中国地方:カートゥーン

九重重工業は中規模の工場である。

第五次世界大戦において作られた軍需工場だったが

現在となってはデカイ工場がある町工場程度でしかなかった。


「「「「「乾杯!!!!!」」」」」


だが今日はそんな前評判なんてなんのその。

大賑わいを見せていた、 この工場から排出されたアイドル。

カートゥーンがまさかのアイドルデスゲーム予選突破である。


最初は重工業アイドル? と揶揄されたが

エンジンの爆音でそんな前評判は全て掻き消えた。

ホンダミュージックの情報子ミームは今も日本人に受け継がれているのだ。


「加藤!! 御疲れ!!」

「お疲れ様でしたー」


加藤 雲、 九重重工業では唯一の女性社員で年も若い。

昔から工場に出入りしていてそのまま社員になったバイク娘だ。


「パイプの調達大変だったろう」

「いえいえ、 大丈夫でしたよ、 社長のお知り合いに図面持って言ったら

ちゃんと作ってくれましたし」

「それならいいんだ」


読者諸賢はお気づきかもしれないが彼女こそ

マスクアイドルの【カートゥーン】である。


「そうそう、 打ち上げ終わったら社長が来いってさ」

「社長が? OKです」


そんなこんなで打ち上げが終わり加藤は社長の元に向かった。


「社長、 お呼びですか?」

「あぁ・・・」


九重 名古屋、 御年90歳だがまだまだ現役のベテランである。

彼は煙管を吹かしながらも加藤を見据えた。


「加藤、 アイドルデスゲームだが予選通過しても

このままリタイア出来るが、 本戦に参加するのか?」

「当たり前ですよ、 それが?」

「悪い事は言わん、 棄権しろ」

「・・・・・社長、 貴方には世話になったが命を賭けるのは私

それに口出しして欲しくはない」

「そうじゃねぇよ、 命云々の話は予選参加の時点で散々した

俺はもうお前の生死に関しては何も言わん

だがしかしよ、 お前バイク如何すんだよ

ぶっ壊れちまったじゃねぇか」

「・・・・・」


流石に気まずい加藤は目を逸らした。


「【爆裂豪列天下無双国士無双天上天下唯我独尊万夫不当王道楽土天上天下

アルティメットバーストフェイタルキラーブラストグランドハイパー

ロジスティックロマンティックドメスティックドラマチックドラスティック

アーコロジスト12号-2型カスタム改】に必要な部品はウチにはもう無い」

「そんな・・・」

「【爆裂豪列天下無双国士無双天上天下唯我独尊万夫不当王道楽土天上天下

アルティメットバーストフェイタルキラーブラストグランドハイパー

ロジスティックロマンティックドメスティックドラマチックドラスティック

アーコロジスト12号-2型カスタム改マークⅡ】を作る必要が有る

部品の作り方に関しては俺が教えよう、 幸い本戦までには時間が有る」

「え、 良いの!?」

「但し!!」


煙管をカンと叩き、 吸い殻を落とした。


「素材は全部お前が仕入れろ」

「素材・・・?」

「そうだ

【爆裂豪列天下無双国士無双天上天下唯我独尊万夫不当王道楽土天上天下

アルティメットバーストフェイタルキラーブラストグランドハイパー

ロジスティックロマンティックドメスティックドラマチックドラスティック

アーコロジスト12号-2型カスタム改マークⅡ】を作るには

通常金属では不可能、 ヒヒイロカネ合金が必要だ!!」

「ヒヒイロカネ!!」


ヒヒイロカネ合金とは第三次世界大戦中に開発された合金の事である。

ヒヒイロカネと言う日本神話の合金から名前を取ったその金属は

正にオーパーツと言っても過言ではない!!


「実在したのか!?」

「あぁ!! 近所にある第三次世界大戦中に作られた日本軍基地遺跡の奥で

今も尚稼働していると言う自動戦闘兵器に使われている!!

アイドルなんかよりずっと強いぞ、 勝てるのか!?」

「勝てる!!」

「じゃあ行ってこい!!」

「はい!!」


画して加藤は日本軍基地遺跡に向かったのだった。


「・・・・・ふ、 見たかよ、 アンタの孫、 すげぇな」


そう言って九重は遠くを見る。

嘗て自分と共に青春をかけた加藤の祖父の加藤 晴天に向けてのメッセージだ。

晴天は日本軍基地遺跡の自動戦闘兵器に足を射抜かれてから

ずっと車椅子状態である。


「俺達を超えて行くんだろうな・・・あの娘は・・・

アイドルなんて危ない道じゃなくて公道を走って欲しかったが・・・

女の子にそんな事は言えないか・・・」


ふっ、 と笑う九重。


「今度、 一緒に呑みに行くか晴天・・・」


晴天は今は遠くの老人ホームに居るが、 会いに行くかと思う九重だった。



その後カートゥーンは日本軍基地遺跡の奥で自動戦闘兵器と戦い

ヒヒイロカネ合金を入手して

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アーコロジスト12号-2型カスタム改マークⅡ】を作るのだった。

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