第24話 〜真実と暴露大会〜
比国モールの外で出ると室内だったから気付かなかったが,なんとも言えないほど快晴の空で入道雲が遠くに見える。
気温は高く,海から吹く潮風でベタついた生ぬるい風が吹く。室内に慣れた目にこの太陽の光は眩しすぎる。
しかしそれにしてもいい天気だ。
「いい天気過ぎないか?」
「海岸に行くなら丁度いいんじゃない!!」
「それじゃあ行きましょうか」
モールのすぐ向かいには海がある。道路を渡ればすぐに海に着く。
本来であれば,この季節のこの海は海水浴の家族やカップルなどで沢山賑わっているのだが,この世界ではそうではない。
ほとんど人は居ない。学生はまずいない。若い人もちらほらしかいない。
賑わっている海の姿を知っているからどことなく寂しい気がする。
「ねえ〜足だけ海に入ろう!」
そう言って恭子と彩乃と恵は海に足だけ少し入る。
雷斗はそういうのに乗らない性格だ。
俺は少しだけ海に入った。
昔から知っているいつもの地元の海。小さい時から何百回と入った海だけど,この世界の海は俺が居た街の海より綺麗だ。
それは何故なのかは分からないが,気持ちがいい。
「雄二くんホラ!」
空を見ていた俺の顔に海の水がかかる。
「しょっぱ!」
恭子と彩乃に水をかけられる。
「マジでやめろって!」
「おーい! 雷斗も入れよ!」
「俺はいいよ」
なんか気取っている雷斗が腹が立ったので,無理やり引っ張って海に入れた。
「足だけだけど,気持ちいいですね!」
「気持ちいい……」
余程気に入ったのか,恵は河童を抱いたまま海に入っていた。
砂浜に戻り,裸足のまま海を皆で眺めていた。
「ねえ! 皆に話したい事があるんだけどいい?」
俺はここで皆に,メンバーに俺の事情を話す事を今決めた!
「どうした!?」
「どうしたの?」
俺は皆に話す事にした。
「信じられないかもしれないと思うけど,最後までちょっと聞いてくれ」
「急にどうしたの!?」
「実は俺はこの世界の人間じゃないんだ!」
「「「「え!?」」」」
「いやだから俺はこの世界じゃない違う世界からやってきた人間なんだよ」
「何だそれ! 雄二本気で言ってんのか?」
「本気で言ってる」
俺の身に起こった出来事を皆に全て話した。
俺はこことは全然違う世界の日本について話した。そしてその世界のこの街に生まれて平和な毎日を過ごしていた事。そして何故かわからないけど,いきなりこの世界に迷い込んでしまったこと。
そんな中で,和久さんと大佐に救われて学校に通える事になったこと。
そして現在に至る事を話した。俺がどんな世界で生きてきたか,そして紛れ込んだこの世界との違いなども話した。
「それって本当の事なの?」
「うん。だからこの世界の常識も知らないし,鉄騎もAntsybalも知らなかった」
「「「…………」」」
皆は黙って俺の話しに耳を傾けた。
「雄二そんな大事な事を俺達に話しちゃって良かったのか?」
「いや! 多分本当は駄目だと思う! だから皆この事は内緒にしておいてくれ」
「そんな大事な事なんで急に話してくれたの?」
「なんか皆には話してもいいかなって!」
「なんだよそれ」
「雄二……くんは鉄騎乗るの怖くないの?」
「めちゃくちゃ怖いよ。化物と戦う? 怖いに決まってるさ! でも元の世界に戻れる情報やきっかけがあるとしたら外にしかないらしい。その為にも戦ってる」
「だけど財前がいなくなって,せっかく仲良くなれた友達や仲間がやられちゃうかもしれない。でも適合率が高い俺なら自分の周り,このメンバーを守ることなら出来るのかもしれない! そう思って今は戦ってる」
「財前はこの街の皆を俺が守るって言っていたけど,俺にはそんな事できない。でもここのメンバーぐらいなら守れるかなと」
「なんかカッコいいじゃん雄二!」
「なんだよ雷斗急に」
「雄二さん今まで大変だったのではないですか?」
「大変なんてものじゃないよ! でも考える暇もなかったというのが正しいと思う」
なんか皆に話した事で,別にやましい事があるわけでもないのだが,すっきりした。
俺の中の最大の秘密を打ち明けたからかだと思う!
