ホーム

 私の家族に起きた不思議な出来事をお話しします。

それは私が中学生になったばかりの頃の出来事です。

ある日のこと、私は学校帰りに友人と二人で電車に乗っていました。

しかしその途中で急に気分が悪くなり、次の駅で降りることにしました。

「大丈夫?」

ホームに降り立ったところで、一緒に乗っていた友達が心配してくれました。

私はなんとか笑顔を作って答えました。

「うん、平気だよ」

本当はまだ少し気持ち悪かったのですが、あまり彼女に迷惑をかけるわけにもいきません。

駅を出ると、すぐにタクシーを見つけて乗り込みました。

運転手さんに行き先を告げた後、私たちは後部座席に座ってホッと一息つきました。

ところがしばらくして、隣に座った友達が何かに気付いたようにハッと顔を上げました。

どうしたのかと尋ねると、彼女は震えた声で言いました。

「今、誰かに見られていたような気がするんだけど……」

その言葉を聞いて、私もドキッとしたのを覚えています。

もしかすると私たちの後をつけて来た人がいるのかも知れないと思ったからです。

それからは二人とも無言のまま、なるべく目を合わせないようにしていました。

しばらく経って、車はようやく目的の家に着きました。

料金を支払って車から降りた後、私たちは真っ直ぐ家に向かいました。

玄関を開けると、家の奥の方で物音が聞こえました。

どうやらお母様は起きているみたいです。

私たちは急いでリビングに向かうと、そこにはお母様がいらっしゃいました。

「おかえりなさい。遅かったわね。あら、どうかしたの?」

不思議そうに首を傾げるお母様に事情を説明します。

お父様は出張中で家にいないため、代わりにお母様に相談することにしたのです。

話を聞いたお母様はすぐに部屋へ戻って、ある物を私に手渡しました。

それは小さな鏡のついたネックレスでした。

なんでも、この中にお札が入っているらしいのです。

私はそれを首に掛けてもらいました。

これでもう安心だと聞かされましたが、正直あまり実感は湧きませんでした。それでも一応は納得したので、私はそのまま眠りにつくことにしたのでした。

翌日、私はいつものように登校するため、家を出ました。

すると、なぜか隣の家からも人が出てきてこちらに向かって来ました。

ひょっとして同じ学校に通っている同級生かしらと一瞬思いましたが、よく見ると違いました。

なぜなら、その人は男性だったからです。

年齢は二十歳前後といった感じでしょうか? その男性はこちらを見て驚いた様子を見せました。

きっと私のことを女の子だと思っていたのでしょう。

しかしすぐに表情を取り繕うと、彼は爽やかな笑みを浮かべて挨拶をしてくださいました。

「おはようございます。いい天気ですね」

とても礼儀正しい方でした。

なので、私も同じように返しておきました。

「はい、今日は絶好の散歩日和ですよね」

すると、今度は彼の方がキョトンとしていました。

私は何か変な事を言ったのだろうかと思い、不安になりました。

でも、彼と話しているうちにだんだん打ち解けていき、最後にはすっかり仲良くなっていました。

おかげで学校までの道程を楽しく過ごすことができました。

ただ、途中で一度だけ振り返ってみたところ、彼がどこか悲しげな眼差しを向けていたような気がしたのは何故だったのだろう……今でもわかりません。

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