Steam-Makina 最強兵器とメンヘラ令嬢の蒸気飛行船紀行

理想論者

プロローグ 少年と時計

「…」


少年は目覚めた、黒色の牢獄で。此処が何処で自分が何者なのか分からない。

手錠も足枷も付いたこの小さき体に何が出来るのだろうか。何故ここまで拘束されているのだろうか。


「13号は危険すぎる。だから拘束しているんだ。」「でも、倫理的にどうなんだ!」


二人の白衣を着た男が、口論している。どうやら僕は、ジュウサンゴウと呼ばれているらしい。『ナマエ』と言うやつだろう。


「だからって子供を、あんな風に!」「じゃあ、どうすれば良かったんだよ。」


言い争っている2人は、やがて熱くなり怒りを露にした。


そして、大きい音が、『パン』と鳴った。


「うぎゃあああああ、血が、痛い痛い、。」


また、血が流れる。液体、液体、液体。記憶の中には何も無い何も無いはずなのに、


金髪ボブの少女が、青い液体の前で笑っていることを、覚えている、覚えている。


「あ、…う、、」


重なり合う身体が、死体になっていくのを僕は見た。


段々眠くなって、きた。




少年は、目覚める。いつもの水の溜まった白い箱の中で、


「ねえ、これあげるよ。」


目の前には黒い服の金髪ロングヘアの齢20から30代の女性が腕時計を、差し出していた。


「本当はさ、…用だけど、君に使いこなせると思うんだ。」

「う…あ…くぃ…」


「無理に喋ろうとしなくていいよ、きっと喉を使ってなかったんだよね。」


その言葉を理解はできるのだ、ただ、話せない。


「あ…が…とう…ござま…」

「可愛いね、きっと似合う男になれるよ!」


女性の名前は、聞けなかった。いや、聞いたのかもしれない。覚えていないだけかもしれない。


しばらくして、貰った腕時計を見る。革と歯車の機構が少し見える。方位磁針も1つ小さく付けられている。だがリューズの他に上の方に1つボタンがある。だが押せない。この浴槽に、四肢が鎖で繋がれているからだ。


何時間経っただろうか。そういえば腹が減らない。強いて言えば喉は乾く。それくらいだ。


いつから僕はここにいたんだ?


13号と僕は、呼ばれていた。だがなぜ13号なんだ?


突然頭が痛い。記憶が押し寄せてくる。血、と鉄の世界。死体の山に立って高笑いしていた自分の記憶。


だが、こびりついて離れないのは青い海と少女が、笑顔でいてくれた記憶。


そんなことを思いながら、また、眠くなる。


「わ…名前…シトラスだ。」


最後にそう聞こえた気がする。

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