頭をガシガシ掻きながら雷斗が話す。
「俺さぁ〜〜実は山口先生の事が好きなんだ!」
「「「「!?!?!?!?!?!?!?」」」」
全員が驚いた。
「なんだよ! 皆してそんな顔するなよ!」
「いやだって急に話したかと思ったらしかも山口先生って」
「カッコいいだろ!? あの人。雄二が秘密を教えてくれたんだ。俺だって秘密を教えたっていいだろ?」
「なによその暴露大会みたいな事は」
「私は皆さんのような秘め事はないです。でも……」
そう言って彩乃が眼鏡を外した。
「実はこの眼鏡に秘密があるんです」
「私って視力と動体視力が普通の人より能力が高くて,裸眼だと目が疲れてしまうんです。だから普段は眼鏡をあえてかけて,ちょっと見えないようにしているんです。ですが,鉄騎に乗っている時は眼鏡を外します」
彩乃も何故か秘密を話してくれた。
「え? なになに? 皆秘密話すの? 恵ちゃんあるの?」
「私は……何もないです! でも……」
「私はこのチームが好きです! 皆私の事を嫌がらないし,受け入れてくれたのが嬉しかったです。私はこのメンバーでずっとやっていきたいです。もう誰でも死んで欲しくない。その為に私は頑張ります」
「恵ちゃんそんな事思ってたの?」
「うん……秘密」
恵がそんな事を思っていたなんて俺は意外だった。正直鉄騎に乗っている時の恵が本性だと思っていた俺は,実は
「ほら! 最後! リーダー藤井の番だよ」
「え!? 私???」
「そんな事言ったって,私にはそんな秘密なんて……」
「別に雄二みたいな重要じゃなくたっていいんだよ。なんかあるだろ?」
「絶対に秘密にしてね? 実は最初の演習前に財前くんに告白された」
「「「「!?!?」」」」
あまりにも意外な方向の暴露で全員が驚きを隠せない。
「え!? あの財前から? 本当に?」
「うん……でも返事する前にその……財前くんはいなくなっちゃったからさ」
「こんな事聞いていいのかわからないけど,どんな告白されたんだ?」
「雷斗それはいいだろ!」
「いや! でもあの財前だぜ? 凄い気になるだろ?」
確かに雷斗の言うことも分かる。正直告白している姿が想像できない。
ふと思い出し笑いをする恭子。
「財前くんらしい告白だったよ! 君は僕の隣に並ぶに
「財前くんらしいでしょ?」
「財前だな!」
「財前だ」
俺達は今日チームワークの絆を深める為に遊びに来たのだが,その目的は達成したのではないか? と感じている。
長く話したせいか,もう夕方になっていた。
水平線の向こう側からこちらを赤々と照らす夕日が見える。
「じゃあそろそろ帰りますか??」
「そ〜だな〜帰るか」
俺達は学校に帰る事にした。モールからバスに乗り,学校へと戻る。皆遊び疲れたのか?バスに乗ると皆寝ていた。
学校に到着すると皆を起こした。
「ほら! 学校に着いたよ! 皆起きろ」
「雷斗もほら起きて!」
「ん? もう学校着いた」
「着いたよ! 皆降りて」
先程まで赤かった空も濃い藍の空へと変わっていた。
「あ〜今日は疲れたなぁ」
「皆今日はありがとうね。楽しかったわ! じゃあここで解散にしましょう」
「それと今日の秘密は,このメンバーだけの秘密だからね」
リーダー恭子の一言で今日は解散になった。
「じゃあ俺らは寮もどるかぁ〜。今日は疲れたから早く寝たいぜ」
「ああ確かに疲れたな! とにかく横になりたいな」
俺達は男子寮へと帰る。
部屋に戻ると,透が待ち構えていた。
「お帰り雄二! で!? どうだった!?」
「どうだった!? ってどういう事よ?」
「皆で遊びに行ったんだからさ、なんか良い事というかさ、楽しかったんだろ!?」
「そうだな! 楽しかったな。めちゃくちゃ大変だったけどな!」
「そういえば、恭子が……いやなんでもない」
「なんだよそれ! 気になるだろ!」
「駄目なんだ! 秘密さ」
俺は不敵な笑みを浮かべ、部屋を出てそのまま食堂へと向かった。
「おいおい! 待てよ雄二――」
その後何度も透に聞かれたが,俺は内容を答えなかった。
夜に師匠との鍛錬を行った。
「雄二くん,今日は何か良いことでもあったんですか?」
「え!? 何故ですか?」
「動きがいつもより軽快でしたから,心境の変化でもあったのかと」
「師匠はそんな事が分かるんですか? 良いこと? まあ良いことだったのかもしれませんね」
師匠にチームのメンバーでチームワークを深める為に今日遊びに行ったことを伝えた。
そしてチームとして絆を深める事が出来たと思えた事などを話した。
「なるほどそうですか! それは良かったですね」
「じゃあせっかく動きも良いので,今日は少し厳しくいきますよ!?」
「え? 手加減してください」
「大丈夫ですよ!」
師匠との鍛錬を終えて,俺は疲れ切っていたのか,ベッドに横になったらすぐに寝てしまい,起きたら朝だった。
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