第5話 エルの名前の秘密
数日後、探偵から調査結果が届いた。
探偵は言う。
「私はあなたに好感をもっているから、今回の調査は無料でいいですよ。でも、調査をしてみて、エルの本名を知るのは難しいようだ。」
探偵の調査によって、エルが幼いときにお父さんとお母さんを亡くしていて、施設で育ったことを知った。
私はその後も、エルの名前を知るために右往左往した。しかしわかったこととして、エルは7歳のときに親を失い、施設で生活していた。そのころエルはとてもショックしていて誰とも会話できない状態で、自分の名前を誰にも言わなかった。それで施設の人たちは仮の名前として「大塚翔太」という名前をつけた。それが、学校やその後の公式のときに使われる名前となった。
その施設で美咲はエルに出会った。心を開かないエルだったが美咲にだけは話すことができたという。そしてエルは美咲と会話をして、だんだん他の人にも話すことができるようになっていった。
中学校にあがるまえ、エルは芸能事務所にスカウトされた。エルは東京に行く前に美咲にあった。
「美咲、君も東京に行こうよ」
美咲はわかっていた。自分はエルのように外見がいいわけでも歌う才能があるわけでもない。芸能人になんて自分にはなれない。
「エル、わたし、エルのことずっと応援してる。絶対に東京に行く」
そのとき、エルはぼそっと言った。美咲は「え?」と聞き返す。
「……それ、僕のお母さんが生きてたときに僕につけてくれた名前」
このとき、美咲はエルの本名を聞いた。そしておそらくエルの本名を知っているのは美咲だけである。
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