第44話 夢物語

今日、進路希望調査表を渡された。

いつもと違う高そうな紙、シャーペン、鉛筆で書くことは許されない。なんだか吐き気がする。宣言することの重さがのしかかる。

おちゃらけ系の男子が「まずはS高校行ってぇ、ハーバード行ってぇ、石油王になる!!」と騒ぎ、クラス中が笑っていた…私を除き。笑えない。私とその男子との学力の差はS高校を前にしてはないに等しい。私にとってはハーバード大学と石油王と同等の途方もない夢物語に違いないのだ。

私は笑った。面白い。やってやろうじゃないかと。最高にドラマチックな現実を見せてやろうじゃないか。

ボールペンで力強く、私は夢を宣言する。いつか夢じゃなくなる夢を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る