけたときからのラニアケアさんは静かすぎる気がします。何かあったのでしょうか?」
「……十数年前、ある会議があったんだ。その会議は決戦教団の最重要案件を取り扱うときのみ開かれる。その会議でマガイモノが初めて報告されたのさ。『本来のその人間を削除して、なりすましがその役を乗っ取る』ってな。ひと通りの説明を聞いたお偉方は『これからどう対策していけばいいのかね?』と尋ねたが、誰一人として返事できなかったらしい。ラニアケアちゃんも含めてな」
なるほど。『人間を削除』というのはいまいちピンと来なくてちょっとわからないが、マガイモノはラニアケアさんにとっては心残りみたいなものなのか……十数年越しに行動を起こしたマガイモノに対して慎重になっているのかもな。
「ラニアケアさん、これ……」
「あら、レーヴ君。プロポーズのつもりかしら?」
「い、いえ……」
僕はそんなラニアケアさんに無言で御守りを渡してやることしかできなかった。無難に『迷えるわんこちゃん』御守りにしたのが功を奏したのか、しっかり受け取ってくれた。
――つづく――
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