第52話 ライバルは突然に
それはお昼休憩のこと。
どんどん。
なんや手洗い場叩くなよ、ベコベコしてるから響いてびっくりするだろ。
「でもさー」
突然接続詞、しかも否定形から声をかけられてみてほしい。怖い。
「雪ってB塾行ってんの?」
1年ほど話していない男子から塾のことを聞かれてみてほしい。怖い。
「あー、うん、去年の秋ぐらいからね。なんで会話が接続詞から始まるのか理解できないけど」
「あはは」
そうですか、あはは、ですか。相変わらず変なやつだ。この変人、
「僕もB塾にしたんだよね」
「あー、うん、暁と同じとこでしょ」
前にも一度話したが、暁とは同じ系列、B塾なのだがレベルが少し違う。暁と進は難関私立、公立トップ校用のものだ。模試やテキストは同じものだけど、ちょっと…いや、だいぶ?厳しめらしい。先生が〜というのもそうだけど、やはり生徒の意識が違うのだ、たぶん。
「そう、駅前の、意外とすんなり入れた、から」
「へー、普通の方(暁&進とは違う方)は駅前が定員いっぱいでさ、ちょっと遠いところ行ってるんだ、よね」
なんだこの掴み所がない会話は。話したいことはなんなんだ。はっ!!もしかしてただ私と話したかっただけ!?
「模試何点だった?」
「なんだよ」
思わず声に出しちまったよ。なんだよ。煽りたいだけかよ。そうだよ。お前はずっとそんなやつだよ。幼稚園の鉄棒の練習時は先生の前だけ出来なくなっちゃうのと相談した可哀想な私の目の前で逆上がりを決めてみせ、小学校一年生の時は無駄にペラペラ回った私の口を脅迫によって(その腕雑巾絞りするぞ)塞ぎ、中学校一年生の時はより無駄にペラペラ回るようになった私の口をペラペラ回るようになった口で対抗していた。
「429点だよ」
真実を言おうじゃないか。いくらでもかかって来いやぁ!!見せつけられたら家で泣くし、口ならまだ負けんし、脅迫されたら…そん時はそん時だ!!
「え、高」
よっしゃあ!!逆上がりは未だに出来ないが見せつけてやったり。
「ふふふ、進は何点だったのよ?」
「え、言えない」
あれれぇぇぇ??進くんは逃げちゃうんですかぁぁぁ??
「…S高校目指してるんでしょ」
「えっ…うん」
なんだろう。まだ声に出して言うのが少し躊躇われてしまう。ていうかなんでそっちのターンになってるんだよっ。
「僕C高校目指してるんだ」
どんなバカでも知ってるC高校。S高校よりも上。トップオブトップ。
「C校目指してるやつがS校に負けてどうすんだよっ」
「ちっ」
それにしても進が C高校かあ。
進は小学校中学年の時いじめられてた。分からないけど進がトップを目指す気持ちがなんとなくそれも関係しているような気がした。
「お互い頑張ろ」
あの時何もしなかった私の代わりに今はライバルとして立ってやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます