降魔高校オカルト部の怪異事件帖
喜島 塔
File01
野太い中年男性の悲鳴が早朝の
教師たちや部活動の朝練に勤しむ生徒たちは、ただならぬことが起きていることを察知し、悲鳴が聴こえてきた旧校舎の方へとぞろぞろと向かい黒山の人だかりとなった。悲鳴の主は、中村さんという用務員の中年男性であり勤続年数も長い。中村さんがいつものように校舎内巡回を行っていた際あるものがいつもと違うことに気付いたという。あるものとは、旧校舎の校庭に建っている謎多き少女の銅像で、おさげ髪の少女は降魔高校の制服がリニューアルされる前の制服を身に纏っており、劣化により汚れた碑文をよくよく目を凝らして見ると「正子さん、安らかに」という文字が刻まれている。その少女の銅像の隣に新しい少年の銅像が建てられていることに気付いた中村さんは、学校側から銅像が増えるなどという話は聞いていなかったし、何より、昨日まではそこになかったものが突如現れたのだから気味が悪いと思ったという。中村さんが恐る恐る近寄って見ると、少年の銅像はひどく怯えた表情をしており、何者かから必死で走って逃げているところを固められたような妙な生々しさがあったという。事務長に報告すべき案件だろうと判断した中村さんが、少年の銅像から離れようとした時、銅像が、
「たすけて……」
と言葉を発したため、中村さんは腰を抜かし悲鳴を上げた、というわけだ。事態を重く見た学校側は箝口令を敷いたが、情報発信ツールが浸透したこのご時世において、その対応は何の効力もなさず、光速で世間に知れ渡った。
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