ー2ノ初-
「古い武家屋敷、だと聞いている」
かなり無理をして
全て詰め込んだ夕の膳。
食後。
冷やした桃の菓子。
一口目
呑み下すかどうかの頃合いで
住職が切り出した。
盆には多少早い時期。
古い武家屋敷の立ち合いー
屋敷ー
今は旧家の離れとして残された武家屋敷だ。
そこには
封印された場所がある。
一見ただの壁。
見た目には
違いは判らない。
かの旧家ー
屋敷の持ち主であり
当代・当主が話すには こうだ。
家には祖先より伝えられた
壁ではないと気が付く者は、封印の意味が判る者。
知らずに気付いて避ける者か。
封じた壁の意味や訳は伝わっていない。
壁を探してはイケナイ。
意味を知ろうとしてはイケナイ。
屋敷に住んではイケナイ。
修繕もしてはイケナイ。
子々孫々
言い伝えを守ってきた。
誰も住むこともなく、
修繕もせず
当代・当主の代まで来た。
何代目になるのか
正確には聞いていない。
武家屋敷の
100年や200年ではあるまい。
修繕すら禁じられた武家屋敷。
まるで『現役』の輝き。
風格があった。
人が住まない家屋は
あっという間に
朽ちて行くというのに。
隅々まで手入れの行き届いた
「どうだい、立派なモンだねえ」
「・・・・・・はあ」
彼ー
修行僧、と表向きは名乗るのだ。
ひょろりと伸びた躯体。
妙に長い手足につい目がいってしまう。
見上げる位置からの彼の声。
思うのだ。
こんな。
暑い夏。
武家屋敷からは
吹くともなしに流れる冷気。
神妙な面持ちの彼の表情。
とてもとても。
イヤな感じしかしない・・・。
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