第83話北条さん仲間入り

あっと言う間に、週末になった。

今夜は、仲間に『北条食品』の北条さんを紹介する夜だった。

真美は定時で上がり、集合場所の『みち潮』の駐車場に向かった。

18時半前に真美は到着した。

駐車場に1台のタクシーが停まる。中から、原口と海音寺が出てきて、海音寺は領収証をもらっていた。

「お久しぶり、真美ちゃん」

「原口君お久しぶり、海音寺さんも」

「今日はイケメンを紹介するんでしょ?お友達は?」

「まだ、着いて無いみたい」

すると、またタクシーが停まった。

中から、市川由美と神田が現れた。

神田は領収証を受け取らず、金を支払っていた。

「おっ、真美ちゃん」

「久しぶり由美ちゃん。神田副市長お疲れ様です」

「うむ。ウソウソ、プライベートでは『とし君』でいいよ」

「でも、もう、とし君は雲の上の存在で」

「アハハハ、来季市長選出馬するんだけどね。これは、全くのプライベート。公務から離れると、酒の一手だよ。ところで、市川に聞いたんだけと、北条食品の社長さんが友達だって?」

「まぁ、友達と言うか古い知り合いなの」

「楽しみだな」

「今日は旦那はお留守番だから、とことん飲もうね。真美ちゃん」

「秀樹君は、今夜はお留守番なんだ。まだ、息子さん3歳だったよね?」

「うん。将来はきっとイケメンよ……」


ヒュードドド。バタン。


駐車場にスズキの軽トラが進入してきて、大きな音を立てて降りてきたのは、北条だった。

「あっ、北条さん!こっちこっち」

真美は北条を呼んだ。会社の社長が軽トラで現れた事に皆衝撃を受けた。

「皆さん、初めまして。『北条食品』の北条純一です。宜しくお願い致します」

「北条さん、飲み会に車で来て帰りはどうするおつもりで?」

と、海音寺が心配すると、

「帰りは、代行です」

「それなら、安心だ」

6人はみち潮の店内に入っていった。

 

みんな、生ビールで乾杯した。

「北条さん、誰かに似てますよね?だれだっけ?」

みんなは考え始めた。

「私はよく、小栗旬に似てると言われます」

……

「川原さぶに似てますよね?」

 と、由美が失礼なことを言う。これも、川原さぶに失礼だが。

「か、川原さぶ?……」

「あっ、バカボンのパパに似てますよね」

周りは、ウンウン頷く。

真美の友達は、北条の事をパパとあだ名を付けた。

失礼な友達であるが、北条は楽しそうだった。

酒がまわると、原口が北条に質問した。

「北条さん、なんで社長なのに軽トラなんですか?」

北条は鯛のアラ煮をつつきながら、

「会社で乗り慣れた車が一番です。個人事業主は意外と大変なんですよ。仕事取れなきゃ、会社が傾きますからね」

原口は納得したような顔つきだった。

真美はずっと神田と喋っていた。むかしむかし、付き合っていた2人だ。

きっと、プライベートな話しをしているのであろう。

北条パパは、二軒目を提案した。

皆はまだ飲み足りない様子。だから、提案に賛成した。

6人は歩いて、二軒目に向かった。予約無くても、入れる店に。

15分歩いて、辿り着いたのは居酒屋千代だった。

店主の凛は2児のママである。

凛は6人を見て、奥座席を案内した。実はみんなの行きつけの店であったので、リラックスして酒を注文していた。

「真美、パパいいヤツじゃないか。付き合っちゃえよ」

と、神田は真美にささやく。

「無理。私は柳田さんだけでいいの。子供も高校生だし。きっと反対するわよ。それに、北条さんはあくまでも友達」

「ま、41だしな。もう、恋愛ドラマごっこは出来ないし」

「そうそう。だから、友達でいいのよ」

北条パパは、神田の隣に座った。

「副市長、ささっ、一杯」

お銚子を北条パパは傾ける。

「どうも」

「いや〜、副市長とお友達になれるなんて。弁護士先生もいらっしゃるお友達が倉橋さんの同級生とは。私もやっと安住の地を見つけた気分ですよ」

神田は、返杯して、

「選挙で負ければ、ただの人ですから。私たちの世界は」

「いえいえ、副市長がこんな一般人と飲み会に現れるなんて。私は、零細企業なので仕事を取るために接待、接待、また接待」

「大変ですね」

「でも、ここはいい。倉橋さんに感謝しなきゃ」

6人は結局、11時まで飲んで解散した。

北条パパはとても楽しそうだった。それを見た真美は満足した。

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