好きなのは。

れーよ

第1話 変わりました。

(岳編)

俺には好きな人がいる。

同じクラスの田中有紗。生徒会で副会長として働く俺は、会長である有紗に恋をした。

だからいつも、会計の松田刃に相談している。

「俺思うんだけど、岳は見た目を変えた方がいいと思う。確かに、君はイケメン。モテてるけど、メガネを外したり、そのボサボサの髪も整えてさ。この学校、制服着てれば服装とか自由だし、イヤリングとかピアスとか大丈夫だし。とにかくもっとかっこよくなるために、努力しよう。」

「刃こそモテてるじゃん。」

「見て。でも俺、ピアス片方付けてるしネクタイ少し緩めてボタン外して着崩してるし髪整えてるしコンタクトだし。俺も色々努力してるってわけよ。あの高嶺の花の有紗を振り向かせるには、自分を変えるしかない。」

「なるほど…今日放課後付き合って。俺を磨いて。」

「OK。任せて!」

刃はいつも恋の相談に乗ってくれる。

地味でかっこいいとモテているらしい俺は他の女子に興味がない。刃は、モテて満足はしているが、彼女がいない。

いつも俺らが二人で歩くと、周りに女子が集まってくる。でも俺はずっと有紗を見てしまう。


放課後、俺は大型ショッピングモールに制服メガネ髪ボサボサのまま行った。刃はいつも通りのかっこいい姿で来た。

「よし。まず服装な。」

「制服でもよくない?」

「よくない。岳は磨けばもっとかっこよくなるの。家にどんな服ある?」

「白Tシャツ、ジーンズ、白パーカ。この三着。」

「あー、制服だけじゃなくて私服も変えなきゃだね。さ、行くよ。俺が払ってやるから。」

「え、ちょっ。」

刃は俺の手を引っ張り、服屋さんまで走った。

「よーし。どれにしようかな。」

俺はグレーのスウェットを手にした。

「もうこれでいいよ。」

「だめ。同じような格好だけじゃだめ。涼しい春には…これとこれがいい。試着してきて。」

刃は四着ほど俺に渡してきた。

「…わかった。」

数分後。

「着れた?」

「…うん。」

「開けるねー。」

刃はそう言い、カーテンを開けた。

「やべぇ、いい。超いいよ!あ、メガネ外してみて…髪も整えて…。うん、いい。めっちゃ似合ってる!」

「…そう?」

「これください!」

「かしこまりました。では着替えられましたらレジの方へ。」

「はい。」

その後、会計は二万を超えるものとなったが、刃は平気で払っていた。

そして、「次、行くよ。」と別の服屋さんに連れられた。

濃い色のジージャンや、黒いジャケット、様々なものを着せられ、全て買い上げた。

「刃、お金大丈夫?」

「平気!次は制服と組み合わせるやつだ。うちの制服学ランじゃなくてブレザーだからおしゃれしやすい。って言っても普通のパーカーだけど。」

そういい、僕は赤い半袖のパーカーを制服の中に着せられた。

「なんでチャック閉めるの。開けて。そしてネクタイを少し緩める。はい完成。」

そのパーカーも買った。そして長袖のパーカーも買った。

その後、美容室に行かされ、伸びていたボサボサの髪の毛もバッサリ切られた。

その後眼科に行かされ、何時間か検査や診察を受け、コンタクトレンズを購入した。

「…これで完璧!もう俺泣きそう…。」

「ちょっと…。…でもピアスの穴は開けたくないかな。」

「別にイヤリングでもいいんだよ?」

「なるほど。」

といい、刃は鞄からピアスっぽいイヤリングを取り出した。

「これを左耳だけに付けたら…完成!これでモテモテ男子の完成だ!」

