-5ノ締-
彼が言うことには
そこは立派な『
「また新たに
まるで瓶の蓋でも閉めるような言い草。
彼なら
やってくれるのだろう。
自分には
その方法は判らない。
知ることもない。
自分の身分は
「見習い」なり。
寺仕事の修行中。
ということになっている。
表向きー
一応そうなっているのだ。
儀式は滞りなく。
否、自分は見ていない。
儀式の手伝いすらしていない。
ぼんやりと過ごした。
彼の作業が
視界にすら入らぬ場所で
訪れる小鳥や
庭の花を眺めていた。
餌だ。
封印の中身を呼ぶ餌。
これも
助手の役目なのだろうか。
こんな疑問をぶつけても
彼に頭を撫でられるだけだろう。
撫でられる齢は
遥かに過ぎている。
数日過ぎて。
全てを終えて彼と屋敷をあとにした。
一旦、住職の寺に寄ると言う。
自分と言えば。
ーあの夜の体験
動揺していると言えば動揺している。
夢だったのだと、
半ば忘れかけていると言えば
記憶は
あの夜の出来事。
彼は何も聞いてこなかった。
自分もなにも言わなかった。
察してくれたか。
全て知っているのか。
住職は
寺への滞在を快く受け入れてくれた。
「メシだ!風呂だ!酒だ!今すぐだ!」
大声で陽気に言い放つ彼。
我が家の如くに奥へと歩みを進め。
慌て後を追う寺の者たち。
引き連れる様に
呆然と見送る中
振り返る住職は笑顔だった。
寺から家へ
帰路に就いたのは
涼し気な風に気づく頃。
秋が
一歩と
近づいていた。
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