裏切り者と世界を壊す者~やらないといけないこと~
「本当、龍牙様止めるの苦労しました」
「でしょうね」
美咲が紅茶を飲みながら言うとルローはそう返事をした。
「しかし、裏切りものですか……」
「心辺りありますか?」
「……実はあります」
「え⁈」
ルローは口元に指を近づけ、静かにするようにジェスチャーで指示した。
美咲は口を覆う。
「龍牙様には報告済みです。今後貴方の癒し部屋には黒炎を常駐させます、貴方は知らぬまま続けてください」
美咲はこくこくと頷いた。
美咲は知らぬフリというか実際裏切り者が誰なのか知らないのだが、いつも通りに対応を続けた。
ただ。
「髪の毛食べさせて、ちょっとでいいから!」
「指舐めさせて! 舐めるだけでいいから!」
「首を触らせてください、ええ、触るだけですとも」
黒炎が居るのに欲望丸出しで癒し部屋に来るドラゴンファングのメンツに相変わらず美咲は引きつりながら対応した。
──相変わらず命の危機を感じルー‼──
と思いながら対応していった。
──まだ距離を測っていた最初の頃の方が安全だった──
などふと最初の頃を思い出す。
最初の頃は欲望控えめで癒やしを求めてきた。
しかし、馴れてくると欲望を丸出しで癒やしを求め美咲は命の危機を感じた。
「美咲さんや、いつも通り肩たたきをお願いしたいのですが……」
開発部の人がやって来て肩たたきを所望してきた。
美咲は近づいてやろうとすると黒炎が止めた。
「美咲は今休憩に入る」
と言って美咲を別室基自室に閉じ込めた。
その直後、破壊音が響いた。
思わず開けそうになるが、ぐっと堪えて鍵をかけて部屋に閉じこもる。
一時間ほどたって鍵が開けられ入ってきたのは龍牙と黒炎だった。
二人とも少し服がよれていた。
「お、お二人とも……」
「安心しろ、裏切り物を見つけて対応しただけだ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、一気に湧いて出たぞ、まさか幹部の上層部連中がそろって裏切りものだとはな」
「……」
美咲はどう対応してかは話す事は無かった。
「あの、部屋は……」
「すまん、壊れた修理するまで癒し部屋は休止だ」
美咲は無残にぼろぼろになった癒やし部屋を見て顔色を悪くした。
「ボス、裏切り物の処──いえ対応が全て済みました」
ルローが部屋へと入ってきた。
「でかした、ところでWGはどうなっている」
「今まさに混乱状態にあるようです」
「私が行く、ルロー黒炎、美咲から目を離すな」
「「はっ」」
龍牙がそう言っていなくなると、美咲はへたり込んだ。
「美咲?」
「美咲さん」
「い、いえ……ここまで酷い状態になるなんて、裏切り者の方達はどうして私を……」
「ボスとWGのトップが言った話がそのままだと、美咲さんはこれから起きる悲劇を食い止める重要存在。連中はこれから起きる悲劇を悲劇として起こさせたいということでしょう」
「……でも、なんでそんな事……」
「もしかしたら、その後が重要なのかもしれないと龍牙様が言っておられたな」
「その後?」
「めちゃくちゃになった世界を牛耳る──」
「めちゃくちゃになった世界を牛耳る?」
「我々の目的は龍牙様の鎮めの乙女──美咲を死なせないが重要。連中は世界を荒らしてそれを鎮める存在を出すことで、世界を牛耳ろうとしているのではないか、と」
「はた迷惑すぎる……」
「ですね」
「だな」
「WGにも裏切り者いて、どこにその人達がいるのかもう分からないですよ!」
「確かに」
「そうですね」
美咲は頭を抱えた。
「はた迷惑すぎる‼」
「ただWGのトップはもう一つ別の事を言っていた」
「な、何ですか」
「……これは知らないほうが良いだろう」
「えー⁉」
美咲は抗議の声を上げた。
「なんでですかー!」
「君が絶望することになる」
「私が絶望? そんなまさかぁ」
「するから言って居るのだ」
黒炎の真面目な言葉に美咲は息を飲んだ。
「……分かった黒炎さんがそういうなら聞きません」
「すまないな」
「いいえ」
美咲は諦めたように息を吐いて自室に戻っていった。
話は遡ること一時間前──
「ボス本当なのですか?」
謁見の間でルローと黒炎は龍牙に確かめていた。
「ああ、全てを鎮めた、鎮めの乙女の肉は喰った相手を不老不死にさせる」
「……では、向こうの目的は……」
「それが第一だろうな、肉を食った相手は若返り、死なずとなるだが──」
「だが?」
「鎮めの乙女のみ殺す事が出来る。だから鎮めの乙女を食い殺すつもりなのだろう」
「何て下劣な……」
黒炎は忌々しげに吐き出す。
そしてはっとしたような顔をする。
「全てを治めた鎮めの乙女はどうなるのですか⁈」
「安心せよ、不老不死になどならぬそのままだ」
その言葉に黒炎はほっと息をついた。
「だが、WGのトップとも話したが美咲をそやつ等に渡してはならない」
「は!」
「ボス、一つお聞きしたいことが」
「何だルロー」
「裏切り者の『処分』の件は、美咲に伝えるのですか」
「ぼかせ、美咲は殺したなどと知ったら今までのようには接することが出来ないだろう」
「畏まりました」
「目星はついている、美咲に接触しようとした輩から処分しろ」
「「はっ‼」」
「美咲がそんな体質の持ち主だったとは……」
「恋人として、不安ですか?」
「ああ、命を狙われる事が不安です」
「肉を食らうことで若返り不老不死に……鎮めの乙女が即座に死ぬのを選んだのはそういうのも事情かもしれませんね」
「どういうことです?」
「WGのトップとの会話で、先代の鎮めの乙女は自ら死を選んだ、鎮めの乙女は自分から死を選んでいると、聞かされました」
「まさか……」
「全てを鎮めた時、美咲も自分の体がどうなったのか察するのではないでしょうか?」
「何があっても彼女を死なせるものですか」
ルローの言葉に黒炎はそう言った。
「なら良いのです、貴方は恋人として美咲を守り通しなさい」
「はい」
「……」
会話を思い返し、黒炎は息を吐く。
「どうか、彼女にそんなものを与えないでくれ──」
呟いた。
「今日はもう癒やし部屋使えないし、寝よ」
美咲は毛布を被って眠った。
夢の中にリフレインが現れる。
「これ夢」
『ええ、夢よ』
「えっと何の用でしょうか?」
『貴方はこれから現れる物達を鎮めなければならない、でも同時にあることをしなさい』
「あることって……何でしょう」
リフレインはにっこりと笑って耳元で囁いた。
それを聞いた美咲は顔を真っ赤にした。
「無理無理無理ー‼ いや、恋人居ない歴が年だった私には無理‼」
『でもやらないともっと大変な事になるの』
「え?」
『それは──』
リフレインの言葉に美咲は目を見開き呆然とした。
そして、頭を抱えだした──
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