第3話
「え!?俺が別の賞金稼ぎ部で決定!?」
どうしてその判断に至ったのか俺には理解できない。俺に心当たりはない。何か、学園長を怒らせることをしてしまっただろうか。
*
遡ること1時間前。
「先生…。そ、それじゃあ、ちょっとお願いがあります」
「何だ?俺にできることならなんでもするぞ」
「そ、それは…」
何を考えているかは分からないけど、少し申し訳なさそうに上目遣いで見てくる。莫大なお金のかかることじゃないといいんだけど…。
「少し、学園長と話し合ってみませんか?」
「それって、何を?」
「その…。私たちの顧問が先生なのは、どうしても宝の持ち腐れなような気がして」
「そんなことない。俺はお前たちの顧問になれて後悔したことはないし、むしろ俺としては身の丈に合ってると思うし」
「しかし、私たち生徒の為にあれほどの危険を冒せるならここよりも危険な第5学園の賞金稼ぎ部の顧問になった方が絶対いいんです」
「じゃあ、俺がこの部からいなくなったらどう思う?」
「それは…、やっぱりちょっと心もとないというか、心細いというか…」
「なら、俺は別の賞金稼ぎ部の顧問なんかにはならない。俺はこの、第3雲母学園賞金稼ぎ部の顧問だからな」
この部にもやっと慣れてきたし、俺の賞金稼ぎ部はまだまだこれから。今このタイミングでここを離れるワケにはいかない。
「ですが、今ここでカミングアウトしていいとは思っていないんですけど、もしも前の先生よりも凄い先生だったら私たちには勿体ないから変えてもらおう、っていう話でみんな満場一致しているんです…。正直、撤回したいところではありますが」
まったく、ミコたちは。俺のことを考えてやってくれたんだろうけど。
「…その気持ちは分かった。でも、俺はこの部から離れるつもりはないからな」
「すみません…」
そして俺とミコは学園長室へ向かった。ミコはその巨大な扉をノックした。
「すみません、少々お話いいでしょうか」
「あー、ちょっと待ってて」
学園長にしては珍しく返答が早い。いつも書類だの色々仕事があって忙しいはずだが…。
少しして、その少女…に見える学園長が出てきた。学園長は今年で67歳のロリバ…失礼、エルフである。
「これはこれは、新米殿とミコ殿。昨日はありがとうございました。報酬を引いても1500万ゴールドを学校の資金に入れれたから助かったぞ」
「いえ、こちらは賞金稼ぎ部としての任務を遂行したまでで」
「それで、新米殿。昨日の話、詳しく聞かせてもらえるかな」
*
「ほう。そんなことが…。ミコ殿、落とされたりしたか?」
「べ、別にそんなことはないですよ!?」
その反応だと図星みたいに見えるぞ。学園長が茶化してるだけだって分かってるんだからそんな反応取らないでくれ…。こっちまで恥ずかしくなるだろ。
「それで、今日はこのことを話しに来たわけじゃないんでしょ?きっと」
「ご察しの通りですが、先生を他の学園の賞金稼ぎ部に移動させてほしいのですが」
「それはまたどうして?まさか、勤務中に淫らなことを…」
おいおおい!?また誤解生むからやめてくれ!
「違いますよ。ミコは、俺くらいの先生は宝の持ち腐れだから私たちには勿体ない、むしろ第5学園の賞金稼ぎ部の顧問になった方がいいって言うんです」
「そうか。確かに、今までの賞金稼ぎ部の顧問はただ傍観しているだけで、生徒が命を落としそうな時に立ち向かって救ったなんて前例はない。第5は警察学校だからそういうことができる新米殿だからこそ顧問が務まる可能性もある…。うーん、君自身としてはどう考えてる?」
「俺はこの、第3雲母学園賞金稼ぎ部の顧問です。俺が必要とされている限りはここにいるつもりです」
「そうか。そこまで堅い意志があるのなら…。や、やっぱり、お前には第5雲母学園の賞金稼ぎ部顧問を一時的に勤めてもらうことにしよう」
*
…で今に至る。
「どうしてですか!?俺はただ顧問としてこれからもミコたち生徒を守っていきたいだけで…」
「だからこそ。私もその強い気持ちは分かる。でも、その気持ちだけで行動して新米殿が死んだ場合、新米殿の新米殿による第3雲母学園賞金稼ぎ部はなくなってしまう。私はそうなる前にお前に経験を積んでもらいたい。だからこそ、今よりも過酷だがやりがいのある第5雲母学園の方で活動してほしいんだ。」
「学園長…。わかりました。なら、ぜひとも…」
その時、何者かがノックもせずに学園長室に飛び込んできた。
「先生、先生!!ナナとユギカちゃんを助けてください!」
「どうした、キララ?何があった?」
「それが…、とある貴族の人にユギカちゃんが連れ去られそうになって、ナナがアタシも一緒に連れてけって…。ナナが一緒に連れてけって言ったのは、緑川のせいなんです。ごめんなさい、先生…」
「キラ…緑川、その件についてもっと詳しく教えてくれないか?」
「あと、先生。もしかしたら、ナナは二度とこの学校に戻って来ないかもしれないです」
「…は?」
俺は唖然とするしかなかった。
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