第11話
「ね、ねぇ
「きょ、今日は?だ、だめ?…………そっ、か」
「静玖ちゃん、今日はいいよね?わたしもう誰とも一緒に帰る約束なんてしてないよ?静玖ちゃんとしか帰らないよ?…………また、ダメなの??」
「ねぇ、静玖ちゃん。待ってよ静玖ちゃん。え、なに?今わたし、静玖ちゃんと話してるよね??見れば分かるよね?邪魔しないで。あ、待って静玖ちゃん!!」
「…………静玖ちゃん、今日の放課後、逃げたら許さないから。……え、彼氏?そんなのどーだっていいから」
来る日も来る日も、マシロちゃんとは付かず離れずに距離を置いて、かれこれ二週間が経った。
楽しい時間というのは、実にあっという間に過ぎていくもので。
この二週間、私はマシロちゃんが私の掌の上で変わっていく様を楽しませてもらった。
何度も何度も、もう執拗いくらいに毎日、放課後は一緒にと誘ってきて、拒み続けて一週間くらい経てば、次にはお昼ご飯ですら私の合意など待たずに勝手に机をくっつけて食べるようになった。
もうすっかり、マシロちゃんは私しか見れなくなっている。
あんなに人当たりが良くて、クラスメイトから絶大な信頼を寄せていた彼女は、今では私としか会話をしようとしないし、最低でも親友二人とボチボチ話すぐらい。
それに、私に何度も話しかけるマシロちゃんを気に食わずに割って入って、マシロちゃんを私から取り返そうとするクラスメイトたちも居たには居たのだけど。
私が何かを言う前に、あのマシロちゃんから彼女らを拒絶したのだ。
あの時のマシロちゃんの目、完全に彼女らに敵意を向けていた。
あぁ。まさかここまで変わってくれるなんて。
私の想像以上に、どうやらマシロちゃんは独占欲というものが大きいらしい。
それはそれで好都合だけど♡
今日も、お昼休みに入ってすぐにマシロちゃんは机を私の机にくっつけて、更にはイスも私に寄せて、ぴったりと肩と肩とが触れ合うぐらいの近くでご飯を食べ始めた。
お昼ご飯を食べる時、マシロちゃんは何も喋らない。黙々とご飯を口に運んでいる。
ただ、私が彼女の目線を向けた時だけ、
こう、上目遣いで、まるでお母さんから叱られるのを恐れる子供みたいに。
『だ、だめって言ったら、泣いちゃうんだからね??』
みたいな風に私の様子を窺ってくるの。
もう、可愛すぎ。
確かに、少し食べ辛さはあるけれど、ダメなんて言うはずないじゃん。
案の定、今日も私が彼女を見たら同じような表情をしてきたので、「いいよいいよ。一緒に食べようね〜」って意味を込めて頭を撫でてあげた。
それだけで、彼女は一瞬肩をビクッと揺らした後に、顔をだらしなく緩めて、
「ふへへぇ」
と笑う。
昇天しそうになる私。危ない、この破壊力は危ない。
そして、しばらくして食べ終えると、
「静玖ちゃん、ちょっとわたしお手洗いに行ってくるけど、絶対にここにいてね?わたし以外の子たちと話してても嫌だからね??」
と、わざわざ頼んでもいないのにトイレの報告をして、更には束縛じみた発言まで残していく。
本当に、ここ二週間くらいで、マシロちゃんはとことん私好みに変わってくれた。
いや、前から好きではあったけれど。余計に。
今ではもうすっかり、人目も気にせずに私のことを名前で呼んでくれる。
彼女を待ってる間に、私は考える。
そろそろ、マシロちゃんを完全に堕とそうか
私は口元を手のひらで隠して、ほくそ笑んだ。
そんな私の元へと、近寄ってくる二つの影。
顔を上げて見てみれば、そこには不満顔の、かつてのマシロちゃんの親友二人が並んで私をジッと見ていた。
「ちょっと、今日の放課後、付き合ってよ」
あぁ、マシロちゃん。可哀想に。
せっかく今日はマシロちゃんの望みどおりに一緒に帰ってあげて、いや、あの旧校舎の音楽室に連れてって、最後までシてあげて、堕としてあげようと思ってたのに。
親友二人のせいで、ざんねん♡
今日もまた、おあずけになっちゃったね。
「いいよ。私も今日、放課後は何も無かったから」
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み、短いですか?ごめんなさい!
ただ、キリがいいので今回の話はここで区切らせていただきました。
本作品は、あと2、3話で完結予定です。
ストック?そんなものは最初から用意していませんよ??はい。
あるのは、前に設定したプロットが書かれたノートだけです。
最後まで、お付き合いくださいまし。
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