ー6- 見





遊歩道から離れて、

森がある。



山を這うように木々が流れ生える。

上から下。

木々の隙間すきまから山の一部が見え、

崖岩だんがんが確認できる。



山の、

崖岩の道を辿たどってのぼると

ある場所に出るのだという。



人がにぎわう観光地ではない。

動物すら目にすることはまれだ。



崖岩に

無理やり足を

置ける場所がある程度。


つかまるものもない。


ひどくバランスが悪い。

右足を置くと

左足が置けない。


右に断崖。

左側を

崖壁がいへき

擦り付けるように歩く。


崖が

半ば森に飲み込まれている。



過去にも

ここを歩いた人すら数える程に。



どこまで続いているのか、

終着地がどこにあるのか、

答えを聞いたことはない。



森に

山に

喰われかけた。

誰も足を踏み入れない断崖。




近づいたことのある人は言うのだ。




「何か視線を感じる」





断崖を這う形で上から下へと

伸びる木々。

森。


そこから何かが見ているのだと。



視線を巡らせても

崖と森しかない。


それでも何かが見ている。



上の方が木々が深い。


その奥から何かが見ている。



深い木々の、

さらに奥の

森の奥の。


目玉がこっちを見ている。

























   

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