「え、まって、俺のこのコーディネート、合計でいくらぐらいしたの。」

「あー、十万…?かな!」

「…!?」

高すぎて言葉が出なかった。

「ん?」

「…俺頑張って返金する。」

「いやいいの。俺のためだと思って。俺が好き勝手やったこと。」

「…でも。」

「いいから。」

「…ごめん。」

「よーし!明日から一緒にモテまくろう!」

「おー!(?)」


翌日。

家のインターホンが鳴り、お母さんが「岳ー、お友達よー!」とリビングから声をかけた。

「よっ!」刃が家まで迎えにきてくれた。

「刃!まって、俺さっき起きたばっかりで髪もボサボサで眼鏡でパジャマで…歯磨き終わったら着替えてくる!」

「急がなくていいよ!」

俺はうがいをして、髪を整え、コンタクトをつけた。

そのあと部屋に向かい、ワイシャツを着て、ネクタイをつけて赤いパーカーをきたあと、ブレザーを着てネクタイを緩め、イヤリングを左耳につけたあとバッグを持ち、急いで刃の元に向かった。

「めっちゃいい!行くぞ!」

自転車通学の俺たちは、二人で下り坂を下っていた。

「岳の靴、今日買いに行こ!少しボロボロだ。」

「うん、ありがとう。」

もう昨日みたいに遠慮をすることはなくなった。

学校につくと、早速女子たちの声が聞こえ始めた。

「きゃー!やばい!刃様の隣にいるイケメン誰!二人とも神様みたい…。」

「あれ…鮎川岳じゃね?やば!かっけぇ…」

刃はニコニコして「モテモテですなー。俺のお、か、げ?」

と肩を組んで言ってきた。

「確かに。ありがとう。」

俺は放課後、有紗のところに向かった。

「あ、有紗。昨日の企画提案のことでさ、普通文化祭を復活させたいって声が多数で、どう?」

本を読んでいた有紗がこっちをみた。

「いいと思う…けどなんか雰囲気変わった?どよーんオーラがなくなったっていうかキラキラしてる。」

「…そ、そう!ちょっと雰囲気を変えたくて。」

「そうなんだ…好きな人できたとか?」

「!?」

「あ、図星。わかりやすいね。笑」

「あ、あ、ぶ、ぶ、文化祭のこと後日話し合おう!」

俺はそう叫びながら生徒会室を出て行った。生徒会室の外にいた刃は「あともう一押しだったのに!こうなったら!」とまた手を引っ張ってきた。

「靴買った後、作戦会議だよ!」と自転車に乗り、靴を買い、近くの公園のベンチに暗い中二人座った。

「もういい。遊びに誘え。」刃は頬を膨らましながら言った。

「あ、遊びに?俺が?」

「これミッションね。達成できなかったら有紗は俺がもらう。好きじゃないけど。」

「…わかった。明日、やってみるよ。」


そしてまたまた翌日。

俺は生徒会室に入り、有紗のいる席に向かった。

「あ、有紗!」

「ん?どうしたの?」 

「話したいことがあるんだ。」

「本当、どうしたの?そんなかしこまって。」

「…今月末の日曜日空いてるか?」

有紗は自分の鞄からスケジュール帳を取り出した。

「うーん、特に何もないから空いてる!」

「じゃ、じゃあ、俺と一緒にどこか出かけない?ほら、ちょっと色々話したいこともあるしさ。文化祭のこととか。」

「いいよ!どこにする?」

「ゆ、(うえんちは…)ど、(うぶつえん…まあいいか。)動物園!」

「いいね!行こう!」

そうして、一緒に遊ぶことになった。

でも、気になる。嬉しくて刃の方を振り返った時の刃のあの顔。その顔を見たのは一瞬だけだったけど、笑っていたけど、なんだか悲しそうだった。俺は不思議に思ったが、笑みを浮かべ、刃の方に走って行った。


(刃編)

