第4話 残した異世界串焼き肉でコロコロビーフ?チャーハン
神殿からの帰宅後、コーヒーを飲みつつ寝転んで読書に勤しむつもりが、リッカはどうしても集中しきれずにいた。
それでもようやく夕暮れ時まで無理やり活字を目で追って一冊読み切り、立ち上がった。
「ご飯、作ろうかな」
昼は満腹になったつもりだったが、咀嚼して満腹になっただけで、考えてみれば量はあまり食べていない。
「残しちゃってたし……」
キッチンまで行って、調理台に串焼き肉を出してみた。不思議なアイテムボックスのおかげで、まだ冷え切ってはいない。
アイテムボックスからまな板と包丁を取り出して、とりあえず肉に包丁を入れてみた。予想通り、牛の赤身肉の様な塊肉だ。
「サラダにトッピングするとか」
(スライスして中華風トマトサラダと一緒に……コロコロに切ってシーザーサラダに温泉卵とのせて……)
つらつらとメニューを考えていて、リッカはふと思いついた。
「炒めてみようか……」
思いつけば串焼き肉を1センチ角に切り分けつつ、ポンポンとアイテムボックスから食材が並んだ。
(ちょっと疲れたし、ミックスベジタブルと刻みネギと……ご飯はパックのでいいかも)
コンロにテフロン加工のフライパンをかけて温めるついでに、凍ったミックスベジタブルをそのままいれてしまう。
ある程度解凍を確認して、切った串焼き肉も投入し、焦げ付かない程度に油を少し落として炒めあわせた。
卵を割り入れて、レンジで温めるタイプのご飯をある程度ほぐしながら投入すると、あとは炒めていくだけだ。
「異世界肉のチャーハン、だね」
汁物が欲しくなって、フリーズドライの味噌汁を選んだ。
「卵スープと少し迷ったけど……ふふ」
味噌汁は、フリーズドライとはいえ野菜がゴロゴロしているし香りもいい、いわゆる『イイ物』だった。
クルクルとかき混ぜて、野菜が味噌汁に浸る様子を見ていると、ふと笑い声が出た。
「チャーハンに味噌汁なんて、完全におうちご飯」
前世の自分も、残り物をかき集めたチャーハンと、食べ残しの味噌汁なんていうメニューを作ったことがあるのかもしれない。
チャーハンは思いの外味がついていた。串焼き肉が割と濃い味付けだったので、チャーハンにはほとんど味をつけなかったのだがやはりこれで良かったようだ。
「味見もしてるけどね」
少しだけ焦げ目のついた肉を口に入れると、昼間の光景を思い出す。
立ち並ぶ屋台、大勢の人々、その声。喧騒と言って差し支えないほどではあったが、活気に満ち溢れた光景は、今のリッカには強烈だった。強烈だったと実感していた。
レンゲと皿がカチカチと当たる音をさせてながら、しばらくチャーハンを口に運びつつ、今日のことを思い返す。
(神殿はともかく、身分証……)
アイテムボックスの中の本に何か載っているかもしれない。
行儀が悪いとは思いつつ、リッカはふと操作盤を出して見つめた。
「ある、ね……」
身分証発行に関する文書の様なものを見つけたので、印をつけた。
黙々と食事を終えて、食器を流し台に持って行き、調理道具の近くに並べる。
「……滅菌浄化」
現実逃避に覚えた+アレンジした魔法を唱えると、目の前の調理器具も食器も綺麗になった。手に取ると、少し熱いくらいだ。
(イメージは、滅菌器と食器洗浄乾燥機よね)
ちなみに、効果を限定して(ここが重要)人間の身体に使うと、風呂に入らなくても問題ない。
(人間の体表とかを滅菌しすぎるのは、多分ダメだろうけど……あ、病気の人とかはどうだろうなぁ)
つらつらと考えていたことを、ふとメモしたくなった。
「メモ帳……ボールペン」
リッカのめが見開かれた。
(やっぱり、アイテムボックスにあった)
このなかに入っていないものを探す方が大変なのではなかろうか。
リッカは、またふっと笑うと、サラサラと今の思いつきもメモ帳に書き入れた。
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本日のメニュー
串焼きの残りを入れたチャーハン
フリーズドライの味噌汁(ゴロゴロ野菜)
•冷凍ミックスベジタブルと、パックの白米、刻みネギ、生卵
•フリーズドライの味噌汁は、あと数種類ある模様
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