夢
働気新人
私
夢を見る。
いつも見る夢。いつも同じ。家にいて、物音がして、見ると赤い。
そんな夢を見て、目元が濡れてる。
いつもと同じ目覚め、両親が死んでからこの夢ばかり見る。
「ふっ……う……うぅっ……」
抑えられない感情を無理やり抑え込んで、ベッドから体を引きはがす。
絶対に忘れない記憶を頭の片隅に追いやって、今日もいつも通りの一日を始める。
いつもと変わらず、いつもと変えず。いつも通りの日常。
非日常を感じた日を遠ざけるように、そうじゃないと私が壊れてしまうから。
感情を抑えて、それでもやらなきゃいけないことが多い。しがらみが多いこの社会に嫌気がさす。それでも生きていればいいことも多い。
「さて、仕事頑張りますか! 行ってきますお母さん」
部屋の中央に置いてあるテーブルに立ててある、誰よりも好きな人の写真に、自己満足だと分かっていても声を掛ける。
「あ、そうだった今日は先に病院行かなきゃいけないんだった。抜けてるところは変わらないよ、お父さん」
もう一つの写真に思わず笑いかける。
お母さんを庇う様に覆いかぶさって、息を引き取った大好きなお父さんと同じ位置で目を閉じて、玄関に向かう。
感傷なのはわかってる、これは儀式のようなものだ。嫌いな病院に行くための。
絶対好きになれない、精神科でカウンセリング。周りと違うことはわかってる。
もう八年も昔に起こったことを、今だにお医者さんたちは心配してる。
退屈な話をされるし、嫌気がさす、それを淡々と話す自分にも。
私は“異常”わかってる。
誰に言われるまでもなく、子供の頃から理解してる。
だから、嫌い。
愛おしいと思っていた、今もそう思ってる両親が死んでしまったから、それを発端に精神的な病にかかると思われている。その可能性は私でも知ってる。
でも、私には心配ない。
『父母殺害事件』。未解決扱いで、娘の私だけ生き延びたその事件を発端に私の生活は一変した。
だけど、誰も心配いらない。何も心配いらない。
親戚はいない、私は一人で生きることを選んだ。だから、誰も心配いらない。
「ふ……う……うぅっ……うっふ、あはははははははははははははは!! ああ、いけないいけない、思いだすとつい……。殺したのは私。ナイフを突き立てて、計画的に殺したのは私! ああ! 思い出すだけで気持ちい!! あっと、遅れちゃう、このまま行ったらバレちゃうもんね、ね? お父さん、お母さん? 世界一愛してるよ?」
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