美香ちゃん

 これは私が小学生の時に起きた出来事です。

当時、私には仲の良い友達がいました。

その子とはクラスも一緒で、席も隣同士でした。

名前は美香ちゃんといいます。

彼女は大人しくて引っ込み思案な性格でしたが、一緒にいるととても楽しい子でした。

私はいつも彼女と遊んでいました。

休み時間はもちろんのこと、授業中も先生の目を盗んては手紙のやり取りをしていました。

お昼ご飯を食べる時も、教室の隅っこで二人だけで食べていました。

そんな私たちがクラスのみんなから仲間はずれにされるようになったのは、いつ頃からだったでしょうか? 確か、夏休みに入る少し前だったと思います。

それまで仲良くしていたはずの男の子たちが急に冷たくなり始めたのです。

最初はどうしてなのかわかりませんでした。でも、しばらくしてその理由を知ることになりました。

どうやら彼らは私のことを好きになってしまったらしいのです。

だからといって、私にとっては迷惑以外の何ものでもありませんでした。

だって、私にはもう好きな人がいたからです。

もちろん、その相手は美香ちゃんではありません。

彼女だけは変わらずに接してくれました。

なので、私は安心していられました。

そんなある日のことでした。

私が学校へ行くために家を出ると、なぜか隣の家からも人が出てきてこちらに向かって来ました。

ひょっとして同じ学校に通っている同級生かしらと一瞬思いましたが、よく見ると違いました。

なぜなら、その人は男性だったからです。

年齢は二十歳前後といった感じでしょうか? その男性は私を見ると驚いた様子を見せました。

きっと私のことを女の子だと思っていたのでしょう。

しかしすぐに表情を取り繕うと、彼は爽やかな笑みを浮かべて挨拶をしてくださいました。

「おはようございます。いい天気ですね」

私は戸惑いながらも同じように挨拶を返しました。

「はい、今日は絶好の散歩日和ですよね」

すると、今度は彼の方がキョトンとしていました。

私は何か変な事を言ったのだろうかと思い、不安になりました。

でも、彼と話しているうちにだんだん打ち解けていき、最後にはすっかり仲良くなっていました。

おかげで学校までの道程を楽しく過ごすことができました。

ただ、途中で一度だけ振り返ってみたところ、彼がどこか悲しげな眼差しを向けていたような気がしたのは何故だったのだろう……今でもわかりません。

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