お客様来店

 開店からまもなくして


「紬さん。おはようございます」


 あいさつとともに男性が来店する。


 彼はエルフと言われている種族みたい。でも日本語がペラペラなので会話には困らないしメニューも読める。ご都合世界なのか読み書きや会話はすべてが自動で翻訳されているみたいによくわかる。

 彼はいつものようにカウンターに座るとメニューを見ずにコーヒーを注文する。注文を受けるとキッチンに居るジェフさんに注文票を渡す。

 彼を猫たちの居るエリアへ案内する。先ほどまで日なたでゴロゴロしていた猫たちが一斉に集まる。まるで主人を見つけた子犬のような反応を見せる猫たちを見て彼は優しくほほんだ。


「今日もみんな元気そうですね」


「はい。ティリさんを待っていたようです。コーヒー、置いておきますね」


「ありがとう」


 彼が来店するようになってもう一カ月になるだろうか。猫たちもすっかり彼に懐いている。少しだけ遊んだり猫とお話をしてから仕事に行く。ちなみに彼の職業は密猟者を取り締まる警備兵。大変なお仕事をされていると思う。だからなのか、頻繁に通ってくださり猫たちに会いに来てくれている気がする。


「また明日来るよ」


 彼は猫たちに別れを告げると早々にお店を後にした。


「ありがとうございました。お気をつけていってらっしゃいませ」


 彼は振り返り大きく手を振って仕事へでかけて行った。


 次に来店したのはドワーフと呼ばれる方。彼は工房で働いていて夜勤の帰りに寄ってくれるらしい。いつも通りモーニングセットとエールを注文して猫エリアには入らずカフェエリアから猫たちを見るというスタイルでまったりとした時間を過ごす。彼にとってここはお気に入りの場所になっているみたい。中に入りたいがどうやら猫アレルギーがあるみたい。なのでここで我慢して眺めることにしている。


「いつもありがとうよ」


「こちらこそいつもありがとうございます。ヤリさんのくしゃみや涙が治まるように調べておきますね」


「おう。助かる。頼むぜ紬ちゃん」 


 そう言い残しヤリさんはグイッとエールを飲み干すと自宅へと帰っていく。やはりヤリさんとも日本語で会話ができる。不思議です。


 常連のお客様。新規のお客様。混雑せず程よい感じに席が埋まる。猫たちものんびりできている。お客様の楽しみ方もさまざま。猫じゃらしなどのおもちゃで目一杯遊ぶ方、一緒にゴロゴロと寝る方、おしゃべりする方、なにもせず眺めているだけの方。自由に猫との触れ合いを楽しんでくれている。のんびりその様子を眺めている。幸せなひとときだそうだ。


★登場人物


 保護猫カフェオーナー:紬(つむぎ)。出身日本。


 ジェフ:保護猫カフェのシェフ


 ティリ:エルフ。警備兵。


 ヤリ:ドワーフ。職人。猫アレルギー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る