中学生の頃、修学旅行で別の中学校と同じホテルになった。

中学生の頃少し問題児だった俺は集団行動だった花火を見る時間に、一人で行動していた。

その時他校の岳に会った。

ホテルの隣の公園の滑り台で寝そべって花火を見ていた。

その時の岳もメガネをかけていて、今と変わらなかった。

「君、ここで何してるの?」

俺は滑り台に登って滑り面に寝そべっている岳に話しかけた。

「…花火見てる。」

「ここで?」

「うん。うちの学校自由行動だからみんなのいないところに来た。」

「じゃあ俺邪魔だね。」

すると岳は起き上がり、振り返って俺を見た。

「邪魔じゃない。あの小さい山で一緒にみよう。」

と岳が指を指した。

そして俺と岳は滑り台から降りて、小さい山に寝っ転がって一緒に見ていた。

「俺、松田刃。中三。」

「俺は鮎川岳。同じく中三。スマホ、持ってる?俺の学校はスマホOKだからもってるけど、刃の学校は?」

「刃…。…どうやら俺は問題児らしい。本当はダメだけど、持ってる。」

その後連絡先を交換し、花火が終わるまで一緒に見ていた。

「じゃあ、またね。部屋戻ったら連絡する。岳。」

「うん。またね。刃。」

俺は先生にバレないように合流して、部屋に戻った。

その後一時間くらい自由時間だったので、部屋に一人だった俺は岳と電話をしていた。

「もしもし。岳?」

「うん。もしもし。自由時間何もすることなくて暇。」

「俺も。同じ部屋の人遊びに行っちゃって。」

「どう?今日、バイキングだったけど何食った?」

「いちご飴。チョコマシュマロ。焼きそば、スープ、水。」

「全部一緒だ。俺も。」

「まじ!美味かったよな!」

「めっちゃ美味かった。」

楽しかった。まさに運命の出会いってやつだと思った。

俺たちは修学旅行が終わってもハチ公前で待ち合わせて遊んだりした。お互い、仲の良い友達がいなかった俺らは同じ高校に入った。

一年生の時、奇跡的に同じクラスになった。問題児扱いされるのが嫌で、高校では真面目に勉強しようとした。

ピアスの穴は空いてるけど、日常の中で真面目に過ごそうと思った。

そしたら女子達が集まってくるようになった。

モテるのが好きというか、周りから悪い目で見られなくなったのが嬉しかった。バレンタインは置き勉しないとリュックの中に入らない、いや、リュックに入りきらない量をもらっていた。登校したら靴箱や机の中やロッカーに大量のラブレターが入っている。もう一度言うが、モテたかったわけじゃなかった。

みんなは、高嶺の花の田中有紗と俺が結ばれると勘違いしている。でも、田中有紗と俺は仲がいいわけでもなく、少し迷惑していた。

二年生になり、また俺は有紗と岳と同じクラスになった。

二年生も一年生の時と特に変わりはなかった。

でも、岳が田中有紗を好きだといい始めた。

そこで俺は、噂で聞いた田中有紗が生徒会長に立候補をしようとしているというのを教えた。

すると岳は、「副会長に立候補する!」と言った。

選挙の時、登壇した岳は「イケメン陰キャくん」で話題になり、無事副会長になれた。

俺はそんな二人を見守るため、会計になった。

三年生になって、また二人と同じクラスになった。

そして岳はよく恋の相談をしてくるようになった。

最初は全然平気で聞いていた。

でも、

自分の気持ちに気づいてから辛くて仕方がない。

つまり、俺は岳が好きだということだ。

俺は、岳のかっこいい姿を見たい。

だから俺は「有紗を振り向かせるため」と言う口実を使って、岳をキラキライケメンにイメチェンした。

思った通り、女子からの反応はすごかった。

有紗も「キラキラしてる」と褒めていた。

俺は叶わない恋を捨て、岳と有紗の恋をサポート、応援すると決めた。

俺は、岳に「有紗を遊びに誘え」と言った。岳は一度否定したが、「わかった。明日、やってみるよ。」と言った。

次の日、岳は有紗を動物園に誘っていた。俺は生徒会室の前でそれを見ていた。

遊びに誘えって言ったのは俺だけど、辛かった。

岳が遊びに誘えた嬉しさと、二人きりで遊びに行くんだという嫉妬が混ざって、多分その時の俺の顔は悲しそうだったと思う。口角をあげ、俯き、「よかっ、た。」と言った。

岳は振り向いて俺の方を見た。こんな悲しそうな顔見られたくなかった俺は、無理矢理笑い、顔を上げ、有紗に見つからないようにガッツポーズを岳に見せた。

「やったよ!」と岳がこっちにくる。

「よかった!よくできたじゃん!」と言って笑う。

少しでも失敗して欲しいと思った自分は最低だなと、自分で自分を恨んだ。


(有紗編)

