夏休み
これは、私が体験した話である。
あれは確か小学5年生の夏休みのことだった。
当時仲良しだった友達3人と肝試しをしようということになった。
場所は山奥にある廃屋だ。
廃屋といってもそこまで大きなものではなく、ただ単に人が住まなくなっただけの古い家だった。
私たちの目的は、その家の中に入ってあるものを取ってくることだった。それは、いわゆる「宝物」と呼ばれる類のものである。
私たちはワクワクしながら準備を整えて出発した。
1時間ほど歩いただろうか、目的の場所が見えてきた。
古びた外観からは想像できないくらいに立派な造りの建物だったが、人の気配は全くしなかった。
「いよいよだね」
「ドキドキする~」
「早く行こうよ!」
玄関の前に立つと、私は勇気を出して扉を開いた。ギィ~っと鈍い音が響き渡る。
「すごい!ホントに開いたよ」
「ねぇねぇ、早く行こうよ」
「待ってよ。まずは写真を撮ろうよ」
私はそう言ってスマホを取り出した。
「せっかくだしみんなで写らない?」
「いいけど、誰が真ん中に入るの?」
「うーん、じゃんけんで決めようか?」
「そうだね。よし、最初はグー。ジャンケンポンッ!!」「やったぁ!!私だぁ!!」
「えぇー、ズルいよ。そんなのってないよぉ……」
「ごめんね。でも、写真撮ったらすぐに代わってあげるから我慢してね。はい、チーズ♪」
私はカメラに向かって笑顔を向けた。
「うん、よく撮れてる。それじゃあ、次はあなた達の番だよ」
私は順番に撮影していった。
最後の1枚を撮影した後、私は2人に尋ねた。
「それで、誰が入る?やっぱり怖いの?」
「こ、怖くなんかないし……」
「わ、私だって平気だから」
2人とも強がっているが明らかに声が震えている。
「ふぅ~ん、そうなんだ。じゃあ、先に行ってきてもいいよね?」
そう言うと、2人は黙ったまま小さく首を縦に振った。
「ありがとう。それじゃあ、行ってきます」
私はゆっくりと玄関を潜っていった。
中に入ると、外よりもひんやりとした空気に包まれていた。
廊下を進んでいくと、突き当たりに部屋があった。
恐る恐るドアを開ける。
「きゃあああっ!!!」
思わず叫んでしまった。
そこには、首から上がない女の人の死体が横たわっていたからだ。
私は急いでその場を離れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
心臓が激しく脈打っている。
「な、何なの、今の……」
しばらくの間、呆然と立ち尽くしていたが、やがて落ち着きを取り戻した。
気を取り直して、目的を果たすため部屋の中を見回してみる。
「あった……」
机の上に小さな箱が置かれていた。
中には、綺麗に折り畳まれたハンカチが入っていた。
「よかった。ちゃんと見つけられた」
これでミッションは完了だ。
「さてと、そろそろ戻ろうかな」
そう思った時だった―――
突然背後から誰かが近づいてきた。
振り返ると、そこにいたのは血まみれになった女の子だった。
「ひっ!?」
あまりの恐怖に悲鳴を上げることすらできなかった。
逃げようとしたが、足がすくんで動けなかった。
その間にもどんどん距離を詰めてくる。
(嫌……来ないで……)
心の中で強く願ったが、無情にも目の前までやってきた彼女は私の顔に手を伸ばしてきた。
そして、頬に触れた瞬間、鋭い痛みを感じたと思った次の瞬間には視界が大きく傾いていた。
ドサッ……
地面に倒れ込んだ私の目に映ったもの。
それは、自分の腕だった……。
その後の記憶はない。
ただ一つだけ覚えているのは、私があの子を殺したということだけだ。
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