【序章完】ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~

阿弥陀乃トンマージ

序章

すべてのはじまり

            すべてのはじまり


 二十一世紀、世界は激動に見舞われた。多発するテロや、終わらない紛争や戦争、人智の及ばぬ災害に、大規模なパンデミック、貧困などの経済問題、それぞれの考えの相違に起因する社会的軋轢、地球温暖化に代表される環境問題……様々な問題に世界は苦しめられた。         


 極東に浮かぶ島国、日本もまた例外ではなく、国力は衰退の一途を辿る一方だった。時の政府は現状打破の一手として、『道州制』の導入を試みた。だが、それがいけなかった。結果から言うと、日本はそのまま十の道州と二つの特別区に“分裂”することになった……。


 場所は関西州、滋賀県の北部にある古寺の中の一室にて、一人の妙齢の尼僧と三人の若く美しき女性達が向かい合って座っている。しばしの沈黙が続いたあと、尼僧がその口を開く。


「……それはいけません」


「い、いけませんって、なんでですか⁉」


「少し落ち着いてください。あかさん……」


 尼僧はショートヘア―の強気な女性を落ち着かせるように話す。


「……これまで各々、それなりに力を蓄え、研鑽は積んできたつもりなのですが?」


「いえ、問題はそういうことではなくて……」


「……なるほど、事を起こす時期を適切に見極めろということですね」


「ええ、その通りです、あおさん……」


 尼僧はミディアムヘアーの冷静な女性の言葉に頷く。


「えっと、見極めるためには情報をより多く集め、より正確に分析する必要がありますね~」


「そう、おっしゃる通りです、みどりさん……」


 尼僧はロングヘアーのおっとりとした女性の言葉に満足そうに頷く。


「こういうのは勢いも大事だとワタシは思うんですけどね……」


 紅と呼ばれた女性が不満そうにその唇を尖らせる。尼僧はひと呼吸おいて応える。


「……軽挙こそもっとも慎むべきことです……貴女たちは誇り高き深海一族の血を受け継ぐ、『深海ふかみ三姉妹』……貴女たちのそのか細い双肩に重大な期待が乗っかっているということを努々忘れてはなりませんよ……」


「ええ、もちろん、それはこの子もよく分かっていますよ。ねえ、紅ちゃん?」


「ちょっと、大姉上、赤ちゃんみたいに言うのはやめてって言っているでしょ!」


「紅、うるさい……庵主、こうしてわざわざ三人を集めたということはなにか進展が?」


「碧さん、さすがのご明察……様々な情報源から有力かつ信頼出来る情報が多数寄せられました。今からそれについてご説明いたします。少し長くなりますよ……」


 尼僧はゆっくりと話を始める……。

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