私はこの学校のマドンナだそうだ。

でも、私は生徒会長になってから好きな人ができた。

だからどんなイケメンが寄ってきても、その人にしか眼中にない。

それは、鮎川岳くん。

彼はこんな私にも普通に接してくれた。

ただ、最近様子が変だ。

私と話すたび顔が赤くなる。

私はその事を友達の結城和哉ゆうきかずやに相談した。

「お前のこと好きなんじゃねえの?」

と言った。私はびっくりして「そ、そんなわけないでしょ!」と言った。でも彼はふっと馬鹿にするように笑って「お前恋愛経験少なすぎな。普通に話しかけてた子が?顔赤くなるなんて恋愛してる人しかならねえだろ。」と言った。

確かに…。いや、自分で確かにとは言いたくないけど…。

「じゃ、俺はさらばだ。」

「…はい。」

次の日、登校すると教室からきゃーきゃー聞こえた。

何事かと思い、見ると岳くんだった。

びっくりして声も出なかった。

顔は整ってるのは変わらないが、服装もカッコよくなっていて髪も整ってる。メガネも外していてカッコよかった。

私はもっと好きになってしまった。

放課後、生徒会室で休憩がてら本を読んでいた。

すると

「あ、有紗。昨日の企画提案のことでさ、普通文化祭を復活させたいって声が多数で、どう?」と岳くんが声をかけてくれた。私は顔が赤くならないように、気をつけながら、

「いいと思う…けどなんか雰囲気変わった?どよーんオーラがなくなったっていうかキラキラしてる。」

と、言った。本当は教室で言うはずの言葉を今勇気を出して言った。

「…そ、そう!ちょっと雰囲気を変えたくて。」

「そうなんだ…好きな人できたとか?」

私がそう言うと岳くんは「!?」と驚いた表情をしていた。

「あ、図星。わかりやすいね。笑」

「あ、あ、ぶ、ぶ、文化祭のこと後日話し合おう!」

と岳くんは走って行った。私は岳くんに聞こえないように、「す、好きな人…?え、誰。えええ!どうしよう…私でありますように、私でありますように…。」

と両手を合わせて唱えた。

そしてまたまた次の日。

放課後、生徒会室に岳くんがきた。

多分、仕事をしにきただけなのに、なぜかドキドキしてしまい、その鼓動を抑えるのに必死だった。

すると、岳くんがこちらにきた。

「あ、有紗!」

「ん?どうしたの?」 

「話したいことがあるんだ。」

「本当、どうしたの?そんなかしこまって。」

「…今月末の日曜日空いてるか?」

私はは自分の鞄からスケジュール帳を取り出した。

「うーん、特に何もないから空いてる!」

どんな話をされるのかとスケジュール帳を持つ手が小刻みに震える。

「じゃ、じゃあ、俺と一緒にどこか出かけない?ほら、ちょっと色々話したいこともあるしさ。文化祭のこととか。」

え、遊びに?岳くんが私を遊びに誘った…?なんで…?まあ、返事はもちろん…

「いいよ!どこにする?」

「ゆ、(うえんちは…)ど、(うぶつえん…まあいいか。)動物園!」

これ、遊園地って言おうとしてたな。岳くんとならどこでもいいのに、そんなこと思いながら私は「いいね!行こう!」と返事をした。

そして私は今月末の日曜日、遊びに行くことになった。



第三者)

いやー、岳は有紗に有紗は岳に。ここは両思いなのにさ。

刃…悲しい…。どうか諦めないで欲しい!

有紗も岳も刃も、諦めずに恋頑張ってよ!

とくに刃!

どこを応援する?って言われたら難しすぎる…。


次回!

どうなるデート。

刃の気持ちも暴走するとかしないとか…。

有紗も岳といい感じ!?


みたいな感じ?

ぜひ見てください!

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