7/13 日本の夏、地獄の夏



 夏休みが来ます。


 塾・予備校業界にとって、夏休みは繁忙期。年間通して最大の書き入れ時なわけですが、単に特別講習があるというだけでなく、それに付随する業務もいろいろ増えてきます。


 生徒さんには部活動や学校の補習、家族でお出かけなんて用事もありますので、その日程調整はいつも悩みのタネ。風邪や熱中症による不意の欠席・振替も後を絶たず。台風なんかが来ようものなら全授業を後日振替。スケジュール管理が……あー!! めんどくせー!!


 子供の頃は「こっち来い! 学校休める〜!」と楽しみにしていた台風も、この業界で働き始めてからは「勘弁しろ!! 来るな!! 頼むから!! 何もしないで太平洋に抜けてくれ!!」としか思わなくなりました。

 ホント、災害を無邪気に楽しめたのは、僕が無責任な子供だったからなんだなって、この年になると痛感します。




 しかし、僕以上に「夏休み」に戦々恐々としているのは、世の親御さんがたでしょう。


 以前、夏期講習で「低学年向けの講座を立てよう」という話が持ち上がりまして。

 僕はその時、「あんまり低学年を塾に集めようとしても、教科書が簡単すぎて教えることがないですよ? 何で訴求するんですか?」と、やや反対気味の意見を述べました。


 すると、会議にいた女性スタッフが苦笑。

「ダクさん、分かってないなあ!

 授業内容なんてなんでもいいの。2時間授業をしてあげれば、そのあいだお母さんが子供から解放されるじゃない! それだけで十分なのよ」



「あ!?」と思いましたね。


 学校が休みになれば、子供たちが朝から晩までずっと家にいる。元気を持て余した子供たちは、家の中で汚すわわめくわ暴れるわ。いちいち世話をしなきゃいけないし、どこかへ遊びに連れていくとなれば1日仕事になるし、何度言っても全然夏休みの宿題やりゃしないし……


 僕自身は家庭のない孤独の身ですから、そういう家の中での面倒事を想像もできなかった。

 そのとき、単に算数や国語を教えるだけではなくて、塾に生徒を行かせようと考える保護者の気持ちまで想像することを学んだような気がします。



 夏休みが来ます。

 世の親御さんがた、がんばって。

 僕も仕事がんばります。

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