合コン
私には好きな人がいます。
彼と出会ったのは去年のこと。
会社の同僚に誘われて行った合コンがきっかけでした。
その時に意気投合し連絡先を交換してから何度かデートを重ね、付き合うことになりました。
彼はとても優しく私を大切に扱ってくれます。
きっと彼にとって私は運命の相手なのでしょう。
だからこそ今回の出来事はとてもショックでした……。
事の始まりはある日の夜でした。
仕事を終えて家に帰る途中、突然雨が降ってきたのです。
天気予報では晴れだったので傘を持っておらず、急いで近くのコンビニまで走りました。
そして店に入った途端、目の前に信じられない光景が広がっていたのです。
なんとそこには一人の女性が立っていたのです。
一瞬ドキッとして身構えましたがすぐに落ち着きを取り戻しました。
よく見るとそれは全身ずぶ濡れの女性でした。ただ不思議なことに服や髪からは水滴が落ちておらず、まるで時間が止まっているかのように見えました。
その時ふと思ったことがありました。
もしかするとこの人は幽霊なのではないか? 私は思い切って聞いてみることにしました。
「あの……あなたは幽霊なんですか?」
女性はゆっくりとこちらを振り向きました。
その姿を見た瞬間、私の背筋に寒気が走ったのを覚えています。
なぜならそこにいたのは紛れもなくあの時の女だったのです。
恐怖で体が震えました。
そんな様子に気付いたのか、彼女が話しかけてきました。
「あら、また会ったわね」
私はその場から離れようと後ずさりしました。
しかし、いつの間にか後ろにあった棚にぶつかってしまい、商品を落としてしまいました。
「ああ、大変!」
私は慌てて落ちたものを拾い始めました。
「手伝うよ」
女性も一緒に拾ってくれました。
なんとか全部集め終わると、私は彼女に礼を言いました。
「ありがとうございます」
「いいえ、どう致しまして」
そう言って微笑む彼女の顔を見て、私は思わず見惚れていました。
それからというもの、私たちは頻繁に会うようになりました。
いつものように二人で他愛のない会話をしながら歩いている時でした。
私はふとした疑問を投げかけてみました。
「ねえ、どうしてあの日あそこに来ていたの?」
すると彼女はこう答えました。
「実はずっと探し物をしていてね、それであの廃工場に来たの。そしたら急に激しい頭痛に襲われて意識を失ってしまったの。気付いた時にはもう朝になっていた。でも肝心の物がどこを探してもなかった。おかしいと思って辺りを探し回ったけどやっぱりどこにもない。そこで思ったの。ひょっとしてあの場所に落としてしまったんじゃないかって。だからもう一度行ってみたんだけど、残念ながら見つからなかった。でもあなたに会えたおかげで探していた物が見つかったの。本当に感謝しているわ」
「そうなんだ……」
「ところであなたの方はどうなの?」
「何が?」
私が聞き返すと彼女は呆れたように言いました。
「決まってるじゃない。あの男とよ」
「え?誰のこと?」
「はぁ……相変わらず鈍感なんだから。まあいいわ。とにかく大切にしなさいよね」
そう言うと彼女はどこかへ行ってしまいました。
私はその後ろ姿を見つめながら、これから起こるであろう未来を想像していました。
ある日の仕事帰り、僕はある噂を聞いた。
なんでもこの近くに出るらしい。
それも若い女の霊が。
もちろん最初は信じなかった。
しかし、一度考え始めるとどうしても確かめてみたくなってきた。
そこで翌日、仕事が終わると一人で例の場所へ行くことにした。
その場所とは廃墟となった病院である。
数年前までは普通に使われていたのだが、経営者が変わったことで経営不振に陥り、ついには倒産してしまったそうだ。
そのため今は誰も使っていないはずなのだが、最近になって奇妙なことが起こるようになったという。
それは夜になると院内を徘徊する人影が現れるのだという。
しかもその人影は若い女性の姿に見えるらしく、さらに近づいてくると悲鳴を上げて逃げていくのだと言う。
僕も実際に見たわけではないが、同僚たちは口を揃えて言っていた。
間違いないだろう。
そして今夜、ついにチャンスが訪れた。
時刻は夜の十時過ぎ。
すでにあたりは暗くなっていた。
懐中電灯を手に慎重に進んでいった。
すると前方にぼんやりと何かが見えてきた。
あれだろうか? そう思って目を凝らしてみると、そこには確かに人の姿が見えた。
やはりそうか! 僕は興奮を抑えきれなかった。
そしてゆっくり近付いていき、声をかけてみることにする。
「こんばんは」
しかし返事はなかった。
ただその場で立ち尽くしたまま動かない。
不思議に思いながらも再び話しかけた。
「すみません。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが」
だがそれでも反応がない。
一体どういうことだ? 不審に思っていると、突然背後に気配を感じた。
驚いて振り返ると、そこには一人の少女がいた。
年の頃なら中学生くらいだろう。
その少女がじっと僕の方を見つめていた。
「あ、あの……」
恐る恐る声を掛けたが、彼女は何も言わずに歩き去っていってしまった。
結局、正体を確かめることはできなかった。
その後も何度かあの場所を訪れたが、二度と彼女に会うことはなかった。
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